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* 高銀話です(連載中)
「…バカじゃねーよ! これでもなぁ、いろいろ計算して生きてますぅ」 「テメーの命や体面、場合によっちゃ柵(しがらみ)さえもかなぐり捨てる野郎のどこが利口なんだ?」 「んな、大仰なもんじゃねー…」 「夜叉だろうが修羅に堕ちようがそんなことは厭(いと)わねぇ。ただオメーは自分の護りたいもん護るために刀振るったんだろ?俺たちゃなァ、その戦いぶりが簡単に目に浮かぶんだよ。今更イチャモンつけるような真似されちゃ真選組も黙ってらんねぇ」 土方の手が銀時の後ろ髪を掴む。 「俺たちの仕事は善良な市民を護ることだからな」 「あのよ、えーと…」 銀時は土方の腕をぱんぱん叩く。 「だからって政略結婚はやりすぎだろ? オメーら、そのへんなんも話さねーからワケ解んねーし」 「お前だって何にも明かさねぇだろが」 鼻で笑う。 「答えは全部テメーの中にあるじゃねぇか。『岡田』の蛮行や高杉の行動。テメー、桂と高杉の武力抗争で岡田とは並ならぬ悶着があったってな。橋田屋での捨て子騒ぎのときから岡田はオメーとの勝負に拘ってたそうだが。以前から岡田はオメーに執着してた、違うか?」 「なっ、なんでそんなこと…?」 「チャイナに聞いた」 あっさり土方は明かした。 「昔なじみの桂を殺されたと思ったオメーらが巻き込まれてったくだりもな。高杉が開発してたのは『紅桜』と呼ばれるたいそうなカラクリ仕掛けの刀で、そいつを爆破したのが桂なんだろ?」 「…ん、ぅぐ…、まあ…、そんなこともあった…かもしれませんねェ、」 「さらに高杉は天人とツナギをつけたらしいが、その相手ってのが銀河系最大の犯罪シンジケート『春雨』らしいな」 「え、そんなこともバレて…あ、いや、」 「チャイナによれば岡田はオメーに異様に執着してて、それこそ立ち会いの最中も性的な情熱を注いでたってなァ」 「くぁ~、あの娘ェ!ペラペラペラペラあることないこと何喋ってくれてんだァ!」 「宿主の情報を徹底的に集積した電魄『紅桜』をもとに作られたのが『ネオ紅桜』なら。岡田似蔵の情念を受け継いでオメーを付け狙い、その宿主を操って辻斬りよろしく暴行事件を起こしたってのも説明のつかない話じゃねぇ」 「ちょ、それはねーって!」 銀時は即座に否定する。 「岡田が惚れてんのは高杉なんだよ。野郎は高杉に認められ、重用されて高杉の一番大事な人間になろうとしてんだ。それにゃ俺を血祭りにあげるのがいいと思ったんだか、俺を目の敵にしてんだ」 「血祭りなら仕留めりゃ済む。奴はオメーを欲しがったろうが」 土方が見解を突きつける。 「オメーの名を呼んで探しながら似た野郎を見つけちゃ蹂躙する。けど全員、命は助かってる。ときどき催淫剤使われるケースがあったが、オメーみてぇに神経毒や筋融解剤使われることは無ぇ。悪ィが『岡田』にゃ坂田銀時への害意はあっても殺意は感じられねぇんだよ」 「てっ…、テメーは知らねーからっ!」 銀時は瞬間的な怒りに駆られる。 「野郎はなぁ、コトが終わったら俺を殺すつもりだったんだよ…っ! 生かしとく気ならこんな無茶しねーだろ。体中、毒まわってたし、目ェ潰れちまったし、…あの最中だってなぁ、なんかい死ぬって思ったか分からねぇ……って、オイ」 ピクリと妙な気配を滲ませた土方に逆上する。 「その『死ぬ』じゃねぇぇえええ! あんな野郎の触手マッサージに感じるわきゃねーだろォォォ!」 「……なにも言ってねぇよ」 「いや言った!心の中で!お前なぁ、俺がどんだけ悲惨な目に遭ったか解ってる? 憎らしい恋敵をいたぶって殺すために奴ぁ人体の急所を責め続けたんだよ?」 「そりゃ…その通りだろうがよ、」 「許せねぇのはなぁ、獲物にまったく反撃させねぇ卑劣な根性だよ、動けねぇまま嬲り殺しなんて、よくもそこまで人を貶められると思わねぇ?」 「オメー、よっぽど怖かったんだな」 「クスリで動くこともできねぇなんてサムライの死にざまとしちゃお寒い限りだ、奴が辻斬り騒ぎ起こして俺を探したのは手も足も出ずに死んでく屈辱を味わわせるためだよ、あそこで高杉が来なかったら思うつぼだっ…たっ……、んあ…っ!」 「高杉が、どこで来たって?」 「い……いやウソウソ、誰も来てねーよ、」 「隠すこたぁ無ぇだろ?」 後ろへ身を引こうとする銀時を土方が抱きとめる。 「高杉は自分が創り出した『紅桜』の劣化コピーを回収しに動いてんじゃねぇのか。武市が『犯人の身柄は譲る、だが犯人の一部を渡せ』つってたのは犯人が装着していた電脳幹をよこせってことだろうよ。案外、『ネオ紅桜』がオメーを狙って不埒な辻斬り事件を起こすから、高杉は陰ながら護ろうとしてたのかもな」 「……」 「岡田似蔵は死んだのか?」 「…知らねえ」 「高杉は、岡田の生死を掴んでるのか?」 「…どうだかな」 「本物の岡田似蔵が『ネオ紅桜』を携えてお前を襲ったら手に負えねぇ、高杉はそう考えてんじゃねぇのか」 「あのなあ、」 銀時は土方の胸に手を突っ張って距離を開ける。 