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* 高銀話です(連載中) 二人分の朝食を運びこむと、彼は如才なく退出した。 「んで。婚礼衣装ってどれよ?」 朝食を済ませたらしい銀時と土方が姿を見せたのは、屯所の隊士たちが午前の勤務のためにとっくに宿舎から出払った後だった。 銀時は両眼に黒い包帯をつけ、土方の腕を掴んでいる。 「神楽は何を見ろって言ってんの?」 「さぁな。けど丁度良かった。オメーにも衣装を合わせておきてぇ。あとコンタクトレンズ」 土方は銀時が平らな地面を踏めるよう誘導していく。 「さすがにグラサンやアイマスクじゃお偉いさんたちに顰蹙を買う。包帯ってのも、めでてぇ席で負傷してるのかって煩せぇ小言を言われかねねぇ。それで遮光性の高い、ほぼ目隠ししてるのと変わらねぇコンタクトを用意した」 「コンタクトって、目ん中いれるヤツ?」 銀時は警戒気味に尋ねる。 「痛ぇのはゴメンだぜ。てか目ん玉に、ちっこいモンかぶせたくれーじゃ眩しくて目ェ開けてらんねーよ」 「安心しろ、虹彩よりでけぇ。眼への刺激もごく少なくしてくれるとよ」 「でけぇって、…そんなデカいもん入るかァ!」 銀時が声をあげる。 「まさか目ん玉全体に被せるんじゃねーだろな!?もうレンズってよりそりゃ眼球カバーだよ!目ぇ開けたら白目も黒目もなくベッタリ真っ黒だったら負傷中とかそんな可愛いもんじゃねェ、人前に出ちゃいけないレベルだよ、ホラーだよ!」 「さすがにそりゃ…大丈夫なんじゃねぇか? 一応、相手は技術屋だし」 土方は自信なさそうに口ごもる。 「ともかく完成品が届いてるはずだ。オメーにゃそれを着けてもらって本番に備え、慣れてもらう。なぁに、そんなに深刻に考えなくとも目ぇ伏せて下向いてりゃいい。わずかな時間の辛抱だ」 「いま辛抱つった。辛抱ってからには俺が辛くて苦しいことをオメーも解ってるってこった」 「…オメーはっ、苦しいのは自分だけだと思ってんのか!」 土方も声をあげる。 「ちったぁ人の気も考えろ!オメーが…! …っ、オメーが難儀してる横で俺が安穏と式の次第を満喫するとでも思ってんのか!?」 「そうじゃねぇ!そうじゃねぇけどよ、もっぺんお偉いさんにだなァ、アイマスクか包帯の着用を認めさせるよう根回しする努力をだなァ!」 「こっちも大枚はたいてオメーの特殊コンタクトレンズを発注しちまったんだよ!」 銀時の手を引いて縁側の踏み石から母屋の廊下へあがる。 そのまま障子を開けて座敷へと踏み入れる。 座敷に人の気配はなく、真新しい衣装が上等な絹の匂いを放っている。 「だったらせめて「黒目です」ってごまかせるレベルの普通サイズに変更してくんない!?オメーは俺が『妖怪めぐろ』でもいいわけェ!?」 「………うるせぇぇえ! とりあえず暗室に入って包帯解けやァ!」 土方は急ごしらえの仕切りの中に銀時を連れ込む。 「ここでコンタクトの試着をだなァ、……あ。」 「んだよ。どーした?」 銀時は後ろから土方を窺う。 「黙ってちゃ解らねェだろ、俺は見えないんだからそうやって不安を煽るのはやめとけ。どうせ大したことじゃねーんだろ?」 「これ。……まごうことなき眼球カバー」 モノを取り上げて頬をヒクつかせながら銀時を振り返る。 「オメーの目にピッタリのサイズだと思う」 「………ホラね、ほらねェェェェ!!」 銀時が騒ぎ立てる。 「人類がなんでサングラスを採用してきたか解る?!光を遮るのに目ん玉に異物を差し込むのは効率が悪いからだよ!皆そろって目ん玉ヌラヌラになるのを防いできたんだよ!」 「ぐぬぬ…、どうなってんだ…、」 土方は長径3センチほどもある特注レンズを箱ごと握りしめる。 「祝言の席で使うって重々説明したんだぜ、」 その微妙な曲線を描く品物全体が黒い光沢を放っている。 装着したら、銀時の言うとおり眼が均一な黒光りに見えるだろう。 「あのカラクリ技師、祝儀代わりに腕を振るうってやる気出してたのに…なんでだ?!」 「祝儀代わり?カラクリ技師?」 銀時が聞きつける。 「それってもしかして平賀のジーサン?」 土方から否定の言葉が返らないのを見て鬼の首を取ったように笑う。 「そりゃ無理だろ。あのオヤジ、コンパクトで繊細なモンはカラクリじゃねェって豪語してるし。デカくてプリンなケツが好きだし。あんなガサツなオヤジに目に入れるような儚いモン作れるわけねーよ」 「光工学はお手の物って自負してたんでな」 土方は手にしたコンタクトレンズをためつすがめつ眺める。 