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* 高銀話です(連載中)
銀時は歯がゆそうに返す。 「けどそいつの本質は変わらねーんだ。生き方とか。信条とか。アレだ、三つ子の魂百までってことわざがあんだろ。世間を渡ってくために見かけが小器用になっても根っこんとこは同じだって」 「まあな。おおむね、そんなとこだろうよ」 「だろ?」 「だがな、それとは別に身近な人間を失ったヤツってのは、変わるんだよ」 わずかに土方の手に力が籠もる。 「もうこの世のどこを探しても触ることもできねぇ。世の中にゃ、それ以上に取り返しのつかねぇことなんざ、そうは無ぇんだ」 手を置いたまま銀時の胸元を掴んでくる。 「それを思い知った野郎は今まで気に障ってた過半のこたぁ大した問題じゃねぇって気づくんだよ」 「……お前…、」 「てめーらだって戦争で仲間がたくさん先に逝ったろうが。戦場じゃ、どっかマヒしちまうから身が刔(えぐ)られるような喪失感てのはそうは無ぇ。そんなことより戦わねぇとテメーが死んじまうからな」 銀時は口を噤んでいる。 土方が語っているのは彼自身の経験なのだろう。 「けどよ、高杉がいつの時点でかその痛みをマトモに感じちまったとしたら。世をはかなみ、己の無力を呪い、気が狂いそうな憎悪の中で、これだけは喪失(うしな)いたくねぇって本当に大切なものを探り当てたとしたら、テメェの信条曲げてでもソイツを離さねぇようにするだろ?」 「…アイツの…大切なもの…、」 「お前だよ」 土方は不愉快そうに言う。 「なんで俺がこんな節介焼かなきゃならねぇんだ。とんだ道化だぜ」 「…違ぇ!」 とっさに胸元の土方の手を払いのける。 「アイツが大事なのは死んだ人間だ、生きてるヤツは眼中に無ぇんだ!死者の無念を晴らすために、信じた道を貫くために命を掛けねーのはアイツにとって裏切りなんだよっ」 「高杉が死者のために戦ってるってのか」 土方は払われた手を泳がせる。 「そりゃあ戦争中だけじゃなくて今も?」 「あぁそうだよ、てかどーでもいいしッ!」 「よかねぇだろ、こんだけのことやらかしてる原因はオメーと高杉と岡田の関係の縺れだ」 「オレ外してくんない!? あのクソヤローが高杉に惚れてんのをこじらせただけじゃねーか!」 「外せねぇよ。『岡田』は深夜二人組を狙って一人を昏倒させ、オメーに似た方を襲う。どう見ても横恋慕した野郎がオメーを高杉から奪いとろうとしてんだろうが」 「あぁもうさぁ、もういいわ、めんどくせーよッ! 磔(はりつけ)でも拷問でも何でもすればァ! いっそ俺が攘夷軍の先陣きって天人ぶちのめしてた白夜叉ですぅって名乗っちまおうかなぁ、白日のもとで白夜叉だけに!」 「おまっ…、な、なな、なに言ってんだコラぁぁぁ!」 「知ってんだろ!?知っててその単語だけはずして喋ってんだろ!?そういうの、核心突いてこねぇまどろっこしいセックスみてぇで痛ぇやらコッチから言い出せねぇやらでイライラすんだよっ!」 「それでも口にしちゃならねぇ事柄ってのは存在すんだよッ、黙って近藤さん率いる真選組の武骨な優しさ受け止めとけやァ!」 「そんなもん受け止めきれるかァ!てか、なんで近藤さん!?まどろっこしいセックスに例えたら近藤さんって、テメーはどうなの、テメーはそんなにセックスに自信あんの!?真選組の大将はそんなにセックスが焦れったいんですかぁぁ!?」 「知るかァ!なんでそういう話になんだよ!?