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【2024/05/19 06:20 】 |
第39話 事後処理はすみやかにウヤムヤに 9





「聞きたいこと?あるけど」

銀時は横向けに身体を丸めて寝転がる。

「婚姻届の『夫になる人』の欄は俺?お前?」

「俺だ。決まってんだろ」

「なんで決まってんだよ」

「幕府から『嫁を娶れ』って言われてんだ。隊士が嫁になってちゃ命令違反だろーが」

「んじゃお前、真選組やめて嫁になれ。俺が隊士になってやっから」

「アホか。通用するわきゃねーだろ」

「目さえ治りゃ通用する。だってお前に務まるもの、俺に務まらねーはずないし」

「この仕事はそんな甘くねぇんだよ。第一お前、目は治るかどうか解らねぇんだろ」

「あ。やっぱ無理だって?」

銀時は合点がいったように問う。

「俺にはなんも言わなかったんだよね、どの医者も」

「……言う段階じゃねーからだろ。急に治るかもしれねぇんだ」

「なぁ、お前…いいの?」

毛布の端から手が出てきて毛布を握る。

「こんな見えないヤツ、祝言とか無理じゃね?」

「式のことなら心配ねェ。目はケガをしたつって包帯したまま進行するよう上には手を回しておく」

「そうじゃねーよ。お前は厄介者を抱え込むことになるつってんだよ。前に出ることはもちろん、後ろでテメーの世話するのだってままならねェ。文字通り飲んで食って寝てるからな。まあ俺にとっちゃおあつらえ向きの話だけどね!」

「…………お前に言っとく。俺がお前と婚姻を結ぶのはお前を何かに使うためじゃねェ。お前は傍に居りゃいい。お前が目を病んだのは元はといえば俺が賊を止められなかったからだ。もしお前が失明したら、俺は一生をもって償う」

「なんつー重い話してくれてんの、テメーは」

銀時の声が、しかし笑いを含む。

「まあいいや、どのみちオメーには世話になることになりそうだしな」

「…任せとけ」

「あ、そうだ。もうひとつ聞きてェ」

毛布の下で銀時が身じろぐ。

「先刻の客が言ってた『紅桜ネオ』だけどよ。お前ら、その情報は掴んでたわけ?」

「鬼兵隊の武器が流出した話は聞いていた」

銀時は源外との会話を土方たちが盗聴していたという前提で話している。

「しかしその噂と電脳幹違法コピーと辻斬り似蔵の結びつきまでは把握してなかった」

「その手の稼業か、闇に身を置く連中には当たり前みてーな話だったけどな」

「そっち方面にはどうしても弱ぇ」

「へぇ、認めるんだ。素直じゃねーか」

「今後、改めるさ。…万事屋、退院までこいつを持ってろ」

土方はポケットから携帯器機を取り出す。

「できりゃ肌身離さずな」

「これって…」

渡されて銀時は形を確かめる。

「携帯電話?」

「これがオメーの居場所を教えてくれたからな」

使い古された黒いGPS受信機。

「こないだ貸したのと同じ型だ」

「これって掛けられんの?掛けてもいい?」

「構わねぇが、内容は全部録音してるぜ。相手の場所や番号もな」

「んだよ。公開羞恥プレイかよ」

「副長」

室内警備の隈無清蔵が進言する。

「そろそろ行かれませんと局長の指定された時間に間に合いませんよ」

「そうだった」

土方は思い出したように顎を上げる。

「じゃあな。明日迎えに来る。ゆっくり寝とけ」

「なに。まだお仕事?」

銀時は呆れたように握った携帯を振る。

「商売繁盛で結構だなコノヤロー」

「残業手当なんざ出ねぇんだよ」

後ろに手を振って土方は出ていく。

 


「あ、ちょうど良かった。聞いてよ、店長」

長谷川はホストクラブ高天原の店頭で本城狂死郎に話しかけた。

「銀さんが大変なことになってるんだけど、知ってる?」

「御婚儀を控えてらっしゃるのですから大変なのは言うまでもないでしょう」

狂死郎は客の迎えに出てきていた。

「すみません、長谷川さん。後にしてもらえませんか」

「あっ、ちょっと待ってよ!」

女性をエスコートして店内へ姿を消そうとする狂死郎に長谷川は声を張り上げた。

「銀さんさ、目が見えなくなっちゃったんだよ! しかもあの結婚、なんか含みがありそうなんだよね。銀さん困ってて助けてやった方がいいんじゃないかな?」

「……どういうことですか?」

ぴたり、狂死郎は足を止める。

「銀さんは幸福の絶頂を迎えようとしているんじゃないんですか」

「普通さぁ、結婚しようってヤツは盛り上がってない? しかも急に決まったっぽいし、なおさらだよね。なのに銀さんその話は避けるしイライラしてる。もしかして仕事がらみでお芝居してるのか、あるいは面倒事に巻き込まれちゃったっぽいよ?」

「分かりました。店内に席を用意します。2時間後、もう一度来ていただけませんか」

「構わないけど」

長谷川は眉を下げて笑う。

「この格好でいい?」

「ええ。どうぞ」

狂死郎は如才なく女性を連れて扉の向こうへ踏み入れていく。

「その話を聞きたいという銀さんの御友人でもいらっしゃったら、一緒にお連れ下さい」

 


「どうしたの?長谷川さん。今夜の寝床を取られちゃったのかしら、猫に」

ころころと笑う笑顔に、しなを作った片手を添えてキャバ嬢が声を掛ける。

「その斬新的ないでたちでお店の前に座り込まないでくださる?営業妨害で警察を呼びますよ」

「妙ちゃん…」

グラサンの顔をキャバ嬢に向ける。

「銀さんと新八君の話、聞いた?」

 


「なんだ。俺は忙しい」

ティッシュを配りながら大声を振り立てる。

「はいはいそこのお兄さん、1時間5000円ポッキリだよ。いい子つけるよ。ワンドリンクサービスだよ」

「ヅラっち、相談に乗ってよ」

長谷川は横で手を叩きながらエリザベスと一緒に店の看板を担ぐ。

「銀さんがヤバイことになってるみたい。ヅラっちだったらどうしたらいいか言ってくれそうだし」

「銀時がヤバイのはいつものことだ。とくにあのアタマ。天パがヤバい」

「今週末、結婚するって知ってる?」

「ははっ、めでたいではないか。そうか、ついに決めたか。恥知らずどもめが」

「真選組の副長さんと」

「そうか、真選組の……なに?」

喧騒の中、桂は呼び込みを止めて長谷川を見る。

「いくら頭髪並みに頭の中身が捩じ曲っても、それだけは無いだろう」

言って、目を細める。

「罠かな」

 


病室で銀時は夕食後、頭から布団を被ってラジオを聞いていた。

布団の上には隈無清蔵が隊服の上着を掛けてくれていた。

消灯時間には2時間以上、間があった。

頭の横に置いた携帯電話が鳴ったのはそんな時だった。

「…んだよ、これ。誰あて?」

銀時は携帯を掴んで隈無清蔵へ突き出す。

「これオメーらの仕事の用事だろ。早く出ろ」

「いいえ。これは貴方に貸し出されたものです。通話は貴方あてです」

受け取って隈無清蔵は発信者を確認する。

「屯所からですね。おそらく副長でしょう。どうします、私が出てもよろしいですが」

「そうしてくれ」

「どうせ貴方に代わることになりますよ」

「面倒くせーなぁ、もう」

銀時は手招きして返された携帯を毛布の中へ引き込む。

「もしもし。なんだよ?」

『………』

「オイ、なに?」

『………』

「聞こえてるぅ?もしもしィィイ!」

『………』

「切れちまったよコレ! どんだけ気が短いのアイツ!?」

銀時が携帯を耳から外して毛布の外へ突っ返そうとしたとき。

『……………銀時?』

携帯から聞こえた低いイントネーションを耳が拾いあげた。




続く


 

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【2012/11/24 12:00 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第40話 事後処理はすみやかにウヤムヤに 10



「………あ、ウン。…なんか用?」

銀時が声を潜める。

隈無清蔵はオヤと思う。

毛布の下で銀時は携帯を耳に押しつけて動きを止めている。

まるで相手の声を聞き漏らすまいとしているようだ。

『すまねぇな。用があるのはお前じゃねぇ。傍に隈無は居るか?』

「なんだ、俺じゃねーのかよ」

不服気に言って銀時は毛布から携帯を差し出す。

「やっぱオメーらだったろが。ええと、くまなく…サン?」

「私に?」

隈無は首を傾げる。

「もしもし。代わりました」

銀時の携帯を通じて自分に連絡が入るなど普通ではない。

なにごとかと緊張する隈無清蔵の耳に副長、土方十四郎の声が流れこんできた。

『隈無か。そっちの様子はどうだ?』

「変わりありません」

安堵する。

いつもの無愛想な土方の口ぶり。

「坂田さんはお食事を終え、安静に休まれています」

『なら話は早ぇ。隈無、お前は屯所に戻って来い。お前じゃなきゃダメなんだよ』

「どういうことですか、副長?」

『いま離れに改装業者が入ってるのは知ってるな?』

「ええ」

『水道業者も来てる。それで近藤さんがこの際だから屯所の厠革命も進めちまえって言い出したんだよ。自動水栓のカタログあるから、それ見て業者から見積もり取ってお前が交渉役に当たりゃ文句ねーだろが』