「古来よりのカラクリ技術に天人由来の素材や原料を取り入れて100パーセント光をカットする十全なものが作れるって言ったんだ。可視外光線も弾くってよ」 「お前ら、よくあのジーサンに依頼する気になったね」 銀時は呆れと感心の入り混じった溜息をつく。 「相手は将軍暗殺未遂のお尋ね者だろうが」 「お尋ね者だろうがなんだろうが技術は買う」 土方は箱からレンズのひとつを取り出す。 「目的のためなら一時的な休戦だって有り得らァ。…入れてみろやコレ」 「エッ? …どうやって」 銀時は素朴な疑問を返す。 「やったことないし。コンタクトって目が見えなくてもハメられるモンなの?」 「さぁな、俺も使ったことねぇから解らねぇ。耳栓するみてぇにキュッキュと詰めちまえばいいんじゃねぇか?」 「ちょ、そんな鼻血にティッシュみたいなノリでいいのかよ? これ以上、目が再起不能になりたくないんですけど」 「…まて、ここに取説が入ってる」 土方はガサゴソ紙を広げる。 「『レンズは自然に眼球に吸いついていく』だとよ。やっぱり目に被せるだけでいいんじゃねぇか」 「ちょ待てェ、待ってェェ!」 銀時の包帯を解かせ、目にコンタクトを押しつけてこようとする土方の手を必死で掴む。 「そんなモン吸い寄せる磁石みてェな機能、俺の眼球には無いから!」 「けどそう書いてあんだぜ」 「それだけ!?他になんも無いの?」 「ええと、…あ。『極限まで近づけろ』って書いてある」 「ウソォォォ!」 再び目に迫ってくる巨大コンタクトを押し戻す。 「ゼッタイ違うぅぅ!なにかが違うぅ!!」 銀時は目を押さえて身を翻す。 「つきあいきれっか、そんなもん被せられんのはゴメンだぜ!」 「あ、バカッ、暗室から出たら…!」 「んぎゃがああああっ!」 黒いカーテンで遮られた狭い空間から出た途端、もんどり打って銀時は転がる。 両肘で眼を塞いだが室内の比較的弱い光でも過敏な眼器には耐えられなかった。 「言わんこっちゃねぇ」 土方がうずくまる銀時を抱え起こす。 「一旦、暗室へ入っとけ。もうしねぇから。……アレ?これ折れてるとこ広げたら続きがある」 源外の説明文に目を落とす。 「『指で上下のまぶたを開いて以上のことを行え』」 「ううっ…、あんのクソジジィ…、最初の手順を最後に書くんじゃねーよ!」 ぼろぼろと涙が銀時の両眼からしたたっている。 「オメーもなぁ、ひととおり読んでから人にモノを押しつけろやァ!」 「あぁ…つまりこういうことか。『指で上下のまぶたを開いて極限まで近づけろ。そうすりゃレンズは自然に眼球に吸いついていく』」 「ハメるのも吸いつかれるのも入れるのも今はしたくねェ…」 「そうか?じゃあやめとくか」 土方は暗室でしゃがみこむ銀時を見やる。 「『ハメたとしても痛くないはずだ。なぜなら痛みを緩和する特殊素材を練り込んである』」 「えっ、…そうなの?」 「『これには極秘に入手した失明毒中和剤が仕込んであるからハメていれば見えるようになる。騙されたと思ってハメておけ』」 「ま、マジでか!」 銀時は顔をあげる。 「やってくれたぜジーサン、アンタ掛け値なしの天才だ!救世主ってオメーのことだよ!!」
「『ただし視力が残ってないときは完全に悪化させる』」 「………目が痛ェし見えないからハメようってんだろーがぁ!!」 うがぁぁぁ!と銀時は座敷の畳を叩いて暴れる。 「あのジジイなに考えてんだァ、俺の目に最後のトドメ刺す気ィ!?」 「今はやめといた方が無難だな」 土方は説明書もろともコンタクトを箱にしまい始める。 「もう一度、使い方を慎重に問い合わせてみらァ」 「…頼む」 すっかりうなだれた銀時は憐れを誘う。 そう見えても源外が入手した中和剤の情報がどこからもたらされたのか、銀時は十分に承知しているだろう。 土方は外した包帯をもう一度銀時の眼に巻き直すと銀時の手を引いて暗室を出る。 「先にコッチを済ませちまおうぜ。祝言当日、オメーが着る婚礼衣装だ」 暗室が置かれたと同じ座敷に、上等の着物が衣桁(いこう)に掛けられている。 「これっ…!?」 銀時の手に衣装の布地を触らせると、銀時は驚愕を浮かべた。
