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「そうだけど?」 「つきあってる相手くらいは居ますよね」 さぐるように眼が銀時を見上げてくる。 「たとえば、夜な夜なデートしてる相手とか」 「…いねーよ、そんなん」 「そうなんですか、意外でさぁ」 沖田はトボけた顔で首を傾げる。 「こいつァ計算外だ。でも将来を誓いあった恋しい相手ってのは居るんでしょう?」 「だから居ねーッて」 言い放って沖田から離れる。 「話がそれだけなら行くぜ。愛しいパフェちゃんを待たせてるんでね、あっちのファミレスの厨房に」 「待ちな。話は終わってねェ」 土方が逃げ道を塞ぐように回りこむ。 「むしろこっからが本題だ。万事屋、これは武装警察真選組としての仕事なんでな」 刀の鞘をつかんだまま、その顔をあげて銀時を睨む。 「悪く思うなよ」 「…かまわねーよ」 銀時は感情をのせずにそちらに顔を向ける。 土方の鋭い視線を躱しもせず受け止める。 相手の呼吸を伺いながらあらゆる剣戟の動きを身体がなぞり始めたとき。 スッと間合いに入ったものが銀時の腕を掴んだ。 「と、いうわけで旦那。真選組に嫁に来てくだせェ」 掴んだものは沖田の両手だった。 ひとつ間違えば銀時の木刀に叩き折られていたそれは無邪気を装った呈で銀時の利き腕を絡めとっている。 「あ、俺だ。車まわしてくれ。場所は柳川の弁当屋の角な」 即座に携帯電話を取り出し指示を与える。 その間も銀時の腕を1ミリも離さない。 「ちょっと、ちょっと。沖田君」 銀時は首をまわして沖田を見下ろす。 「なにやってんのオメーは。そして今、俺の耳におかしなことが聞こえたんで離してください」 「おかしくねーでさぁ。あんたの耳はデビルマンより高性能だから自信持ちなせェ」 「いやだ。そんな自信は捨てる。捨て去る。人間、謙虚が一番なんだよ。お前も謙虚になれ。なんか変なこと言っちまっても取り返しがつくから。とりあえずこの手を離せ」 「離したら逃げちまうでしょう。そんな小学生でも分かりきったこと俺に勧めてアンタは恥ずかしいと思わねーんですか。悔い改めてとっとと真選組の軛(くびき)に繋がれやがれ」 「だからナニそれ」 真顔で沖田を覗きこむ。 「ぜんぜん意味が分かんないんだけど。連行か?つまり任意同行を求められているのか俺は」 「アタマが弱ぇ弱ぇとは思ってやしたが、ここまでとは」 沖田は情けない、といった風情で首を左右に振り動かす。 「アンタには好きな御人は居ないんでしょう?だから真選組に嫁に来てもらうんでさ。ウチはトップの近藤さんから最年少の俺まで、よりどり男が揃ってますぜ。好きなのみつくろってくだせェ。なんなら隊士をはべらせますんで。好みを言ってくれれば何人でも取り揃えまさァ」 「オメーにはいつか負けるんじゃねーかと思ってたけどよ。ボロ負けしたわ今、頭の悪さで」 銀時は声に苛立ちを潜める。 「オメーんとこの隊士、野郎ばっかじゃねーか。なんで俺が嫁?俺りゃ男だろ?男と男で嫁も婿も新郎も新婦もねーんだよ」 「大丈夫、天人の便利な薬があるんで。女体化なんてアッと言うまでさァ」 「んなもん、するかァァァ!!」 銀時は腕を引く。 「お前らが女になれ!いやソレだってお断りだけどね!とにかく妥協できそうなポイントがみつからねぇ、この件はなかったってことで!!」 「なに言ってるんですかィ、コトはそんなに簡単じゃねーや」 沖田はやってきたパトカーに合図を送って傍まで寄せる。 「一人ずつ試用期間で夜の相性でも見るんですね。俺もバッチリ旦那を俺好みの嫁に仕上げてみせまさァ」 「なに言ってんの、この子」 銀時は沖田の本気を感じて土方を見る。 「ちょっとおたく、どーいう教育してるわけ?これが警察の仕事だとでも言うつもりじゃねーだろな!」 「………岡田似蔵」 土方は二人のやりとりの間、取り出して吸っていた煙草を口から外して煙を吐く。
「この名を知ってるだろ。残念ながら、テメーに拒否権はねぇんだ」 PR |
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