「わかりました。そういうことなら私がお役に立てるでしょう。しかし…」

隈無清蔵は毛布に籠もる銀時を見る。

「病室が手薄になります。ここの責任者は私ですので、どなたかと交代していただく必要があるでしょう」

『手配する』

土方は短く言い切る。

『ともかくお前は今すぐ屯所に向かってこい。業者を待たせている。もう帰りたがってるのを一挙に大量発注させてやるつって引き留めてんだ』

「すぐに出ます」

『そこの外警備のヤツを病室に向かわせる。今、そこは何人だ?』

「私一人です。廊下に二人体勢で、副長がお帰りになってから変わってません」

『よし。頼んだぜ』

プツリと通話が切れる。

ふと隈無清蔵は違和感を覚える。

しかしその正体を考える間もなく銀時に隊服の上着を差し出される。

まぶしがる銀時に少しでも遮光を施したくて毛布の上から掛けていた隊服の上着。

「行くんだろ?」

毛布はかぶったまま銀時に告げられる。

「コレはもう大丈夫だ。暗くなってきたせいか、あんまり目に来ねーから」

「…すみませんね」

受け取って、羽織る。

「交代の者が来ます。御用がありましたらその者にお申し付けください」

「あーそうするわ。携帯は?」

「こちらに置きます」

「ん…コレか」

シーツの上に置いたものを銀時は探り当てて握る。

ぴゅっと、手と共に携帯は毛布の中へ吸いこまれていった。

「…………」

隈無清蔵は一礼してベッドサイドを離れる。

病室の扉を開けると番兵よろしく隊士が二人、扉の両脇に立っている。

「あれ、隈無さん」

隊士たちは親しげに見上げてくる。

「厠ですか?」

「そうじゃありません。屯所に戻ります」

「えっ?」

「私の交代はすぐ来ますから」

「あ、…ハイ」

「責任者として君たちにお願いがあります」

隈無清蔵は感情のこもらない瞳で年若い隊士たちを見下ろした。

 

 

「………痛てっ」

銀時は毛布の中で携帯を閉じた。

折りたたみ式のそれを開くと猛烈なバックライトの光量が目に刺さる。

包帯も眼帯も断った。

それらが目を覆ってるだけでロクでもない場面を思い出し身体がヒヤリとするからだ。

「たかすぎぃ…」

携帯に向かって呟く。

目を閉じて横たわっているが、眠らない。

 

 

「ただいま戻りました」

屯所で隈無清蔵は水道業者の所在を求めて聞き回った。

しかし業者の居所を知ってる者はいなかった。

「おかしい。確かに…」

「清蔵さんじゃありやせんか」

離れの改築現場へ足を運んでも、そこは暗くひっそりとして人がいる気配はない。

訝しがる隈無清蔵に声を掛けたのは一番隊隊長、つまり隈無清蔵の直接の上司である沖田総悟だった。

「今日は病院詰めじゃなかったんですかィ?」

「いえ。副長に呼び戻されまして」

「土方さんに?」

沖田は首を傾げる。

「おかしいな。土方さんは近藤さんと一緒にとっつぁんのお供に行ってますぜ。こないだの『岡田』の件で関係各所から説明を求められたとかで」

「では屯所に戻るよう命じたあれは誰だったんです?」

「隊長!」

伝令の隊士が廊下を走ってくる。

「病院がッ…、万事屋の旦那の病院が襲撃を受けましたぁーッ!」

「なにッ」

二人は即座にそちらへ向き直り、腰の刀を押さえて走りだす。

「しまった、謀られたか!?」

「近藤さん土方さんに連絡は?」

「まだです、今してます!」

「一番隊は総出で病院向かう。伝令、無線室行っときな」

「はっ!」

「まさか本当に来るとは…」

「だから俺が残るって言ったんでィ」

沖田と隈無清蔵は警察車両へ走る。

警報が鳴り渡る。

出動の合図。

屯所に伝令の声が飛び交い、ドタドタ走りまわる隊士たちの出支度で騒然としていく。

「野郎…、旦那が攫われたら二度は無ぇぜ」

部下の運転する車に乗りこみ、沖田は毒づいた。




続く


 

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【2012/11/24 11:55 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第41話 事後処理はすみやかにウヤムヤに 11




話は少し前に戻る。

隈無清蔵が病院を出てから、一人の男が正面玄関に踏み入れた。

真選組の隊服をまとい腰に刀を差している。

左眼は顔にかかる髪に隠れて見えないが、その右眼は意志を映したように不敵で油断がない。

一介の平隊士には見えない彼は、その気配を隠すように俯きがちに階段室へ入る。

エレベーターを使うことが多い病院の昇降で階段を選ぶのは先を急いだり、人と会うのを避けたりする場合だろう。

彼は迷うことなく駆け上がり、階段室の鉄扉を開けて目的階の廊下へ至る。

確信をもった足取りで看護師の詰所を通りすぎれば見咎める者はいない。

挙動を間違わなければ不特定多数が出入りする病院で疑われるはずもないことを、場数を踏んできた彼は承知している。

彼 ── 真選組の隊服を着た隻眼の男は、誰あろう鬼兵隊の高杉晋助本人だったからだ。

『目論見どおり』

チラと顔をあげる。

真選組の頭脳と謳われる副長土方はこの場にはいない。

現場を任された責任者の隈無清蔵さえ外してしまえば、あとは頭の回る隊士がいないのは調べ済み。

案の定、凡庸な男が二人、銀時の病室の扉を守るように立っている。

「ごくろうさまです!」

目立つ特徴である包帯は外しているとはいえ、隊服を着ているというだけで彼らは高杉の顔を確認することもない。

このごろ真選組は急に隊士を募集し増員している。

見知らぬ者が多く混ざって新しい顔を覚えきれていないのだろう。

それも計算の内。

高杉は目を伏せがちにしたまま頷いてみせ、扉に手をかける。

銀時の病室。

薄暗いそこは照明が落とされ、非常灯と警報器のランプが緑色の光を放つだけだが、暗闇を見通すことに慣れた目には十分な光量だ。

壁際にベッドが一つあり、そこに身体を丸めて横たわる生身の気配がある。

他に潜む者はいない。

一人体勢で病室を警備していた隈無清蔵が自分と交代したのだから、この部屋には自分と銀時二人きり。

「銀時…」

後ろ手に引き戸を閉めると密やかに声を掛ける。

甘い陶酔。

ベッドまで数歩。

あの毛布の膨らみが銀時のシルエット。

───!?

高杉は足を止める。

モゾっと膨らみが動く。

「ご苦労さまです、沖田隊長!!」

野太いくせに短兵急な声がこちらへ向かって裏返る。

「そこに忍んでこられたのは沖田隊長ですね!寝てません、寝てませんとも! 不肖神山、隊長の命を一心不乱に遂行中であります!!」

銀時とは似ても似つかぬ粉雑な男がベッドから跳ね起きる。

「隊長の命は一晩中ここで坂田銀時のフリをして寝ていろと!!欺かれた敵を引きつけて一気に叩けと!!流石っス隊長!!作戦は万全っス!!この役に自分を抜擢してくださった隊長の期待に応えるためにも、あの凶悪な辻斬り犯の魔の触手をケツに、いやアナルに、いやアヌスにブッ刺される覚悟で待機し、鋭意任務を全う中であります!!」

「テメェ…」

ギリ、と高杉は歯噛みして神山と名乗るグリグリ眼鏡の隊士を睨み据える。

手は刀の柄にある。

「銀時は何処だ」

「ややっ?お前は隊長ではない?ではいったい何番隊の」

「黙れ」

神山の声を挫く。

「銀時は何処だって訊いてる。答えねェ気か」

「ひいいぃ!」

神山はベッドの向こうへ腕を翳して後退る。

声だけで喉笛を噛み砕かれそうな威圧に神山は血の気が引く。

暗がりに相手の顔を見れば、その眼には怒りと憎悪が炎のように巣食っている。

「と、隣りに居ます。本当の病室で休んでおられます…!!」

その瞳の闇の奥深さを正視できず神山は声を震わせる。

「隣り?」

好戦的な男が一驚して呟く。

これは誰なのだろう。

真選組の隊服を着ているが味方ではない、同じ空間にいるのに一生手の届きそうにない遙かな相手。

その強者がふと神山から視線を逸らして思案する。

神山がポケットの端末を握りしめ、指で異変を知らせる警報を鳴らしたのは、その与えられた一瞬の隙を得たからに他ならなかった。

途端に病棟のスピーカーからサイレンが流れ出す。

廊下で隊士たちが敵襲を知って騒ぎ出す。

その護衛たちが向かったのはこの部屋ではなく、銀時が休む隣室で。

神山は携帯端末を握りしめたまま己の死を覚悟する。

腰には刀があったが、とても抜くまで命がもつとは思えなかった。

「…そうか。そういうことか。一杯食わされたな」

隻眼の視線が戻ってくる。

その瞳は笑っている。

「土方に伝えとけ。次は外さねェ、ってな」

「……イッ、イエッサー!!伝えときます!!」

神山は泣き出しそうな顔で敬礼すると、ヘナヘナとベッドに尻餅をつく。

高杉が身を翻し、病室の扉を開けて出ていくのを息を呑んで見つめていた。

 


