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* 高銀話です(連載中) 神楽は真新しい集合住宅の区画へ一人で踏み入れる。 同じようなドアのひとつを選んでノックした。 「新婚さん専用部屋、間違いないアル。……銀ちゃん、起きてるアルか? 世話焼きに来てやったヨ、早く開けないと勝手にドア開けるヨ」 「かっ…神楽ァ!?」 蹴り心地を確かめるように神楽がドアをコンコンしていると、銀時の慌てて戸惑った声が部屋の中から返ってきた。 「ちょ、待て!開けんな、今そのっ…、やべーからいろいろと!」 「なにアルか?」 神楽がキョトンと訊ね返す。 「銀ちゃんの裸なんかヤバくないアル。それともパンツもどっか行っちゃうほど激しい夜を過ごして腹くだしながら吐いてるアルか」 「俺がいつそんな夜の果てに吐きましたァ!?そんなんじゃねェ、いいから誰か…、ええとジミー君呼んでくんない!?ジミー君だけ部屋に入ってもらう感じで、他の奴にはナイショな感じで頼みてェから!」 「ジミー君? 誰アルカそれ」 「山崎だ、そう言やァ通じる」 ドアは閉まったまま、銀時の傍らから土方が答える。 「悪いな、チャイナ娘。山崎に、…氷で冷やしたタオル持ってこいって伝えてくれねぇか」 「わかったアル。銀ちゃん、熱出したアルか」 神楽は部屋の中の銀時を気にかける。 「急な退院だったから熱出るかもって、あのアイツが言ってたアル。銀ちゃんが風邪で寝込むのはいつものことネ。でも今回は『ネオ紅桜』の毒でどんな後遺症が出るか解らないって、場合によったら誰とも知らない男の子供を身ごもることになるかもって言ってたから、銀ちゃんもしかして妊娠したアルか。それでドア開けられないアルな」 「なんで俺が妊娠んん!?俺は男だっつーの、しかも誰か解らないヤツの子供って、どんだけアバズレなんだよ!」 「『ネオ紅桜』の目的は銀ちゃんを襲って身ごもらせることだったって聞いたネ。ただし『ネオ紅桜』は実体がないから、それを使ってるシャバイ野郎どもが精子提供者になるって言ってたアル」 「それホントか?」 銀時はぐっと息を呑む。 「ヤツの目的ってソレェェェ?!なんつーとんでもねェこと考えてんだァ!そんであの実力行使ィ?…冗談じゃねェ、許せるかァ!!」 「銀ちゃんの体内でカプセルみたいなのが破裂すると身ごもるんじゃないかって言ってたヨ」 「か、カプセルぅぅ?」 銀時は自分の身体を探る。 「ちょ、どこにあんのそんなの?!取ってぇ今すぐ取ってェ!切れるとこなら切り落としてえいりあんの侵略を食い止めるわ、刀貸してくんない、お願いします!!」 「オイ、それ多分…総悟の流言だぜ」 土方が言いにくそうに口を挟む。 「全身くまなくオメーは病院で検査済みだ。これといった異常は無かった。『岡田』がオメーの身体に何か仕掛けを残してるってのは総悟が勝手に想像してるだけの話でなんの根拠も無ぇ」 「でもよ、沖田君がそう思ったってことはなんか理由があんだろ、まるっきり根も葉もないってわけじゃ…」 「あぁ、化け物じみた暴行犯がオメーを狙った合理的な説明を総悟はずっと考えていた。あんときゃまだ岡田似蔵とオメーの因縁をこっちは掴んでなかったのでね」 「あ…なに? なにか情報があったわけじゃねーの?」 「被害者の状況からして恨みよりゃ狂信的な執着のセンが強かった。手口を見るとどうも念入りな生殖行為なんじゃねぇかって現場じゃもっぱらの見方でな」 「…やめてくんない? ヤツの種ぇ仕込まれるとか考えたくねーし! しかもあれ、…ぱっつぁんだったら、…ぱっつぁんだったら…!!」 んぎゃああぁ…と雄叫びがあがる。 「ていうかあの花粉症リーゼント野郎、生きてんの!?死んでてもいいけど、もっぺん死んでくんねーかな!?一個の細胞も蘇らないカンジで!ゼッタイ俺の前に現れない保証書つきで!」 「…盛り上がってるとこ悪いけどワタシもう行くヨ」 神楽が乾いた口調で告げる。 「銀ちゃんなら身ごもってもなんとかなるアル。せいぜい優秀なオトコの種を狩りとれヨ」 「失礼なこと言うんじゃねーよ!なんとかならないしィ!てか身ごもらねーしぃぃ!」 「銀ちゃんが着る婚礼衣装見たアルか?」 神楽は大きな瞳でジッと扉を見つめる。 「自分の目で確かめるといいアル。話はそれからネ」 「エッ…?」 銀時は返事を待って耳をすます。
聞こえたのは神楽が駆けていく仄かな足音だけだった。 PR |
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