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「ウソ、本当に来たァ!?」 真選組屯所は、にわかに騒がしくなった。 銀時がパトカーから降りるとそれを見かけた隊士たちがワッと銀時を取り囲む。 奥へ知らせに行く者や、緊張の面持ちで走りこんでくる者もいる。 「旦那、旦那、本当に嫁に来るんですか、誰にしたんですか、もう決めたんですか!?」 「俺って可能性もありますよね、」 「夢みてーだぁぁよかったァァァ!」 「旦那が嫁にッ!」 「触らせてくれ触りてぇぇぇ!」 群がって一歩も進めない。 銀時は真ん中でボーっと立ったまま興奮の隊士たちを意欲のこもらない瞳で眺めている。 その着物や主に腰のあたりに手を伸ばしてくる隊士たちを沖田が押しのけて道を開く。 「テメーら邪魔だ。すっこんでろぃ。旦那は俺の貞淑な淫乱嫁になるに決まってら。欲しかったら腕づくで奪りにきやがれ」 その場をぐるりと一瞥する。 「全員でなァ」 「……」 銀時は沖田に目をやる。 少し姿勢を低くした沖田から発せられたのは殺気。 眼にはギラついた刃物のような光が宿り、それに射竦められた隊士たちは反射的に腰の刀へ手を泳がせる。 後ろへ下がる者も、当の銀時の背中に隠れようとする者もいる。
土方の一声がその空気を破る。 「伝令いるか」 「はっ、ハイ、ここに」 「役職者に伝えろ。万事屋の件で会議室に集合。各部署の希望者志願者も同席のこと。以上だ」 「ははっ!」 一人の隊士が屯所内のどこへともなく走り去る。 それを見やることもなく土方は屋敷の中へと入っていく。 「いくぞ、総悟。とっととソイツ連れてこい」 「へい」 総悟は銀時の腕を取る。 「じゃあ行きやしょうか、旦那」 「いいけど。どこへ?」 「俺たちの愛の巣でさァ」 「どこ連れてく気だコラァ!」 土方が振り返って怒鳴る。 沖田は銀時を屯所の裏庭へ連れていこうとしている。 「ソイツの処遇はまだ決まってねぇ!テメェの部屋に勝手に引っ張り込むんじゃねぇよ!」 「チッ…年寄りはくだらねぇ会議とかで若者の貴重な愛の時間を奪いやがる。旦那はハナから俺のものって決まってんのにな」 「んなもん決まってねぇだろ!まだ万事屋の意向も聞いてねぇ。本人の承諾なく進む話じゃねんだよ」 「俺の愛はこうでさァ、旦那」 沖田は銀時へ向き直り、ヒシと握った銀時の両手を自分の胸元へ掻き抱く。 「アンタを縛り上げて一日中ベッドから降ろしやせん。むろん誰の目にも触れさせやせん。アンタは俺にすべてを任せ、俺はアンタに快楽を注ぎ続ける。アンタは永遠に俺のもんでさァ」 「……オイ、総悟」 土方は頭痛のしてきたこめかみを押さえる。 「大概にしとけ。万事屋がドン引きだろうが」 「え。マジで?」 銀時が沖田を覗き込む。 「一日中寝てていいの?仕事行ったり家賃払わなくていいのかよ?」 「あたりまえでさァ。アンタは俺の愛の奴隷なんですからねぃ」 「愛の奴隷つーか、金の奴隷な」 「お好みなら札束で頬をなぶってやりまさァ」 「うわソレ昇天するぞマジで」 「…ちょ、」 土方が頭を抱える。 「ちょっと待てぇぇぇ!なに意気投合してんのお前ら!お前らの趣味に走ったプレイの詳細なんかどうでもいいし!聞きたくねぇし!んなもんさせねーし!絶対やらせっかァァァ!」 「見苦しいですぜ土方さん」 言い放って、くるっと銀時を見る。 「じゃあ旦那、嫉妬男も見苦しいことですし、いったん戻って俺たちの愛を連中に認めさせやしょうかね」 「かまわねーけど」 銀時はダルそうな目で尋ねる。 「いつどこに俺たちの愛があったの?」 「ここでさ」 ちゅ、と握りしめた銀時の両手に口づける。 そしてそれを離すと、にこっと銀時にだけ、きれいな笑みを向ける。
「俺がアンタを手に入れたら一日中離しません。ソレだけは確かでさァ」 PR |
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