「なに…なんなの?」

銀時は毛布を剥がれて迷惑そうに抗議する。

「誰も来てねェし、俺寝てただけだしィ!」

両腕で眼を隠す。

「ちょ、まぶしいんだけど」

「旦那、すみません電気つけさせてもらいます!」

「ぎゃあぁぁぁ!やめろ俺を殺す気ィィィ!?」

「探せ、どこかに居るぞ!」

「クッソ~、テメーら覚えとけよ!」

銀時は誰もいないことを確認されたベッドの上で懸命に毛布をかぶる。

 

 

「つまり」

現場の隊士から仔細を聞きとった土方は目を閉じたまま眉を寄せる。

「ウチのGPS受信端末の電波は乗っ取られていたってわけだ」

「…はい。そうとしか思えません」

屯所から駆けつけた隈無清蔵は銀時から受け取った屯所用携帯電話を握りしめて見下ろす。

「着信は確かに屯所からでした。私が聞いたのはカラクリを通してですが副長の声に聞こえました」

「鬼兵隊の武市が変声器を持ってたな」

土方は眉間を押さえる。

「問題はあっさり声を真似られたことより、屯所が改装中であることや隈無が厠の設備を変えたがっていたという真選組の内情をつぶさに握られていたことだ」

「アンタの配備も漏れてたぜ、土方さん」

沖田が横から指摘する。

「なんせ部屋詰めが清蔵さんだって相手に筒抜けだったんですからねィ」

「うるせえ」

土方はぎゅっと目を瞑る。

「万事屋は無事だったし隊士も無傷、病院に実害は出しちゃいねぇだろ」

「まあ囮部屋を仕掛けるってのは悪くなかったかもしれねーや」

沖田が隈無と神山を見やる。

「作戦がうまく運んだのは俺の人選のおかげだけどな」

「た、隊長ォォォ!!」

神山が沖田の前の床に這いつくばって頭を下げる。

「申し訳ありませんーッ!!敵の頭目を前に自分は白刃を交えることもできずッ!!ただ無為に隊長のお戻りをお待ちするしか能がなくッ!!」

「非常ボタンを押したろィ。お前はそれで十分役に立ったんだ」

「しかし隊長ォォォ!!自分は竦んでしまった!!畏れてしまった!!凶悪なテロリストをッ真選組随一の敵である高杉晋助を前に怯えて震えていたなんて自分で自分が許せないっ!!我慢できないっス!!」

「竦んだおかげで助かったんだ。やたらな動きをしてたら斬られてたぜィ」

「私もそう思います」

隈無清蔵が神山の肩に手をかける。

「廊下の見張り二人を、あえて隣りの病室の前に立たせる。本物の坂田さんの病室の前には誰も居ない。高杉はニセの病室を本物と思い込んで入っていく。待っていたのは神山というわけですが、その過程で死傷者が出なかったのは神山も廊下番の隊士もさして高杉を警戒しなかったことでしょう」

「どんなに周到にしても穴があく。だったら最初から穴を作っときゃいい。うまくすりゃ『岡田』が引っ掛かる。そう思っちゃいたが…高杉たァな」

ハァ、と俯く。

「アイツが信州の山の中へ現れたワケが解ったぜ。奴はあの時からウチのGPS端末の受信波を自在にキャッチしてやがったんだ。万事屋の居所を端末情報で調べながらヘリで現場に急行した。そんだけの話だ」

「さァさ、反省会はもういいでしょう。高杉は正面玄関から堂々と逃げやがったらしいし、返す刀で次の襲撃を仕掛けてこないとも限りやせんぜ」

沖田が促す。

「どうするんでィ土方さん。このメンツで一晩中ここを守れってなら詰めやすけどね。手の内はバレてんだ。囮部屋以外の、あらゆる賊の襲撃に備える別の秘策を頼みまさァ」

「………退院させる」

土方はようやく決断した。

「今から医者に掛けあってくる。明日まで待てねぇから今すぐ退院させてくれってな」

「最初からそうすりゃ良かったんでィ」

「いい御判断です。副長」

「これでまた真選組の強引なやり口に悪評が立ちますね!!深夜の横暴な退院要求!!しかし自分はそんな逆境に負けることはない!!運命共同体とも呼べる沖田隊長とともに在る限りはっ!!」

「うるせぇ。撤収の準備しとけ」

土方は両ポケットに手を入れて囮の病室を出ていく。


一時間後。

病院側との折衝を経て銀時の身柄を大江戸病院から屯所へ移すこととなった。


「あっそ」

一番厄介なのは銀時の説得だと見込んでいたが意外にも銀時はすんなり了承した。

「俺もそろそろ畳の上が恋しいと思ってたから?構わねーよ全然」

こころなしか銀時の声が端々で弾んで聞こえる。

「昼間より夜のがまぶしくないしなァ」

この上機嫌がなにによるものか、土方は聞こうとはしなかった。




続く


 

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【2012/11/24 11:50 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第42話 何事も始まるまでが大変 1




「……なんの真似?」

銀時は苦々しく尋ねる。

「俺をバカにしてんの。担架も助けも要らねぇんだよ。目ェなんか見えなくったって一人で歩けますぅ」

「アホか。知らねェ場所で行けるわきゃねぇだろ。とっとと手ぇよこせ。抱いてってやっから」

「サムライがそんなみっともない真似できっか」

銀時は警察車両の後部座席から闇雲に身を乗り出す。

「俺くれェになるとな、一度通った場所は体が覚えてんだよ。まわりの気配が肌で分かんだ。気合い入れりゃ歩けねーはずねェ」

「オイ」

「触んなつってんだろ」

土方の手を嫌がって車を降りる。

真選組屯所、中庭。

車寄せの玄関で隊士たちが見守る中、銀時は真っ直ぐ立つと深呼吸する。

目には遮光性の黒い包帯を巻いている。

「入り口、こっちだろ?」

ひとわたり包帯の顔をぐるりと巡らせてから、ひとつの方向を指さした。

たしかに通用口はそっちだ。

「ニオイで解んだよ」

感心して驚く隊士たちに得意そうに言って歩き出す。

単衣の着流しに、足元は退院のとき便宜的に用意された下駄。

カツンと鳴らして敷石を踏む。

戸口を目指したところで

「旦那ァァ!」

「あたっ!」

玄関ポーチの丸木柱に片足をぶつけてバランスを崩した。

「言わんこっちゃねぇ」

後ろから土方が隊士たちと共に受け止める。

「何年サムライやろうが無理なもんは無理なんだよ。テメーら、このまま連れてっちまえ」

「冗談じゃねェ、人に運ばれるなんてまっぴらだ、んぎゃあ!」

左右から数人で肩と腰を抱えられると体が浮いて足がつかないまま屯所の廊下をドタドタと移動させられていく。

「歩ける、歩けるっつーの!」

「素直に担架に乗っときゃよかったんだよ」

すぐ左肩に土方がいる。

「こんな慌ただしい入場があるか」

「知らねーよ、オメーらの都合なんか!」

「今から行くのはな、突貫で改装した棟なんだよ。屯所の中でも守りの固い居住区に、新たに設けられた所帯持ち用の集合住宅だ」

「集合住宅?って、棟割長屋みたいな…?」

「そんなトコだ」

庭に降りて、しばらく運ばれると新しく削られた木材のニオイがしてくる。

空気の流れが変わる。

建物の陰に入る。

と、戸口を潜って銀時は室内に降ろされた。

「…ここ?」

銀時は感触を探る。

自分が降ろされたのは布団の上だ。

新築の家の、新しい畳のニオイと噎せ返るような木の香り。

「びっくりしたでしょ?」

運んできた隊士たちが声を掛ける。

「もと厩舎を離れの道場に使ってたのを家族用の住まいにしちゃったんですよ、見る間にやっちゃうから俺たちもキツネにつままれたみたいで」

「見る間にって、どんだけ急造? 住めんのかココ!」

「茂吉っていう、江戸には凄腕の職人がいるんですよ」

「…茂吉?」

聞いたような名だ。

銀時はちっちゃいオッサンたちを思い出す。

「もういいだろ、夜も遅ぇんだ」

後ろに立っていた土方が隊士たちを追い立てる。

「てめーらは配置についとけ。くれぐれも覗きに来んじゃねぇぞ」

「副長、ずるいですよ!旦那を独り占めする気ですか!?」

「もともとコイツは俺のモンだ」

「鬼!旦那はケガしてるってのに信じらんねェ」

「誰が怪我人相手に無茶すっかァ!俺は室内警護だ、手なんか出さねぇよ!」

「旦那、無理矢理されたら呼んでくださいね」

隊士が言い聞かせる。この声は山崎だ。

「俺たちいつでも駆けつけますから」

「あぁジミー君?」

銀時はそちらへ顔を向ける。

「ウチの神楽、どうしてる?」

「お元気ですよ。たくさん…食べてます」

山崎の間を含んだ溜息まじりの応答に、神楽がどれだけ屯所の食材を消費しているか表れている。

神楽が新八を案じて飛び出して行こうとしたのを真選組隊士が取り押さえて屯所に軟禁してるのは銀時も知らされている。

銀時が大事にしている子供たちの情報について土方が隠し立てすることはなかった。

「新八は?」

「おそらくですけど…鬼兵隊と行動を共に」

「…ふぅん」

銀時は注意深く頷く。




続く


 

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【2012/11/24 08:31 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第43話 何事も始まるまでが大変 2