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* 高銀話です(連載中) 神楽は真新しい集合住宅の区画へ一人で踏み入れる。 同じようなドアのひとつを選んでノックした。 「新婚さん専用部屋、間違いないアル。……銀ちゃん、起きてるアルか? 世話焼きに来てやったヨ、早く開けないと勝手にドア開けるヨ」 「かっ…神楽ァ!?」 蹴り心地を確かめるように神楽がドアをコンコンしていると、銀時の慌てて戸惑った声が部屋の中から返ってきた。 「ちょ、待て!開けんな、今そのっ…、やべーからいろいろと!」 「なにアルか?」 神楽がキョトンと訊ね返す。 「銀ちゃんの裸なんかヤバくないアル。それともパンツもどっか行っちゃうほど激しい夜を過ごして腹くだしながら吐いてるアルか」 「俺がいつそんな夜の果てに吐きましたァ!?そんなんじゃねェ、いいから誰か…、ええとジミー君呼んでくんない!?ジミー君だけ部屋に入ってもらう感じで、他の奴にはナイショな感じで頼みてェから!」 「ジミー君? 誰アルカそれ」 「山崎だ、そう言やァ通じる」 ドアは閉まったまま、銀時の傍らから土方が答える。 「悪いな、チャイナ娘。山崎に、…氷で冷やしたタオル持ってこいって伝えてくれねぇか」 「わかったアル。銀ちゃん、熱出したアルか」 神楽は部屋の中の銀時を気にかける。 「急な退院だったから熱出るかもって、あのアイツが言ってたアル。銀ちゃんが風邪で寝込むのはいつものことネ。でも今回は『ネオ紅桜』の毒でどんな後遺症が出るか解らないって、場合によったら誰とも知らない男の子供を身ごもることになるかもって言ってたから、銀ちゃんもしかして妊娠したアルか。それでドア開けられないアルな」 「なんで俺が妊娠んん!?俺は男だっつーの、しかも誰か解らないヤツの子供って、どんだけアバズレなんだよ!」 「『ネオ紅桜』の目的は銀ちゃんを襲って身ごもらせることだったって聞いたネ。ただし『ネオ紅桜』は実体がないから、それを使ってるシャバイ野郎どもが精子提供者になるって言ってたアル」 「それホントか?」 銀時はぐっと息を呑む。 「ヤツの目的ってソレェェェ?!なんつーとんでもねェこと考えてんだァ!そんであの実力行使ィ?…冗談じゃねェ、許せるかァ!!」 「銀ちゃんの体内でカプセルみたいなのが破裂すると身ごもるんじゃないかって言ってたヨ」 「か、カプセルぅぅ?」 銀時は自分の身体を探る。 「ちょ、どこにあんのそんなの?!取ってぇ今すぐ取ってェ!切れるとこなら切り落としてえいりあんの侵略を食い止めるわ、刀貸してくんない、お願いします!!」 「オイ、それ多分…総悟の流言だぜ」 土方が言いにくそうに口を挟む。 「全身くまなくオメーは病院で検査済みだ。これといった異常は無かった。『岡田』がオメーの身体に何か仕掛けを残してるってのは総悟が勝手に想像してるだけの話でなんの根拠も無ぇ」 「でもよ、沖田君がそう思ったってことはなんか理由があんだろ、まるっきり根も葉もないってわけじゃ…」 「あぁ、化け物じみた暴行犯がオメーを狙った合理的な説明を総悟はずっと考えていた。あんときゃまだ岡田似蔵とオメーの因縁をこっちは掴んでなかったのでね」 「あ…なに? なにか情報があったわけじゃねーの?」 「被害者の状況からして恨みよりゃ狂信的な執着のセンが強かった。手口を見るとどうも念入りな生殖行為なんじゃねぇかって現場じゃもっぱらの見方でな」 「…やめてくんない? ヤツの種ぇ仕込まれるとか考えたくねーし! しかもあれ、…ぱっつぁんだったら、…ぱっつぁんだったら…!!」 んぎゃああぁ…と雄叫びがあがる。 「ていうかあの花粉症リーゼント野郎、生きてんの!?死んでてもいいけど、もっぺん死んでくんねーかな!?一個の細胞も蘇らないカンジで!ゼッタイ俺の前に現れない保証書つきで!」 「…盛り上がってるとこ悪いけどワタシもう行くヨ」 神楽が乾いた口調で告げる。 「銀ちゃんなら身ごもってもなんとかなるアル。せいぜい優秀なオトコの種を狩りとれヨ」 「失礼なこと言うんじゃねーよ!なんとかならないしィ!てか身ごもらねーしぃぃ!」 「銀ちゃんが着る婚礼衣装見たアルか?」 神楽は大きな瞳でジッと扉を見つめる。 「自分の目で確かめるといいアル。話はそれからネ」 「エッ…?」 銀時は返事を待って耳をすます。
聞こえたのは神楽が駆けていく仄かな足音だけだった。 |
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気がつけば3月も中旬ですね。
このごろ本誌原作から目が離せなくて困ります。 銀ちゃんてばあいかわらず愛らしいですよね。 一番くじ、引きました? 私、引けませんでした。 どこ行っても景品根こそぎカラッポ…! あらためて銀魂人気のすさまじさを思い知りました。 今週は小説更新はお休みします。 右下に拍手レスがあります。 |
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* 高銀話です(連載中)