「ものすごく勘違いしてるみてーだから言うけど、高杉は俺のことなんか何とも思ってねーから。昔っから妥協することも都合聞くこともねェ、はっきり言ってカラダの関係だけだったから」 「アホか。今どきそんなの小学生でも信じねぇ」 「なんで頭っから否定!? お前だって聞いてただろ、人のことボンクラだの死ねだの腑抜けだの、さんざんな言われようだったろーがっ」 「聞いてねぇ」 「エ?」 「少なくても俺のいる前じゃそんな話してねぇよ」 「居たっつーの。バッタリ高杉に遭ったとき言ってたろうが。絶対お前も聞いてた!」 「あぁ、ボンクラってのは昔のことほじくり返すなって釘差してたときな。…ったく、テメーはヤツの言う通りのボンクラだぜ」 あきあきした声で銀時に言う。 「テメーの耳にゃアレが悪態に聞こえたんだろうが、俺にゃそうは聞こえなかった。オメーへの愛着すさまじいだけだろうが。俺への殺気は半端なかったけどな」 「オメーに殺気?高杉が?」 銀時は少し考える。 「そうだっけ?全然気がつかなかった」 「お前と婚礼を挙げようってんだ、俺にはハラワタ煮えくり返ってんだろ」 「そんなことねーよ、俺が誰とどうなろうとアイツどうでもいいんだから」 「どうでもいいなら信州の山ん中までお前を助けに行くか?わざわざ真選組にツラ晒してまで町中で会いにくるかよ。ご丁寧に病院潜入まで果たしてくれやがって、警察のGPS電波まであらかじめ乗っ取っとく用意周到さだ」 銀時の頬をぎゅっとつまむ。 「てめーこそ高杉のあのツラ見てねぇから、んなこと言いやがんだ。ヤツが山荘から逃げてくヘリの中でどんな顔してたと思う? 勝ち誇ったような見下した、いかにも出し抜いてお前を手に入れたっつう、当てこすり満面の笑いをヘラヘラ浮かべてやがったぜ」 「ヘリん中のヤツ、よくそこまで見たな」 頬を変形させたまま銀時が可笑しそうに言う。 「アイツ昔っから高いとこ好きなんだよ、ヘリ乗んの嬉しくてたまんないんじゃね?」 「そんなら俺見てニヤつく理由はねぇだろ」 「ムカついてるとこ悪ぃんだけど、高杉が山ん中に居たのは『ネオ紅桜』を回収しに行ったからだよ。あんとき川辺で会ったのも自分の命令外で動いてた手下を無駄死にさせないためだろ?」 「ヤツは『岡田』をどうしたんだ?『ネオ紅桜』の電脳幹を持ち去ったのか?」 「知らねえって、見えなかったし。俺こそ聞きてーくらいだよ。あの『岡田』っぽいヤツ、どうなったの?」 「行方知れずだ。捜索はしたがな、あの付近にゃいなかった」 土方は遠慮がちに付け加える。 「オメーんとこの眼鏡が高杉のヘリに同乗してたのは見たんだが」 「……やっぱ、あのヘタクソなマッサージ、ぱっつぁんかよ。…涙出るわ、いろいろと」 「高杉はオメーを弄り回してた野郎を、たとえそれがガキでも懐に入れちまうような奴なのか?」 「だから先刻から言ってんだろ。高杉は俺を一線から退いた落ちぶれもんだと思ってる。歯牙にもかけてねーよ。アイツが動いてるのは『ネオ紅桜』が出回ってるのが許せねーだけだって」 「俺にはオメーとの体位にまで注文つけてったぜ」 銀時の胸に手を当てる。 「オメー、手負いか? 腹の上に乗っけろってのは自分たち過去の攘夷軍が崇めた武神を組み敷くなってことかと思ったが…あの抗争で怪我してんのか?」 「ちょ、セクハラだろ、」 「高杉はお前の傷に障んねぇように、じりじりしながら精一杯の配慮で俺に頼んだんじゃねぇのか」 「あのなぁ、オメー根本的に間違ってるぜ」 銀時は単衣の上から胸を撫でる手を掴んで動きを阻む。 「高杉は配慮なんかすることは絶対に無ぇ。ちょっかい出したり、邪魔だっつって殺そうとしたり、気まぐれに性欲の捌け口にしたりするけど、俺のために動いたり、都合考えたり、とりわけ俺を助けに来ることなんてありえねーから」 「じゃあなんのために病院に現れたんだ?」 手を掴まれたまま銀時の胸元に手を置いている。 「オメーへの用事以外、考えられねぇだろ」 「本当に来たのかよ」 腹立たしそうに問う。 「俺、全然知らねーんだけど」 「お前の部屋に見せかけた別の部屋に入ってった」 「じゃあ、そっちに用事あったんじゃね?」 「ッあるわけねぇだろが」 「とにかく。高杉は昔っから俺のことはどうでもいいの。本当ーっに、死んだって構わねーって勢いで、人をいたわるとか、ねぎらうとか、俺以外にはやってたけど俺にはこれっぽっちもねーから。集中砲火ん中でも人を捨ててっちまうし、扱いは乱暴だし、勝手に生きてろ、そんで自分が気が向いたらサッサとヤらせろ、それ以上でも以下でもねェ」 「そりゃ…戦争の頃の話か」 「そうだよ。今だって変わってねェよ」 「万事屋…、俺が高杉に塩なんざ送りたかねぇが」 正面から土方は銀時に告げた。 「人間(ひと)は変わるもんなんだぜ」
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