「…えーっと」

二人きりになると銀時はバツの悪そうな曖昧な笑みを浮かべた。

「ここって所帯持ち用に改装したの?どんな造り?」

膝の下の布団をぱむぱむ叩いて確かめながら、四つん這いで畳を探り、さりげなく布団から降りていこうとする。

「待てや」

土方がそれを阻む。

「せっかく邪魔者は居ねぇんだ。事実上の初夜だぜ。たっぷり楽しむとしようや」

「な、ちょ、てめっ!」

肩を掴まれ布団に引きずり戻される。

「さっきあいつらに手は出さねェつってたじゃねーかァ!」

「手は出さねェよ。無茶もしねェ」

尻をついて足を崩した銀時を土方は膝をついて覗きこむ。

「けど俺たちゃこれから生涯を共にすんだ。最初の夜は大切にしてぇし。つもる話もありゃ、お前の話も訊きてぇ」

「つもる話って?」

銀時はわたわたと後ろへ下がる。

「そんなもんあんの?土方君て根に持つタイプ?前髪がV字なだけにやっぱりドッキリでしたとか壮大な囮調査でしたとかそんなん?」

背中が床柱にぶつかって余計あわてる。

「いまさら電気代払ってくれないとか困るんですけど」

「あいにくこいつァドッキリじゃねぇ。4日後には俺とお前の祝言だ。婚礼衣装の仮縫いもあるし、お偉方への挨拶のリハーサルもある。いや話ってなァそんなことじゃねぇよ。お前、その…つれあいになんて呼ばれたい?」

銀時の座る前に膝を詰めてくる。

「万事屋、でも坂田、でもねぇだろ?俺はお前を…俺のもんだって実感できる呼び名で呼びてぇ」

「あ、じゃあ…銀さんで」

銀時は詰めた膝の主が膝立ちになって上から被さってくる気配に狼狽する。相手の本気が真面目な話から逸れることを許さない意気込みに満ちている。

「たいていのヤツはそう呼ぶから」

「そうじゃないヤツは?」

両肩を包むように手を置かれる。

「昔からお前と親しいヤツはなんて呼ぶんだ?」

「…あ、……えっと、」

ためらうように言葉を切る。

呼ばれるのは銀ちゃんとか銀時とか白夜叉とか。

「ぎんとき」

答えられずにいると唇が耳元で囁いた。

「親しいヤツは名前で呼んでんだろ。俺はお前と一番親しくなるんだ。だからこう呼ぶ」

「あの、…なんかしっくりこねぇんだけど」

肩をすくめて耳を逸らす。

「オメーに呼ばれてる感じがしねぇ。やっぱ万事屋、がいんじゃね?おたがい無理ない感じで」

「寝床で万事屋って呼ぶのも色気ねぇだろ?」

「いや色気とか求めてねーし」

「俺とお前の関係も変わるんだ。呼び方も変えるんだよ、今までとは違うってお前の耳にまず教えてやらァ」

言いながら唇が銀時の耳たぶに軽く触れてくる。

近すぎる身体を押し戻そうと手を突っ張れば、逆に腰を引き寄せられて距離がなくなり密着する。

「んあ、…ちょ!」

耳からキスが首すじへと降りてくる。

優しくいたわられる行為は銀時を容易に火照らせる。

「ちょ、やめろって。俺まだあんま身体動かねーし」

「動く必要なんざ無ぇよ」

座った銀時に覆いかぶさっていながら土方は体重を掛けない。

「お前の身体…どこもかしこも俺の印つけるだけだ」

「…ゃ、それ痛ぇから…、まだ…待てって」

銀時は首を吸う相手のサラサラの黒髪をぎゅっと指で掴む。

「されても、デキねぇつってんだよ、あの、と、…とうさん?」

とうさん。

呼ばれて土方はピクッと動きを止める。

「…なんだ『父さん』て?」

切れ長の瞳に憤りをよぎらせて顔をあげる。

「なんで俺がお前の父親なんだよ!?タチ悪い寝言ぬかすな!」

「…ひでーなァ」

銀時は離れた分の距離をつかってぼりぼり頭を掻く。

「俺にとって親しい人間は、そいつが男なら…父親みてーな憧れ?家族愛?そういうの求めてぇって思うじゃねーか」

ぷい、と横を向く。

「オレ父親の顔、知らねーし」

「だっ、だからって、父親…!」

土方ははわはわ目を泳がせる。

「ダメだろ怪しすぎらァ。近親相姦みてぇな気分になるじゃねーか、父親呼ばわりされて抱けるか!」

「こんなの…他の野郎にも言ったことねーのに」

銀時は呟きに悲哀を滲ませて土方へ顔を向ける。

「俺、重度のファザコンだから。つれあいにはとーさん、て呼びてぇって…思ってて…こんなん、恥ずかしくて誰にも言えねぇ…お前が結婚相手だっつーから…言ったのに…、なぁ…呼ばせてくれんだろ? お前、俺の…片割れなんだからよ…?」

「………う」

土方は言葉に詰まる。

銀時は真剣だ。

父親への格別の思い。

土方にも分からなくは…いや、分からない。まったく分からないが銀時の頼みだ。

「わ、…わかった」

ぐるぐる頭の中で考えた挙句、銀時に告げる。

「二人きりの時ゃ、とう…」

「お前、十四郎だろ?」

素の声で銀時が言った。

「俺が銀さんだから、お前、十さん。これでスッキリ問題解決じゃね?」

銀時は口を押さえて、うぷぷ…と笑った。




続く
 
 

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【2012/11/24 08:25 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第44話 何事も始まるまでが大変 3




「お前なァ…」

土方は銀時の笑う顔を呆れたように見つめる。

「そんなに俺が疎ましいのか。抱かれんのが嫌なら搦め手の嫌がらせはいらねぇ、ハッキリそう言え」

「嫌じゃねーよ」

銀時が口を尖らす。

「フンギリが付かねぇだけだ」

「高杉に操を立ててんのか」

座った銀時を、ほぼ抱き締めたまま土方が尋ねる。

「お前の心は高杉のもんだ。身体もそうしてぇんだろ?」

「………なに言ってんの?」

銀時は平坦に土方の顔のあたりを見上げる。

「アイツはなんの関係もねーよ。考えてもみろ、オメーだって道でときどき遭うだけの野郎とケッコンしろっていわれたら、そう簡単に身体の関係が持てるかよ」

「なァ万事屋。ネタは割れてんだ。そろそろ白状しようや」

土方は穏やかに、むしろ力無く銀時の頬を親指でなぞる。

「お前は隈無(くなまく)宛ての電話が俺じゃなく高杉からのもんだって解ってたんだろ?お前は病室に高杉が来ることを知っていた。そしてそれを誰にも言わず待っていた。反論はいい、俺ァ確信してる」

身じろいで口を開こうとした銀時を押しとどめて強く抱く。

「高杉はお前の目を治そうとしてたんじゃねぇのか。だから一人で来た。お前を連れて逃げる厄介な逃走経路を確保していたフシは無ぇ。平賀源外の推測どおり高杉はお前の目を治す方法を知っている、お前もそれを承知の上で隈無に黙ってた」

「だっ、そんなん…!」

「根拠はなァ、お前が隈無に電話を代わるとき、そいつが隈無であるかどうか確認しながら代わってたことだよ。普段、隊士の名前なんかどうでもいいお前が、高杉が『隈無は居るか?』って聞いたから隈無以外の野郎だったらまずいと思って確かめたんだ。通話の記録は残ってるんでな、お前らの会話は聞かせてもらったよ。ずいぶん殊勝な声、出すじゃねぇか」

「んぐ、だからそりゃアレだ、お前だと思ったから、えええ演技だろうが!隊士の前じゃアツアツにしとけって…!」

「『岡田』に連れてかれた山荘で、オメーを弄りまわしてた『岡田』を退けたのも高杉だな?」

土方の声は凪いでいる。

「お前は『岡田』は役に立たなかったと言ってた。『岡田』を撃退してお前と思いを遂げたのが高杉だ。身体に残ってた痕跡は高杉のもんだ。違うか?」

「うぅ、だ…だからあんとき、クスリとかいろいろ使われたし、なんにも見えなくて記憶がモーローで、ってか、そのぅ…」

「隠す必要は無ぇよ。攘夷戦争行ったとき、お前らが恋仲だったってのは有名な話らしいな。お前の過去なんざ調べたくもねぇが攘夷浪士を調査してりゃどっからでも目耳に入ってくる事柄だ。その二人がよ、夜中に密会してるとなりゃ、真選組じゃなくても放っておけない事態だと思わねぇか?」

「……え?」

「毎夜、犬つれたお前が高杉と逢ってんのは警察内じゃちょっとした関心事だったんだよ」

「ぁ~…、」

「攘夷戦争の英雄と過激派攘夷集団の頭目が並び立てば、どんな厄介な騒乱が巻き起こって各地にくすぶる浪士どもを奮い立たせねぇとも限らねぇ」

「…んなバカなこたねーって」

「お前を押さえるべきだって動き出そうとする野郎が…新設の警察組織の局長だけどよ、近藤さんがいくらお前は無害な一般市民だっつってこれまでの真選組への助力を挙げても聞く耳もたねぇ。このままじゃオメーを見廻り組に持ってかれちまう、そう判断して俺たちゃお前の囲い込みに踏み切ったんだ」