銀時は歯がゆそうに返す。 「けどそいつの本質は変わらねーんだ。生き方とか。信条とか。アレだ、三つ子の魂百までってことわざがあんだろ。世間を渡ってくために見かけが小器用になっても根っこんとこは同じだって」 「まあな。おおむね、そんなとこだろうよ」 「だろ?」 「だがな、それとは別に身近な人間を失ったヤツってのは、変わるんだよ」 わずかに土方の手に力が籠もる。 「もうこの世のどこを探しても触ることもできねぇ。世の中にゃ、それ以上に取り返しのつかねぇことなんざ、そうは無ぇんだ」 手を置いたまま銀時の胸元を掴んでくる。 「それを思い知った野郎は今まで気に障ってた過半のこたぁ大した問題じゃねぇって気づくんだよ」 「……お前…、」 「てめーらだって戦争で仲間がたくさん先に逝ったろうが。戦場じゃ、どっかマヒしちまうから身が刔(えぐ)られるような喪失感てのはそうは無ぇ。そんなことより戦わねぇとテメーが死んじまうからな」 銀時は口を噤んでいる。 土方が語っているのは彼自身の経験なのだろう。 「けどよ、高杉がいつの時点でかその痛みをマトモに感じちまったとしたら。世をはかなみ、己の無力を呪い、気が狂いそうな憎悪の中で、これだけは喪失(うしな)いたくねぇって本当に大切なものを探り当てたとしたら、テメェの信条曲げてでもソイツを離さねぇようにするだろ?」 「…アイツの…大切なもの…、」 「お前だよ」 土方は不愉快そうに言う。 「なんで俺がこんな節介焼かなきゃならねぇんだ。とんだ道化だぜ」 「…違ぇ!」 とっさに胸元の土方の手を払いのける。 「アイツが大事なのは死んだ人間だ、生きてるヤツは眼中に無ぇんだ!死者の無念を晴らすために、信じた道を貫くために命を掛けねーのはアイツにとって裏切りなんだよっ」 「高杉が死者のために戦ってるってのか」 土方は払われた手を泳がせる。 「そりゃあ戦争中だけじゃなくて今も?」 「あぁそうだよ、てかどーでもいいしッ!」 「よかねぇだろ、こんだけのことやらかしてる原因はオメーと高杉と岡田の関係の縺れだ」 「オレ外してくんない!? あのクソヤローが高杉に惚れてんのをこじらせただけじゃねーか!」 「外せねぇよ。『岡田』は深夜二人組を狙って一人を昏倒させ、オメーに似た方を襲う。どう見ても横恋慕した野郎がオメーを高杉から奪いとろうとしてんだろうが」 「あぁもうさぁ、もういいわ、めんどくせーよッ! 磔(はりつけ)でも拷問でも何でもすればァ! いっそ俺が攘夷軍の先陣きって天人ぶちのめしてた白夜叉ですぅって名乗っちまおうかなぁ、白日のもとで白夜叉だけに!」 「おまっ…、な、なな、なに言ってんだコラぁぁぁ!」 「知ってんだろ!?知っててその単語だけはずして喋ってんだろ!?そういうの、核心突いてこねぇまどろっこしいセックスみてぇで痛ぇやらコッチから言い出せねぇやらでイライラすんだよっ!」 「それでも口にしちゃならねぇ事柄ってのは存在すんだよッ、黙って近藤さん率いる真選組の武骨な優しさ受け止めとけやァ!」 「そんなもん受け止めきれるかァ!てか、なんで近藤さん!?まどろっこしいセックスに例えたら近藤さんって、テメーはどうなの、テメーはそんなにセックスに自信あんの!?真選組の大将はそんなにセックスが焦れったいんですかぁぁ!?」 「知るかァ!なんでそういう話になんだよ!?オメーがアレだってことは極秘なんだよ、テメーでばらしてどうする、それ隠すために俺たちがどんだけ苦労してると思ってんだァ!!」 「テメーら人を無理やり結婚させようとしといて何が苦労だァ!」 ぺしっと土方のスカーフを叩(はた)く。 「こういうのはさぁ、隠すから窮屈になるんだよ、嘘を嘘で塗り固めて最後は崩落すんだよ、自分で言っちまえば罪人みてーにテメーらの結婚の檻に一生繋がれなくて済むんだろ!?」 「その代わり見廻り組の獄に繋がれんだよ!下手すりゃ首が離れちまうわァ!」 「俺ってそんな極悪人?!なんで死罪って決まってんの!?」 「攘夷のプロパガンダに使われる危険性が高ぇんだ、そんくらい解んだろが!」 「ぷろ、プロパ…なに?」 「プロパガンダ、政治的な意図をもって特定の思想や世論、行動へ誘いこんでく宣伝行為のことだ。この場合は攘夷思想への扇動だよ、オメーを看板にすりゃ人が集まる。オメーは幕府にとって都合の悪い連中への影響力がデケぇ、そういうことだ」 「んなわけねーだろ、これだから関係者以外の当時を知らねぇ外野は困んだよ」 腹の底から溜息をつく。 「俺なんか『部活の対抗戦でちょっと目立ってた』くらいのレベルだかんね。