「つまり…助けてくれたってワケ?」

銀時は自分を抱く土方の腕に手を置く。

「婚姻話も、辻斬り話も、キツネうどんにのった油揚げみたいなもんで、本当のおめーらの狙いは…」

「『あんな野郎にオメーを捕られてたまるか』」

銀時を胸に抱きしめたまま土方はクスっと笑った。




続く

 

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【2012/11/24 08:20 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第45話 何事も始まるまでが大変 4




「攘夷戦争末期に目覚ましい活躍をしたオメーが、その異名をもって敵味方に畏れられていたのは周知の事だ。それでも俺たち真選組はそれに触れないようにしてきた。俺たちが見る限りお前は戦いの鬼神でも血まみれの殺人鬼でもねぇ。人を護りぬくために惜しむものなどありゃしねぇって、ただのバカだ」

「…バカじゃねーよ! これでもなぁ、いろいろ計算して生きてますぅ」

「テメーの命や体面、場合によっちゃ柵(しがらみ)さえもかなぐり捨てる野郎のどこが利口なんだ?」

「んな、大仰なもんじゃねー…」

「夜叉だろうが修羅に堕ちようがオメーは厭(いと)わねぇ。ただ自分の護りたいもん護るために刀振るったんだろ?俺たちゃなァ、その戦いぶりが簡単に目に浮かぶんだよ。今更イチャモンつけるような真似されちゃ真選組も黙ってらんねぇんだ」

土方の手が銀時の後ろ髪を掴む。

「俺たちの仕事は善良な市民を護ることだからな」

「あのよ、えーと…」

銀時は土方の腕をぱんぱん叩く。

「だからって政略結婚はやりすぎだろ? オメーら、そのへんなんも話さねーからワケ解んねーし」

「お前だって何にも明かさねぇだろが」

鼻で笑う。

「答えは全部テメーの中にあるじゃねぇか。『岡田』の蛮行や高杉の行動。テメー、桂と高杉の武力抗争で岡田とは並ならぬ悶着があったってな。橋田屋での捨て子騒ぎのときから岡田はオメーとの勝負に拘ってたそうだが。以前から岡田はオメーに執着してた、違うか?」

「なっ、なんでそんなこと…?」

「チャイナに聞いた」

あっさり土方は明かした。

「昔なじみの桂を殺されたと思ったオメーらが巻き込まれてったくだりもな。高杉が開発してたのは『紅桜』と呼ばれるたいそうなカラクリ仕掛けの刀で、そいつを爆破したのが桂なんだろ?」

「…ん、ぅぐ…、まあ…、そんなこともあった…かもしれませんねェ、」

「さらに高杉は天人とツナギをつけたらしいが、その相手ってのが銀河系最大の犯罪シンジケート『春雨』らしいな」

「え、そんなこともバレて…あ、いや、」

「チャイナによれば岡田はオメーに異様に執着してて、それこそ立ち会いの最中も性的な情熱を注いでたってなァ」

「くぁ~、あの娘ェ!ペラペラペラペラあることないこと何喋ってくれてんだァ!」

「宿主の情報を徹底的に集積した電魄『紅桜』をもとに作られたのが『ネオ紅桜』なら。岡田似蔵の情念を受け継いでオメーを付け狙い、その宿主を操って辻斬りよろしく暴行事件を起こしたってのも説明のつかない話じゃねぇ」

「ちょ、それはねーって!」

銀時は即座に否定する。

「岡田が惚れてんのは高杉なんだよ。野郎は高杉に認められ、重用されて高杉の一番大事な人間になろうとしてんだ。それにゃ俺を血祭りにあげるのがいいと思ったんだか、俺を目の敵にしてんだ」

「血祭りなら仕留めりゃ済む。奴はオメーを欲しがったろうが」

土方が見解を突きつける。

「オメーの名を呼んで探しながら似た野郎を見つけちゃ蹂躙する。けど全員、命は助かってる。ときどき催淫剤使われるケースがあったが、オメーみてぇに神経毒や筋融解剤まで使われることは無ぇ。悪ィが『岡田』にゃ坂田銀時への害意はあっても殺意は感じられねぇんだよ」

「てっ…、テメーは知らねーからっ!」

銀時は瞬間的な怒りに駆られる。

「野郎はなぁ、コトが終わったら俺を殺すつもりだったんだよ…っ! 生かしとく気ならこんな無茶しねーだろ。体中、毒まわってたし、目ェ潰れちまったし、…あの最中だってなぁ、なんかい死ぬって思ったか分からねぇ……って、オイ」

ピクリと妙な気配を滲ませた土方に逆上する。

「その『死ぬ』じゃねぇぇえええ! あんな野郎の触手マッサージに感じるわきゃねーだろォォォ!」

「……なにも言ってねぇよ」

「いや言った!心の中で!お前なぁ、俺がどんだけ悲惨な目に遭ったか解ってる? 憎らしい恋敵をいたぶって殺すために奴ぁ人体の急所を責め続けたんだよ?」

「そりゃ…その通りだろうがよ、」

「許せねぇのはなぁ、獲物にまったく反撃させねぇ卑劣な根性だよ、動けねぇまま嬲り殺しなんて、よくもそこまで人を貶められると思わねぇ?」

「オメー、よっぽど怖かったんだな」

「クスリで動くこともできねぇなんてサムライの死にざまとしちゃお寒い限りだ、奴が辻斬り騒ぎ起こして俺を探したのは手も足も出ずに死んでく屈辱を味わわせるためだよ、あそこで高杉が来なかったら思うつぼだっ…たっ……、んあ…っ!」

「高杉が、どこで来たって?」

「い……いやウソウソ、誰も来てねーよ、」

「隠すこたぁ無ぇだろ?」

後ろへ身を引こうとする銀時を土方が抱きとめる。

「高杉は自分が創り出した『紅桜』の劣化コピーを回収しに動いてんじゃねぇのか。武市が『犯人の身柄は譲る、だが犯人の一部を渡せ』つってたのは犯人が装着していた電脳幹をよこせってことだろうよ。案外、『ネオ紅桜』がオメーを狙って不埒な辻斬り事件を起こすから、高杉は陰ながら護ろうとしてたのかもな」

「……」

「岡田似蔵は死んだのか?」

「…知らねえ」

「高杉は、岡田の生死を掴んでるのか?」

「…どうだかな」

「本物の岡田似蔵が『ネオ紅桜』を携えてお前を襲ったら手に負えねぇ、高杉はそう考えてんじゃねぇのか」

「あのなあ、」

銀時は土方の胸に手を突っ張って距離を開ける。

「ものすごく勘違いしてるみてーだから言うけど、高杉は俺のことなんか何とも思ってねーから。昔っから妥協することも都合聞くこともねェ、はっきり言ってカラダの関係だけだったから」

「アホか。今どきそんなの小学生でも信じねぇ」

「なんで頭っから否定!? お前だって聞いてただろ、人のことボンクラだの死ねだの腑抜けだの、さんざんな言われようだったろーがっ」

「聞いてねぇ」

「エ?」

「少なくても俺のいる前じゃそんな話してねぇよ」

「居たっつーの。バッタリ高杉に遭ったとき言ってたろうが。絶対お前も聞いてた!」

「あぁ、ボンクラってのは昔のことほじくり返すなって釘差してたときな。…ったく、テメーはヤツの言う通りのボンクラだぜ」

あきあきした声で銀時に言う。

「テメーの耳にゃアレが悪態に聞こえたんだろうが、俺にゃそうは聞こえなかった。オメーへの愛着すさまじいだけだろうが。俺への殺気は半端なかったけどな」

「オメーに殺気?高杉が?」

銀時は少し考える。

「そうだっけ?全然気がつかなかった」

「お前と婚礼を挙げようってんだ、俺にはハラワタ煮えくり返ってんだろ」

「そんなことねーよ、俺が誰とどうなろうとアイツどうでもいいんだから」

「どうでもいいなら信州の山ん中までお前を助けに行くか?わざわざ真選組にツラ晒してまで町中で会いにくるかよ。ご丁寧に病院潜入まで果たしてくれやがって、警察のGPS電波まであらかじめ乗っ取っとく用意周到さだ」

銀時の頬をぎゅっとつまむ。

「てめーこそ高杉のあのツラ見てねぇから、んなこと言いやがんだ。ヤツが山荘から逃げてくヘリの中でどんな顔してたと思う? 勝ち誇ったような人を見下した、いかにも出し抜いてお前を手に入れたっつう、当てこすり満面の笑いをヘラヘラ浮かべてやがったぜ」

「ヘリん中のヤツ、よくそこまで見たな」

頬を変形させたまま銀時が可笑しそうに言う。

「アイツ昔っから高いとこ好きなんだよ、ヘリ乗んの嬉しくてたまんないんじゃね?」

「そんなら俺見てニヤつく理由はねぇだろ」

「ムカついてるとこ悪ぃんだけど、高杉が山ん中に居たのは『ネオ紅桜』を回収しに行ったからだよ。あんとき川辺で会ったのも自分の命令外で動いてた手下を無駄死にさせないためだろ?」

「ヤツは『岡田』をどうしたんだ?『ネオ紅桜』の電脳幹を持ち去ったのか?」

「知らねえって、見えなかったし。俺こそ聞きてーくらいだよ。あの『岡田』っぽいヤツ、どうなったの?」

「行方知れずだ。捜索はしたがな、あの付近にゃいなかった」

土方は遠慮がちに付け加える。

「オメーんとこの眼鏡が高杉のヘリに同乗してたのは見たんだが」

「……やっぱ、あのヘタクソなマッサージ、ぱっつぁんかよ。…涙出るわ、いろいろと」

「高杉はオメーを弄り回してた野郎を、たとえそれがガキでも懐に入れちまうような奴なのか?」

「だから先刻から言ってんだろ。高杉は俺を一線から退いた落ちぶれもんだと思ってる。歯牙にもかけてねーよ。アイツが動いてるのは『ネオ紅桜』が出回ってるのが許せねーだけだって」

「俺にはオメーとの体位にまで注文つけてったぜ」

銀時の胸に手を当てる。

「オメー、手負いか? 腹の上に乗っけろってのは自分たち過去の攘夷軍が崇めた武神を組み敷くなってことかと思ったが…あの抗争で怪我してんのか?」

「ちょ、セクハラだろ、」

「高杉はお前の傷に障んねぇように、じりじりしながら精一杯の配慮で俺に頼んだんじゃねぇのか」

「あのなぁ、オメー根本的に間違ってるぜ」

銀時は単衣の上から胸を撫でる手を掴んで動きを阻む。

「高杉は配慮なんかすることは絶対に無ぇ。ちょっかい出したり、邪魔だっつって殺そうとしたり、気まぐれに性欲の捌け口にしたりするけど、俺のために動いたり、都合考えたり、とりわけ俺を助けに来ることなんてありえねーから」

「じゃあなんのために病院に現れたんだ?」

手を掴まれたまま銀時の胸元に手を置いている。

「オメーへの用事以外、考えられねぇだろ」

「本当に来たのかよ」

腹立たしそうに問う。

「俺、全然知らねーんだけど」

「お前の部屋に見せかけた別の部屋に入った」

「じゃあ、そっちに用事あったんじゃね?」

「ッあるわけねぇだろが」

「とにかく。高杉は昔っから俺のことはどうでもいいの。本当ーっに、死んだって構わねーって勢いで、人をいたわるとか、ねぎらうとか、俺以外にはやってたけど俺にはこれっぽっちもねーから。集中砲火ん中でも人を捨ててっちまうし、扱いは乱暴だし、勝手に生きてろ、そんで自分が気が向いたらサッサとヤらせろ、それ以上でも以下でもねェ」

「そりゃ…戦争の頃の話か」

「そうだよ。今だって変わってねェよ」

「万事屋…、俺が高杉に塩なんざ送りたかねぇが」

正面から土方は銀時に告げた。

「人間(ひと)は変わるもんなんだぜ」




続く

 

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【2012/11/24 08:15 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第46話 何事も始まるまでが大変 5




「そりゃ変わるだろうよ。大人になるんだし。誰だってガキのままじゃいられねェ」

銀時は歯がゆそうに返す。

「けどそいつの本質は変わらねーんだ。生き方とか。信条とか。アレだ、三つ子の魂百までってことわざがあんだろ。世間を渡ってくために見かけが小器用になっても根っこんとこは同じだって」

「まあな。おおむね、そんなとこだろうよ」

「だろ?」

「だがな、それとは別に身近な人間を失ったヤツってのは、変わるんだよ」

わずかに土方の手に力が籠もる。

「もうこの世のどこを探しても触ることもできねぇ。世の中にゃ、それ以上に取り返しのつかねぇことなんざ、そうは無ぇんだ」

手を置いたまま銀時の胸元を掴んでくる。

「それを思い知った野郎は今まで気に障ってた過半のこたぁ大した問題じゃねぇって気づくんだよ」

「……お前…、」

「てめーらだって戦争で仲間がたくさん先に逝ったろうが。戦場じゃ、どっかマヒしちまうから身が刔(えぐ)られるような喪失感てのはそうは無ぇ。そんなことより戦わねぇとテメーが死んじまうからな」

銀時は口を噤んでいる。

土方が語っているのは彼自身の経験なのだろう。

「けどよ、高杉がいつの時点でかその痛みをマトモに感じちまったとしたら。世をはかなみ、己の無力を呪い、気が狂いそうな憎悪の中で、これだけは喪失(うしな)いたくねぇって本当に大切なものを探り当てたとしたら、テメェの信条曲げてでもソイツを離さねぇようにするだろ?」

「…アイツの…大切なもの…、」

「お前だよ」

土方は不愉快そうに言う。

「なんで俺がこんな節介焼かなきゃならねぇんだ。とんだ道化だぜ」

「…違ぇ!」

とっさに胸元の土方の手を払いのける。

「アイツが大事なのは死んだ人間だ、生きてるヤツは眼中に無ぇんだ!死者の無念を晴らすために、信じた道を貫くために命を掛けねーのはアイツにとって裏切りなんだよっ」

「高杉が死者のために戦ってるってのか」

土方は払われた手を泳がせる。

「そりゃあ戦争中だけじゃなくて今も?」

「あぁそうだよ、てかどーでもいいしッ!」

「よかねぇだろ、こんだけのことやらかしてる原因はオメーと高杉と岡田の関係の縺れだ」

「オレ外してくんない!? あのクソヤローが高杉に惚れてんのをこじらせただけじゃねーか!」

「外せねぇよ。『岡田』は深夜二人組を狙って一人を昏倒させ、オメーに似た方を襲う。どう見ても横恋慕した野郎がオメーを高杉から奪いとろうとしてんだろうが」

「あぁもうさぁ、もういいわ、めんどくせーよッ! 磔(はりつけ)でも拷問でも何でもすればァ! いっそ俺が攘夷軍の先陣きって天人ぶちのめしてた白夜叉ですぅって名乗っちまおうかなぁ、白日のもとで白夜叉だけに!」

「おまっ…、な、なな、なに言ってんだコラぁぁぁ!」

「知ってんだろ!?知っててその単語だけはずして喋ってんだろ!?そういうの、核心突いてこねぇまどろっこしいセックスみてぇで痛ぇやらコッチから言い出せねぇやらでイライラすんだよっ!」

「それでも口にしちゃならねぇ事柄ってのは存在すんだよッ、黙って近藤さん率いる真選組の武骨な優しさ受け止めとけやァ!」

「そんなもん受け止めきれるかァ!てか、なんで近藤さん!?まどろっこしいセックスに例えたら近藤さんって、テメーはどうなの、テメーはそんなにセックスに自信あんの!?真選組の大将はそんなにセックスが焦れったいんですかぁぁ!?」

「知るかァ!なんでそういう話になんだよ!?オメーがアレだってことは極秘なんだよ、テメーでばらしてどうする、それ隠すために俺たちがどんだけ苦労してると思ってんだァ!!」

「テメーら人を無理やり結婚させようとしといて何が苦労だァ!」

ぺしっと土方のスカーフを叩(はた)く。

「こういうのはさぁ、隠すから窮屈になるんだよ、嘘を嘘で塗り固めて最後は崩落すんだよ、自分で言っちまえば罪人みてーにテメーらの結婚の檻に一生繋がれなくて済むんだろ!?」

「その代わり見廻り組の獄に繋がれんだよ!下手すりゃ首が離れちまうわァ!」

「俺ってそんな極悪人?!なんで死罪って決まってんの!?」

「攘夷のプロパガンダに使われる危険性が高ぇんだ、そんくらい解んだろが!」

「ぷろ、プロパ…なに?」

「プロパガンダ、政治的な意図をもって特定の思想や世論、行動へ誘いこんでく宣伝行為のことだ。この場合は攘夷思想への扇動だよ、オメーを看板にすりゃ人が集まる。オメーは幕府にとって都合の悪い連中への影響力がデケぇ、そういうことだ」

「んなわけねーだろ、これだから関係者以外の当時を知らねぇ外野は困んだよ」

腹の底から溜息をつく。

「俺なんか『部活の対抗戦でちょっと目立ってましたぁ』くらいのレベルだかんね。全国水準じゃ、もっと有名なバケモンみてーな先輩ゴロゴロいたかんね。俺が戦(や)ってたのは戦(いくさ)も終盤、名を上げようにも戦況悪くてそもそも噂話広めてくれる生き残りがいねぇし。軍の大半の連中には面識無ぇよ。敗戦迎えちまったから語りつぐ後輩も居ねェから。『誰それ、知らない』って言われんのがオチだから恥ずかしいから良い加減にしといてくんない!?核心突いても誰もヨガりゃしねーんだよ!」

「安心しろ、そんなこたぁねぇ。俺が調べた限りオメーは名にし負う評判の英雄だ」

「やめて。恥かくの俺だから。ホントやめて」

「とにかく、オメーは一生俺の…、コホン、真選組のモンだ。オメーを真選組の鎖から解き放とうとやってくる連中を片っ端からしょっぴいてやらァ。屯所に居ながらにして浪士どもを大量検挙してやるぜ」