全国水準じゃ、もっと有名なバケモンみてーな先輩ゴロゴロいたかんね。俺が戦(や)ってたのは戦(いくさ)も終盤、名を上げようにも戦況悪くてそもそも噂話広めてくれる生き残りがいねぇし。軍の大半の連中には面識無ぇよ。敗戦迎えちまったから語りつぐ後輩も居ねェから。『誰それ、知らない』って言われんのがオチだから恥ずかしいから良い加減にしといてくんない!?核心突いても誰もヨガりゃしねーんだよ!」 「安心しろ、そんなこたぁねぇ。俺が調べた限りオメーは名にし負う評判の英雄だ」 「やめて。恥かくの俺だから。ホントやめて」 「とにかく、オメーは一生俺の…、コホン、真選組のモンだ。オメーを真選組の鎖から解き放とうとやってくる連中を片っ端からしょっぴいてやらァ。屯所に居ながらにして浪士どもを大量検挙してやるぜ」 「なに壮大な夢見てんだァ! そんなん一人も来ねーよ!」 「まずは祝言だな。お偉いさんを揃えて真選組隊士がオメーを娶る、そんな席を設けりゃ総悟じゃねぇがオメーを略奪された怒りに燃えた連中がこぞって襲撃してくるだろうよ」 黒い包帯を巻いた銀時のこめかみを指先で触れる。 「俺たちの婚儀は盛大な罠でもあるんだ。狙いは『岡田』、岡田似蔵の執念に操られてオメーを求めて彷徨う辻斬り犯どもを一網打尽だ」 「だっ…!テメーらの罠はピンポイントで新八しかおびき寄せねェェ!」 「『岡田』は複数いたんだな。道理で捜査の狙いが定まらねぇはずだ。ここにいたと思ったら、とんでもないところで目撃証言が出やがる。電脳幹を解除すりゃ姿が変わるから逃走も潜伏も難しくねぇ。今度こそ逃がさねぇ、連続辻斬り事件、真選組が全面解決してやらァ!」 「あのー、聞いてる? 俺は言ったかんね、オメーらの望みの客は集まらねーって。そいつら来なくても俺のせいじゃないからね?」 「狙いは『岡田』だけじゃねぇ。瑣末な攘夷かぶれの浪人どもと、できりゃ『ネオ紅桜』を資金源にする攘夷組織、それから…」 「夢ふくらませてんじゃねーよ、ズボンの股間みてーによォ」 「最上の獲物は高杉晋助だぜ」 「……!」 名を聞いて一瞬固くなった銀時の身体を床柱から引き戻して布団に組み敷く。 「なんと言っても高杉は来る。俺を殺しに…、お前を奪いにな」 「んがっ、ぁ…っ…!」 単衣を剥がれ、むきだしになった胸に吸いつかれながら布団に押さえこまれる。 「や、ちょっ…、!」 「ぼちぼち観念しろや。婚儀は目前だ」 塞がりきらぬ刃物の傷を柔らかく噛んで唇でなぞる。 「口でなんと言おうとオメーが高杉を恋しがってんのは解ってる。けどあの野郎にゃ渡さねぇよ」 色の薄い乳首を下唇で楽しげに弾く。 「オメーに平穏な時間を、物騒な連中とは無縁の暮らしを享受させてやれんのは俺たち真選組だ。目が治らなくても手足が動かなくても構わねぇ」 もう片方の胸にも指が這う。 膝を割られ、股間に手が差し入れられてくる。 「ふッ…、んっ、ゃめ、…う、…っあぁ、」 見えないまま銀時は自分の上に重みをかけてくる土方の肩に掴まって息をあげていく。 『ちょうどいい潮時じゃねーか。これを機に雲隠れしちまったらどうだ? 目が見えなくても生きていけるぜ』 頭の中に浮かんでくるのは源外の言葉。 『攘夷戦争は遠くなったんだ。過去を引き摺ってるより、好いたヤツとその仲間に囲まれて安穏と暮らしてもバチは当たらねーよ』 「ァ、やッ…んぁあ! だッ、…ぁぁうッ…、」 「入籍したら遠慮しねぇ。毎日俺と、こんなだぜ?」 「な、なに…、どこ…触ってんだっ、…は、離しやがっ、ぁあっ…!」 「オメーなら手負いだろうが目が効かなかろうが、俺を拒むくれーのことはできんだろ?」 銀髪を掻きあげ、顔をよく見えるように自分へ向かせてから唇を唇に寄せる。 「よく考えろ。俺を選ぶか、高杉を選ぶか」 唇が力強い熱に覆われる。 「高杉を選ぶなら押しのけろや。けど俺とここで暮らすなら、このまま…」 「んっ……、は…、っ…、」 口にぬめる柔らかいものを受け入れながら下腹部をまさぐられる。 ようやく銀時は気がつく。 自分の恋心を向けるべき相手を明確にする時なのだと。 「どうする?」 囁きながら愛撫してくる。 身体はとっくにヒクついている。 誰を求めれば安楽か、身体は答えを知っている。 「んっ、は…ぁ、」 答えようにも口の中は熱い滾りに喉まで蹂躙されている。 手は、土方の隊服を掴んでいる。 裾を割って立てた足には土方の手が這っている。 ときおりひどく優しく手が髪を梳いてくる。 啼きながら身を震わせ、銀時は包帯の下で目を伏せていった。
拍手ありがとうございます!