「なに壮大な夢見てんだァ! そんなん一人も来ねーよ!」

「まずは祝言だな。お偉いさんを揃えて真選組隊士がオメーを娶る、そんな席を設けりゃ総悟じゃねぇがオメーを略奪された怒りに燃えた連中がこぞって襲撃してくるだろうよ」

黒い包帯を巻いた銀時のこめかみを指先で触れる。

「俺たちの婚儀は盛大な罠でもあるんだ。狙いは『岡田』、岡田似蔵の執念に操られてオメーを求めて彷徨う辻斬り犯どもを一網打尽だ」

「だっ…!テメーらの罠はピンポイントで新八しかおびき寄せねェェ!」

「『岡田』は複数いたんだな。道理で捜査の狙いが定まらねぇはずだ。ここにいたと思ったら、とんでもないところで目撃証言が出やがる。電脳幹を解除すりゃ姿が変わるから逃走も潜伏も難しくねぇ。今度こそ逃がさねぇ、連続辻斬り事件、真選組が全面解決してやらァ!」

「あのー、聞いてる? 俺は言ったかんね、オメーらの望みの客は集まらねーって。そいつら来なくても俺のせいじゃないからね?」

「狙いは『岡田』だけじゃねぇ。瑣末な攘夷かぶれの浪人どもと、できりゃ『ネオ紅桜』を資金源にする攘夷組織、それから…」

「夢ふくらませてんじゃねーよ、ズボンの股間みてーによォ」

「最上の獲物は高杉晋助だぜ」

「……!」

名を聞いて一瞬固くなった銀時の身体を床柱から引き戻して布団に組み敷く。

「なんと言っても高杉は来る。俺を殺しに…、お前を奪いにな」

「んがっ、ぁ…っ…!」

単衣を剥がれ、むきだしになった胸に吸いつかれながら布団に押さえこまれる。

「や、ちょっ…、!」

「ぼちぼち観念しろや。婚儀は目前だ」

塞がりきらぬ刃物の傷を柔らかく噛んで唇でなぞる。

「口でなんと言おうとオメーが高杉を恋しがってんのは解ってる。けどあの野郎にゃ渡さねぇよ」

色の薄い乳首を下唇で楽しげに弾く。

「オメーに平穏な時間を、物騒な連中とは無縁の暮らしを享受させてやれんのは俺たち真選組だ。目が治らなくても手足が動かなくても構わねぇ」

もう片方の胸にも指が這う。

膝を割られ、股間に手が差し入れられてくる。

「ふッ…、んっ、ゃめ、…う、…っあぁ、」

見えないまま銀時は自分の上に重みをかけてくる土方の肩に掴まって息をあげていく。

『ちょうどいい潮時じゃねーか。これを機に雲隠れしちまったらどうだ? 目が見えなくても生きていけるぜ』

頭の中に浮かんでくるのは源外の言葉。

『攘夷戦争は遠くなったんだ。過去を引き摺ってるより、好いたヤツとその仲間に囲まれて安穏と暮らしてもバチは当たらねーよ』

「ァ、やッ…んぁあ! だッ、…ぁぁうッ…、」

「入籍したら遠慮しねぇ。毎日俺と、こんなだぜ?」

「な、なに…、どこ…触ってんだっ、…は、離しやがっ、ぁあっ…!」

「オメーなら手負いだろうが目が効かなかろうが、俺を拒むくれーのことはできんだろ?」

銀髪を掻きあげ、顔をよく見えるように自分へ向かせてから唇を唇に寄せる。

「よく考えろ。俺を選ぶか、高杉を選ぶか」

唇が力強い熱に覆われる。

「高杉を選ぶなら押しのけろや。けど俺とここで暮らすなら、このまま…」

「んっ……、は…、っ…、」

口にぬめる柔らかいものを受け入れながら下腹部をまさぐられる。

ようやく銀時は気がつく。

自分の恋心を向けるべき相手を明確にする時なのだと。

「どうする?」

囁きながら愛撫してくる。

身体はとっくにヒクついている。

誰を求めれば安楽か、身体は答えを知っている。

「んっ、は…ぁ、」

答えようにも口の中は熱い滾りに喉まで蹂躙されている。

手は、土方の隊服を掴んでいる。

裾を割って立てた足には土方の手が這っている。

ときおりひどく優しく手が髪を梳いてくる。

啼きながら身を震わせ、銀時は包帯の下で目を伏せていった。




続く

 

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【2012/11/24 08:10 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第47話 何事も始まるまでが大変 6




「銀ちゃんの部屋はここアルな」

神楽は真新しい集合住宅の区画へ一人で踏み入れる。

同じようなドアのひとつを選んでノックした。

「新婚さん専用部屋、間違いないアル。……銀ちゃん、起きてるアルか? 世話焼きに来てやったヨ、早く開けないと勝手にドア開けるヨ」

「かっ…神楽ァ!?」

蹴り心地を確かめるように神楽がドアをコンコンしていると、銀時の慌てて戸惑った声が部屋の中から返ってきた。

「ちょ、待て!開けんな、今そのっ…、やべーからいろいろと!」

「なにアルか?」

神楽がキョトンと訊ね返す。

「銀ちゃんの裸なんかヤバくないアル。それともパンツもどっか行っちゃうほど激しい夜を過ごして腹くだしながら吐いてるアルか」

「俺がいつそんな夜の果てに吐きましたァ!?そんなんじゃねェ、いいから誰か…、ええとジミー君呼んでくんない!?ジミー君だけ部屋に入ってもらう感じで、他の奴にはナイショな感じで頼みてェから!」

「ジミー君? 誰アルカそれ」

「山崎だ、そう言やァ通じる」

ドアは閉まったまま、銀時の傍らから土方が答える。

「悪いな、チャイナ娘。山崎に、…氷で冷やしたタオル持ってこいって伝えてくれねぇか」

「わかったアル。銀ちゃん、熱出したアルか」

神楽は部屋の中の銀時を気にかける。

「急な退院だったから熱出るかもって、あのアイツが言ってたアル。銀ちゃんが風邪で寝込むのはいつものことネ。でも今回は『ネオ紅桜』の毒でどんな後遺症が出るか解らないって、場合によったら誰とも知らない男の子供を身ごもることになるかもって言ってたから、銀ちゃんもしかして妊娠したアルか。それでドア開けられないアルな」

「なんで俺が妊娠んん!?俺は男だっつーの、しかも誰か解らないヤツの子供って、どんだけアバズレなんだよ!」

「『ネオ紅桜』の目的は銀ちゃんを襲って身ごもらせることだったって聞いたネ。ただし『ネオ紅桜』は実体がないから、それを使ってるシャバい野郎どもが精子提供者になるって言ってたアル」

「それホントか?」

銀時はぐっと息を呑む。

「ヤツの目的ってソレェェェ?!なんつーとんでもねェこと考えてんだァ!そんであの実力行使ィ?…冗談じゃねェ、許せるかァ!!」

「銀ちゃんの体内でカプセルみたいなのが破裂すると身ごもるんじゃないかって言ってたヨ」

「か、カプセルぅぅ?」

銀時は自分の身体を探る。

「ちょ、どこにあんのそんなの?!取ってぇ今すぐ取ってェ!切れるとこなら切り落としてえいりあんの侵略を食い止めるわ、刀貸してくんない、お願いします!!」

「オイ、それ多分…総悟の流言だぜ」

土方が言いにくそうに口を挟む。

「全身くまなくオメーは病院で検査済みだ。これといった異常は無かった。『岡田』がオメーの身体に何か仕掛けを残してるってのは総悟が勝手に想像してるだけの話でなんの根拠も無ぇ」

「でもよ、沖田君がそう思ったってことはなんか理由があんだろ、まるっきり根も葉もないってわけじゃ…」

「あぁ、化け物じみた暴行犯がオメーを狙った合理的な説明を総悟はずっと考えていた。あんときゃまだ岡田似蔵とオメーの因縁をこっちは掴んでなかったのでね」

「あ…なに? なにか情報があったわけじゃねーの?」

「被害者の状況からして恨みよりゃ狂信的な執着のセンが強かった。手口を見るとどうも念入りな生殖行為なんじゃねぇかって現場じゃもっぱらの見方でな」

「…やめてくんない? ヤツの種ぇ仕込まれるとか考えたくねーし! しかもあれ、…ぱっつぁんだったら、…ぱっつぁんだったら…!!」

んぎゃああぁ…と雄叫びがあがる。

「ていうかあの花粉症リーゼント野郎、生きてんの!?死んでてもいいけど、もっぺん死んでくんねーかな!?一個の細胞も蘇らないカンジで!ゼッタイ俺の前に現れない保証書つきで!」

「…盛り上がってるとこ悪いけどワタシもう行くヨ」

神楽が乾いた口調で告げる。

「銀ちゃんなら身ごもってもなんとかなるアル。せいぜい優秀なオトコの種を狩りとれヨ」

「失礼なこと言うんじゃねーよ!なんとかならないしィ!てか身ごもらねーしぃぃ!」

「銀ちゃんが着る婚礼衣装見たアルか?」

神楽は大きな瞳でジッと扉を見つめる。

「自分の目で確かめるといいアル。話はそれからネ」

「エッ…?」

銀時は返事を待って耳をすます。

聞こえたのは神楽が駆けていく仄かな足音だけだった。



「俺、見らんないんだけど…」





続く


 

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【2012/11/24 08:05 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
第48話 何事も始まるまでが大変 7




部屋に呼ばれた山崎は手際よく用事をこなした。

二人分の朝食を運びこむと、彼は如才なく退出した。

「んで。婚礼衣装ってどれよ?」

朝食を済ませたらしい銀時と土方が姿を見せたのは、屯所の隊士たちが午前の勤務のためにとっくに宿舎から出払った後だった。

銀時は両眼に黒い包帯をつけ、土方の腕を掴んでいる。

「神楽は何を見ろって言ってんの?」

「さぁな。けど丁度良かった。オメーにも衣装を合わせておきてぇ。あとコンタクトレンズ」

土方は銀時が平らな地面を踏めるよう誘導していく。

「さすがにグラサンやアイマスクじゃお偉いさんたちに顰蹙を買う。包帯ってのも、めでてぇ席で負傷してるのかって煩せぇ小言を言われかねねぇ。それで遮光性の高い、ほぼ目隠ししてるのと変わらねぇコンタクトを用意した」

「コンタクトって、目ん中いれるヤツ?」

銀時は警戒気味に尋ねる。

「痛ぇのはゴメンだぜ。てか目ん玉に、ちっこいモンかぶせたくれーじゃ眩しくて目ェ開けてらんねーよ」

「安心しろ、虹彩よりでけぇ。眼への刺激もごく少なくしてくれるとよ」

「でけぇって、…そんなデカいもん入るかァ!」

銀時が声をあげる。

「まさか目ん玉全体に被せるんじゃねーだろな!?もうレンズってよりそりゃ眼球カバーだよ!目ぇ開けたら白目も黒目もなくベッタリ真っ黒だったら負傷中とかそんな可愛いもんじゃねェ、人前に出ちゃいけないレベルだよ、ホラーだよ!」

「さすがにそりゃ…大丈夫なんじゃねぇか? 一応、相手は技術屋だし」

土方は自信なさそうに口ごもる。

「ともかく完成品が届いてるはずだ。オメーにゃそれを着けてもらって本番に備え、慣れてもらう。なぁに、そんなに深刻に考えなくとも目ぇ伏せて下向いてりゃいい。わずかな時間の辛抱だ」

「いま辛抱つった。辛抱ってからには俺が辛くて苦しいことをオメーも解ってるってこった」

「…オメーはっ、苦しいのは自分だけだと思ってんのか!」

土方も声をあげる。

「ちったぁ人の気も考えろ!オメーが…! …っ、オメーが難儀してる横で俺が安穏と式の次第を満喫するとでも思ってんのか!?」

「そうじゃねぇ!そうじゃねぇけどよ、もっぺんお偉いさんにだなァ、アイマスクか包帯の着用を認めさせるよう根回しする努力をだなァ!」

「こっちも大枚はたいてオメーの特殊コンタクトレンズを発注しちまったんだよ!」

銀時の手を引いて縁側の踏み石から母屋の廊下へあがる。

そのまま障子を開けて座敷へと踏み入れる。

座敷に人の気配はなく、真新しい衣装が上等な絹の匂いを放っている。

「だったらせめて「黒目です」ってごまかせるレベルの普通サイズに変更してくんない!?オメーは俺が『妖怪めぐろ』でもいいわけェ!?」

「………うるせぇぇえ! とりあえず暗室に入って包帯解けやァ!」

土方は急ごしらえの仕切りの中に銀時を連れ込む。

「ここでコンタクトの試着をだなァ、……あ。」

「んだよ。どーした?」

銀時は後ろから土方を窺う。

「黙ってちゃ解らねェだろ、俺は見えないんだからそうやって不安を煽るのはやめとけ。どうせ大したことじゃねーんだろ?」

「これ。……まごうことなき眼球カバー」

モノを取り上げて頬をヒクつかせながら銀時を振り返る。

「オメーの目にピッタリのサイズだと思う」

「………ホラね、ほらねェェェェ!!」

銀時が騒ぎ立てる。

「人類がなんでサングラスを採用してきたか解る?!光を遮るのに目ん玉に異物を差し込むのは効率が悪いからだよ!皆そろって目ん玉ヌラヌラになるのを防いできたんだよ!」

「ぐぬぬ…、どうなってんだ…、」

土方は長径3センチほどもある特注レンズを箱ごと握りしめる。

「祝言の席で使うって重々説明したんだぜ、」

その微妙な曲線を描く品物全体が黒い光沢を放っている。

装着したら、銀時の言うとおり眼が均一な黒光りに見えるだろう。

「あのカラクリ技師、祝儀代わりに腕を振るうってやる気出してたのに…なんでだ?!」

「祝儀代わり?カラクリ技師?」

銀時が聞きつける。

「それってもしかして平賀のジーサン?」

土方から否定の言葉が返らないのを見て鬼の首を取ったように笑う。

「そりゃ無理だろ。あのオヤジ、コンパクトで繊細なモンはカラクリじゃねェって豪語してるし。デカくてプリンなケツが好きだし。あんなガサツなオヤジに目に入れるような儚いモン作れるわけねーよ」

「光工学はお手の物って自負してたんでな」

土方は手にしたコンタクトレンズをためつすがめつ眺める。

「古来よりのカラクリ技術に天人由来の素材や原料を取り入れて100パーセント光をカットする十全なものが作れるって言ったんだ。可視外光線も弾くってよ」

「お前ら、よくあのジーサンに依頼する気になったね」

銀時は呆れと感心の入り混じった溜息をつく。

「相手は将軍暗殺未遂のお尋ね者だろうが」

「お尋ね者だろうがなんだろうが技術は買う」

土方は箱からレンズのひとつを取り出す。

「目的のためなら一時的な休戦だって有り得らァ。…入れてみろやコレ」

「エッ? …どうやって」

銀時は素朴な疑問を返す。

「やったことないし。コンタクトって目が見えなくてもハメられるモンなの?」

「さぁな、俺も使ったことねぇから解らねぇ。耳栓するみてぇにキュッキュと詰めちまえばいいんじゃねぇか?」

「ちょ、そんな鼻血にティッシュみたいなノリでいいのかよ? これ以上、目が再起不能になりたくないんですけど」

「…まて、ここに取説が入ってる」

土方はガサゴソ紙を広げる。

「『レンズは自然に眼球に吸いついていく』だとよ。やっぱり目に被せるだけでいいんじゃねぇか」

「ちょ待てェ、待ってェェ!」

銀時の包帯を解かせ、目にコンタクトを押しつけてこようとする土方の手を必死で掴む。

「そんなモン吸い寄せる磁石みてェな機能、俺の眼球には無いから!」

「けどそう書いてあんだぜ」

「それだけ!?他になんも無いの?」

「ええと、…あ。『極限まで近づけろ』って書いてある」

「ウソォォォ!」

再び目に迫ってくる巨大コンタクトを押し戻す。

「ゼッタイ違うぅぅ!なにかが違うぅ!!」

銀時は目を押さえて身を翻す。

「つきあいきれっか、そんなもん被せられんのはゴメンだぜ!」

「あ、バカッ、暗室から出たら…!」

「んぎゃがああああっ!」

黒いカーテンで遮られた狭い空間から出た途端、もんどり打って銀時は転がる。

両肘で眼を塞いだが室内の比較的弱い光でも過敏な眼器には耐えられなかった。

「言わんこっちゃねぇ」

土方がうずくまる銀時を抱え起こす。

「一旦、暗室へ入っとけ。もうしねぇから。……アレ?これ折れてるとこ広げたら続きがある」

源外の説明文に目を落とす。

「『指で上下のまぶたを開いて以上のことを行え』」

「ううっ…、あんのクソジジィ…、最初の手順を最後に書くんじゃねーよ!」

ぼろぼろと涙が銀時の両眼からしたたっている。

「オメーもなぁ、ひととおり読んでから人にモノを押しつけろやァ!」

「あぁ…つまりこういうことか。『指で上下のまぶたを開いて極限まで近づけろ。そうすりゃレンズは自然に眼球に吸いついていく』」

「ハメるのも吸いつかれるのも入れるのも今はしたくねェ…」

「そうか?じゃあやめとくか」

土方は暗室でしゃがみこむ銀時を見やる。

「『ハメたとしても痛くないはずだ。なぜなら痛みを緩和する特殊素材を練り込んである』」

「えっ、…そうなの?」

「『これには極秘に入手した失明毒中和剤が仕込んであるからハメていれば見えるようになる。騙されたと思ってハメておけ』」

「ま、マジでか!」

銀時は顔をあげる。

「やってくれたぜジーサン、アンタ掛け値なしの天才だ!救世主ってオメーのことだよ!!」

「『ただし視力が残ってないときは完全に悪化させる』」

「…エッ?」

「『目が痛ぇときや見えないときは、絶対にハメるな!』」

「………目が痛ェし見えないからハメようってんだろーがぁ!!」

うがぁぁぁ!と銀時は座敷の畳を叩いて暴れる。

「あのジジイなに考えてんだァ、俺の目に最後のトドメ刺す気ィ!?」

「今はやめといた方が無難だな」

土方は説明書もろともコンタクトを箱にしまい始める。

「もう一度、使い方を慎重に問い合わせてみらァ」

「…頼む」

すっかりうなだれた銀時は憐れを誘う。

そう見えても源外が入手した中和剤の情報がどこからもたらされたのか、銀時は十分に承知しているだろう。

土方は外した包帯をもう一度銀時の眼に巻き直すと銀時の手を引いて暗室を出る。

「先にコッチを済ませちまおうぜ。祝言当日、オメーが着る婚礼衣装だ」

暗室が置かれたと同じ座敷に、上等の着物が衣桁(いこう)に掛けられている。

「これっ…!?」

銀時の手に衣装の布地を触らせると、銀時は驚愕を浮かべた。




続く

 

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