来週は更新をお休みさせていただきます。 |
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* 高銀話です(連載中)
「…バカじゃねーよ! これでもなぁ、いろいろ計算して生きてますぅ」 「テメーの命や体面、場合によっちゃ柵(しがらみ)さえもかなぐり捨てる野郎のどこが利口なんだ?」 「んな、大仰なもんじゃねー…」 「夜叉だろうが修羅に堕ちようがそんなことは厭(いと)わねぇ。ただオメーは自分の護りたいもん護るために刀振るったんだろ?俺たちゃなァ、その戦いぶりが簡単に目に浮かぶんだよ。今更イチャモンつけるような真似されちゃ真選組も黙ってらんねぇ」 土方の手が銀時の後ろ髪を掴む。 「俺たちの仕事は善良な市民を護ることだからな」 「あのよ、えーと…」 銀時は土方の腕をぱんぱん叩く。 「だからって政略結婚はやりすぎだろ? オメーら、そのへんなんも話さねーからワケ解んねーし」 「お前だって何にも明かさねぇだろが」 鼻で笑う。 「答えは全部テメーの中にあるじゃねぇか。『岡田』の蛮行や高杉の行動。テメー、桂と高杉の武力抗争で岡田とは並ならぬ悶着があったってな。橋田屋での捨て子騒ぎのときから岡田はオメーとの勝負に拘ってたそうだが。以前から岡田はオメーに執着してた、違うか?」 「なっ、なんでそんなこと…?」 「チャイナに聞いた」 あっさり土方は明かした。 「昔なじみの桂を殺されたと思ったオメーらが巻き込まれてったくだりもな。高杉が開発してたのは『紅桜』と呼ばれるたいそうなカラクリ仕掛けの刀で、そいつを爆破したのが桂なんだろ?」 「…ん、ぅぐ…、まあ…、そんなこともあった…かもしれませんねェ、」 「さらに高杉は天人とツナギをつけたらしいが、その相手ってのが銀河系最大の犯罪シンジケート『春雨』らしいな」 「え、そんなこともバレて…あ、いや、」 「チャイナによれば岡田はオメーに異様に執着してて、それこそ立ち会いの最中も性的な情熱を注いでたってなァ」 「くぁ~、あの娘ェ!ペラペラペラペラあることないこと何喋ってくれてんだァ!」 「宿主の情報を徹底的に集積した電魄『紅桜』をもとに作られたのが『ネオ紅桜』なら。岡田似蔵の情念を受け継いでオメーを付け狙い、その宿主を操って辻斬りよろしく暴行事件を起こしたってのも説明のつかない話じゃねぇ」 「ちょ、それはねーって!」 銀時は即座に否定する。 「岡田が惚れてんのは高杉なんだよ。野郎は高杉に認められ、重用されて高杉の一番大事な人間になろうとしてんだ。それにゃ俺を血祭りにあげるのがいいと思ったんだか、俺を目の敵にしてんだ」 「血祭りなら仕留めりゃ済む。奴はオメーを欲しがったろうが」 土方が見解を突きつける。 「オメーの名を呼んで探しながら似た野郎を見つけちゃ蹂躙する。けど全員、命は助かってる。ときどき催淫剤使われるケースがあったが、オメーみてぇに神経毒や筋融解剤使われることは無ぇ。悪ィが『岡田』にゃ坂田銀時への害意はあっても殺意は感じられねぇんだよ」 「てっ…、テメーは知らねーからっ!」 銀時は瞬間的な怒りに駆られる。 「野郎はなぁ、コトが終わったら俺を殺すつもりだったんだよ…っ! 生かしとく気ならこんな無茶しねーだろ。体中、毒まわってたし、目ェ潰れちまったし、…あの最中だってなぁ、なんかい死ぬって思ったか分からねぇ……って、オイ」 ピクリと妙な気配を滲ませた土方に逆上する。 「その『死ぬ』じゃねぇぇえええ! あんな野郎の触手マッサージに感じるわきゃねーだろォォォ!」 「……なにも言ってねぇよ」 「いや言った!心の中で!お前なぁ、俺がどんだけ悲惨な目に遭ったか解ってる? 憎らしい恋敵をいたぶって殺すために奴ぁ人体の急所を責め続けたんだよ?」 「そりゃ…その通りだろうがよ、」 「許せねぇのはなぁ、獲物にまったく反撃させねぇ卑劣な根性だよ、動けねぇまま嬲り殺しなんて、よくもそこまで人を貶められると思わねぇ?」 「オメー、よっぽど怖かったんだな」 「クスリで動くこともできねぇなんてサムライの死にざまとしちゃお寒い限りだ、奴が辻斬り騒ぎ起こして俺を探したのは手も足も出ずに死んでく屈辱を味わわせるためだよ、あそこで高杉が来なかったら思うつぼだっ…たっ……、んあ…っ!」 「高杉が、どこで来たって?」 「い……いやウソウソ、誰も来てねーよ、」 「隠すこたぁ無ぇだろ?」 後ろへ身を引こうとする銀時を土方が抱きとめる。 「高杉は自分が創り出した『紅桜』の劣化コピーを回収しに動いてんじゃねぇのか。武市が『犯人の身柄は譲る、だが犯人の一部を渡せ』つってたのは犯人が装着していた電脳幹をよこせってことだろうよ。案外、『ネオ紅桜』がオメーを狙って不埒な辻斬り事件を起こすから、高杉は陰ながら護ろうとしてたのかもな」 「……」 「岡田似蔵は死んだのか?」 「…知らねえ」 「高杉は、岡田の生死を掴んでるのか?」 「…どうだかな」 「本物の岡田似蔵が『ネオ紅桜』を携えてお前を襲ったら手に負えねぇ、高杉はそう考えてんじゃねぇのか」 「あのなあ、」 銀時は土方の胸に手を突っ張って距離を開ける。 「ものすごく勘違いしてるみてーだから言うけど、高杉は俺のことなんか何とも思ってねーから。昔っから妥協することも都合聞くこともねェ、はっきり言ってカラダの関係だけだったから」 「アホか。今どきそんなの小学生でも信じねぇ」 「なんで頭っから否定!? お前だって聞いてただろ、人のことボンクラだの死ねだの腑抜けだの、さんざんな言われようだったろーがっ」 「聞いてねぇ」 「エ?」 「少なくても俺のいる前じゃそんな話してねぇよ」 「居たっつーの。バッタリ高杉に遭ったとき言ってたろうが。絶対お前も聞いてた!」 「あぁ、ボンクラってのは昔のことほじくり返すなって釘差してたときな。…ったく、テメーはヤツの言う通りのボンクラだぜ」 あきあきした声で銀時に言う。 「テメーの耳にゃアレが悪態に聞こえたんだろうが、俺にゃそうは聞こえなかった。オメーへの愛着すさまじいだけだろうが。俺への殺気は半端なかったけどな」 「オメーに殺気?高杉が?」 銀時は少し考える。 「そうだっけ?全然気がつかなかった」 「お前と婚礼を挙げようってんだ、俺にはハラワタ煮えくり返ってんだろ」 「そんなことねーよ、俺が誰とどうなろうとアイツどうでもいいんだから」 「どうでもいいなら信州の山ん中までお前を助けに行くか?わざわざ真選組にツラ晒してまで町中で会いにくるかよ。ご丁寧に病院潜入まで果たしてくれやがって、警察のGPS電波まであらかじめ乗っ取っとく用意周到さだ」 銀時の頬をぎゅっとつまむ。 「てめーこそ高杉のあのツラ見てねぇから、んなこと言いやがんだ。ヤツが山荘から逃げてくヘリの中でどんな顔してたと思う? 勝ち誇ったような見下した、いかにも出し抜いてお前を手に入れたっつう、当てこすり満面の笑いをヘラヘラ浮かべてやがったぜ」 「ヘリん中のヤツ、よくそこまで見たな」 頬を変形させたまま銀時が可笑しそうに言う。 「アイツ昔っから高いとこ好きなんだよ、ヘリ乗んの嬉しくてたまんないんじゃね?」 「そんなら俺見てニヤつく理由はねぇだろ」 「ムカついてるとこ悪ぃんだけど、高杉が山ん中に居たのは『ネオ紅桜』を回収しに行ったからだよ。あんとき川辺で会ったのも自分の命令外で動いてた手下を無駄死にさせないためだろ?」 「ヤツは『岡田』をどうしたんだ?『ネオ紅桜』の電脳幹を持ち去ったのか?」 「知らねえって、見えなかったし。俺こそ聞きてーくらいだよ。あの『岡田』っぽいヤツ、どうなったの?」 「行方知れずだ。捜索はしたがな、あの付近にゃいなかった」 土方は遠慮がちに付け加える。 「オメーんとこの眼鏡が高杉のヘリに同乗してたのは見たんだが」 「……やっぱ、あのヘタクソなマッサージ、ぱっつぁんかよ。…涙出るわ、いろいろと」 「高杉はオメーを弄り回してた野郎を、たとえそれがガキでも懐に入れちまうような奴なのか?」 「だから先刻から言ってんだろ。高杉は俺を一線から退いた落ちぶれもんだと思ってる。歯牙にもかけてねーよ。アイツが動いてるのは『ネオ紅桜』が出回ってるのが許せねーだけだって」 「俺にはオメーとの体位にまで注文つけてったぜ」 銀時の胸に手を当てる。 「オメー、手負いか? 腹の上に乗っけろってのは自分たち過去の攘夷軍が崇めた武神を組み敷くなってことかと思ったが…あの抗争で怪我してんのか?」 「ちょ、セクハラだろ、」 「高杉はお前の傷に障んねぇように、じりじりしながら精一杯の配慮で俺に頼んだんじゃねぇのか」 「あのなぁ、オメー根本的に間違ってるぜ」 銀時は単衣の上から胸を撫でる手を掴んで動きを阻む。 「高杉は配慮なんかすることは絶対に無ぇ。ちょっかい出したり、邪魔だっつって殺そうとしたり、気まぐれに性欲の捌け口にしたりするけど、俺のために動いたり、都合考えたり、とりわけ俺を助けに来ることなんてありえねーから」 「じゃあなんのために病院に現れたんだ?」 手を掴まれたまま銀時の胸元に手を置いている。 「オメーへの用事以外、考えられねぇだろ」 「本当に来たのかよ」 腹立たしそうに問う。 「俺、全然知らねーんだけど」 「お前の部屋に見せかけた別の部屋に入ってった」 「じゃあ、そっちに用事あったんじゃね?」 「ッあるわけねぇだろが」 「とにかく。高杉は昔っから俺のことはどうでもいいの。本当ーっに、死んだって構わねーって勢いで、人をいたわるとか、ねぎらうとか、俺以外にはやってたけど俺にはこれっぽっちもねーから。集中砲火ん中でも人を捨ててっちまうし、扱いは乱暴だし、勝手に生きてろ、そんで自分が気が向いたらサッサとヤらせろ、それ以上でも以下でもねェ」 「そりゃ…戦争の頃の話か」 「そうだよ。今だって変わってねェよ」 「万事屋…、俺が高杉に塩なんざ送りたかねぇが」 正面から土方は銀時に告げた。 「人間(ひと)は変わるもんなんだぜ」
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* 高銀話です(連載中)
土方は銀時の笑う顔を呆れたように見つめる。 「そんなに俺が疎ましいのか。抱かれんのが嫌なら搦め手の嫌がらせはいらねぇ、ハッキリそう言え」 「嫌じゃねーよ」 銀時が口を尖らす。 「フンギリが付かねぇだけだ」 「高杉に操を立ててんのか」 座った銀時を、ほぼ抱き締めたまま土方が尋ねる。 「お前の心は高杉のもんだ。身体もそうしてぇんだろ?」 「………なに言ってんの?」 銀時は平坦に土方の顔のあたりを見上げる。 「アイツはなんの関係もねーよ。考えてもみろ、オメーだって道でときどき遭うだけの野郎とケッコンしろっていわれたら、そう簡単に身体の関係が持てるかよ」 「なァ万事屋。ネタは割れてんだ。そろそろ白状しようや」 土方は穏やかに、むしろ力無く銀時の頬を親指でなぞる。 「お前は隈無(くなまく)宛ての電話が俺じゃなく高杉からのもんだって解ってたんだろ?お前は病室に高杉が来ることを知っていた。そしてそれを誰にも言わず待っていた。反論はいい、俺ァ確信してる」 身じろいで口を開こうとした銀時を押しとどめて強く抱く。 「高杉はお前の目を治そうとしてたんじゃねぇのか。だから一人で来た。お前を連れて逃げる厄介な逃走経路を確保していたフシは無ぇ。平賀源外の推測どおり高杉はお前の目を治す方法を知っている、お前もそれを承知の上で隈無に黙ってた」 「だっ、そんなん…!」 「根拠はなァ、お前が隈無に電話を代わるとき、そいつが隈無であるかどうか確認しながら代わってたことだよ。普段、隊士の名前なんかどうでもいいお前が、高杉が『隈無は居るか?』って聞いたから隈無以外の野郎だったらまずいと思って確かめたんだ。通話の記録は残ってるんでな、お前らの会話は聞かせてもらったよ。ずいぶん殊勝な声、出すじゃねぇか」 「んぐ、だからそりゃアレだ、お前だと思ったから、えええ演技だろうが!隊士の前じゃアツアツにしとけって…!」 「『岡田』に連れてかれた山荘で、オメーを弄りまわしてた『岡田』を退けたのも高杉だな?」 土方の声は凪いでいる。 「お前は『岡田』は役に立たなかったと言ってた。『岡田』を撃退してお前と思いを遂げたのが高杉だ。身体に残ってた痕跡は高杉のもんだ。違うか?」 「うぅ、だ…だからあんとき、クスリとかいろいろ使われたし、なんにも見えなくて記憶がモーローで、ってか、そのぅ…」 「隠す必要は無ぇよ。攘夷戦争行ったとき、お前らが恋仲だったってのは有名な話らしいな。お前の過去なんざ調べたくもねぇが攘夷浪士を調査してりゃどっからでも目耳に入ってくる事柄だ。その二人がよ、夜中に密会してるとなりゃ、真選組じゃなくても放っておけない事態だと思わねぇか?」 「……え?」 「毎夜、犬つれたお前が高杉と逢ってんのは警察内じゃちょっとした関心事だったんだよ」 「ぁ~…、」 「攘夷戦争の英雄と過激派攘夷集団の頭目が並び立てば、どんな厄介な騒乱が巻き起こって各地にくすぶる浪士どもを奮い立たせねぇとも限らねぇ」 「…んなバカなこたねーって」 「お前を押さえるべきだって動き出そうとする野郎が…新設の警察組織の局長だけどよ、近藤さんがいくらお前は無害な一般市民だっつってこれまでの真選組への助力を挙げても聞く耳もたねぇ。このままじゃオメーを見廻り組に持ってかれちまう、そう判断して俺たちゃお前の囲い込みに踏み切ったんだ」 「つまり…助けてくれたってワケ?」 銀時は自分を抱く土方の腕に手を置く。 「婚姻話も、辻斬り話も、キツネうどんにのった油揚げみたいなもんで、本当のおめーらの狙いは…」 「『あんな野郎にオメーを捕られてたまるか』」
銀時を胸に抱きしめたまま土方はクスっと笑った。 |
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更新おそくて申し訳ありません。
銀魂なしの毎日なんてありえないくらい日常に溶け込んでいるんですが、小説を書くとなると脳の別の部分を起動しなければならず、ままならないものです。 こんな体たらくだというのに、御来訪、拍手、そして拍手コメントをいただきまして感謝です!御礼申し上げます!! お返事だけはさせていただきます!! 右下に拍手レスあります。 |
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本日の更新
* ここ(妄言) 「しんめって人気なの?」と言った。 「しんめじゃないよ、のぶめだよ。ああいう無表情な女の子は一部の男の子に人気あるよ」 「そうか、綾波レイの頃からそういう無表情キャラは人気だったね」 「綾波レイじゃないよ、オマモリサマの頃からだよ。ああいう無表情な女の子に弱いんだ、とかいう投稿見たことあるから、ああ男の子は感情を出さない子に萌えることもあるんだなって思った」 「オマモリサマの頃からって…!アンタそれブログに書いときなよ」 留萌さんに言われたらから書きました。 でも、なにがツボなんでしょうか? わからぬ。 |
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当ブログ小説43話の続きって登場人物二人で場面も単純でヤオイ書きにはシンプルこの上ないシーンのはずなのに、なかなか書けません。
きっと高杉への(私の)思いが強すぎるのねっ! というわけではありませんが、予定外のことがいろいろ入ってきて更新できませんでした。 今週(2月4日)も更新をお休みします、申し訳ありません。 またお気が向かれたときにでも、覗いてくださると嬉しいです。 1月30日のジャンプ読んで留萌さんがいろいろ語ってました。 ネタバレになるからここには書きませんが、まとめると「銀ちゃん可愛いねっ」でしたね。 私(余市)も同感でした。 留萌さんは医者通いしてて、余市は風邪っぽくて、その他にもいろいろ出来事があって、どうにも建設的な作業ができないでいます。毎年1月は体調が超低空飛行で生きているので精一杯なので、そのうち持ちなおすと思います。 …あれ、もう2月だ。 右下に拍手レスあります(よんたさん、あのさん、ピンクさん宛て) |
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