オメーがアレだってことは極秘なんだよ、テメーでばらしてどうする、それ隠すために俺たちがどんだけ苦労してると思ってんだァ!!」 「テメーら人を無理やり結婚させようとしといて何が苦労だァ!」 ぺしっと土方のスカーフを叩(はた)く。 「こういうのはさぁ、隠すから窮屈になるんだよ、嘘を嘘で塗り固めて最後は崩落すんだよ、自分で言っちまえば罪人みてーにテメーらの結婚の檻に一生繋がれなくて済むんだろ!?」 「その代わり見廻り組の獄に繋がれんだよ!下手すりゃ首が離れちまうわァ!」 「俺ってそんな極悪人?!なんで死罪って決まってんの!?」 「攘夷のプロパガンダに使われる危険性が高ぇんだ、そんくらい解んだろが!」 「ぷろ、プロパ…なに?」 「プロパガンダ、政治的な意図をもって特定の思想や世論、行動へ誘いこんでく宣伝行為のことだ。この場合は攘夷思想への扇動だよ、オメーを看板にすりゃ人が集まる。オメーは幕府にとって都合の悪い連中への影響力がデケぇ、そういうことだ」 「んなわけねーだろ、これだから関係者以外の当時を知らねぇ外野は困んだよ」 腹の底から溜息をつく。 「俺なんか『部活の対抗戦でちょっと目立ってた』くらいのレベルだかんね。全国水準じゃ、もっと有名なバケモンみてーな先輩ゴロゴロいたかんね。俺が戦(や)ってたのは戦(いくさ)も終盤、名を上げようにも戦況悪くてそもそも噂話広めてくれる生き残りがいねぇし。軍の大半の連中には面識無ぇよ。敗戦迎えちまったから語りつぐ後輩も居ねェから。『誰それ、知らない』って言われんのがオチだから恥ずかしいから良い加減にしといてくんない!?核心突いても誰もヨガりゃしねーんだよ!」 「安心しろ、そんなこたぁねぇ。俺が調べた限りオメーは名にし負う評判の英雄だ」 「やめて。恥かくの俺だから。ホントやめて」 「とにかく、オメーは一生俺の…、コホン、真選組のモンだ。オメーを真選組の鎖から解き放とうとやってくる連中を片っ端からしょっぴいてやらァ。屯所に居ながらにして浪士どもを大量検挙してやるぜ」 「なに壮大な夢見てんだァ! そんなん一人も来ねーよ!」 「まずは祝言だな。お偉いさんを揃えて真選組隊士がオメーを娶る、そんな席を設けりゃ総悟じゃねぇがオメーを略奪された怒りに燃えた連中がこぞって襲撃してくるだろうよ」 黒い包帯を巻いた銀時のこめかみを指先で触れる。 「俺たちの婚儀は盛大な罠でもあるんだ。狙いは『岡田』、岡田似蔵の執念に操られてオメーを求めて彷徨う辻斬り犯どもを一網打尽だ」 「だっ…!テメーらの罠はピンポイントで新八しかおびき寄せねェェ!」 「『岡田』は複数いたんだな。道理で捜査の狙いが定まらねぇはずだ。ここにいたと思ったら、とんでもないところで目撃証言が出やがる。電脳幹を解除すりゃ姿が変わるから逃走も潜伏も難しくねぇ。今度こそ逃がさねぇ、連続辻斬り事件、真選組が全面解決してやらァ!」 「あのー、聞いてる? 俺は言ったかんね、オメーらの望みの客は集まらねーって。そいつら来なくても俺のせいじゃないからね?」 「狙いは『岡田』だけじゃねぇ。瑣末な攘夷かぶれの浪人どもと、できりゃ『ネオ紅桜』を資金源にする攘夷組織、それから…」 「夢ふくらませてんじゃねーよ、ズボンの股間みてーによォ」 「最上の獲物は高杉晋助だぜ」 「……!」 名を聞いて一瞬固くなった銀時の身体を床柱から引き戻して布団に組み敷く。 「なんと言っても高杉は来る。俺を殺しに…、お前を奪いにな」 「んがっ、ぁ…っ…!」 単衣を剥がれ、むきだしになった胸に吸いつかれながら布団に押さえこまれる。 「や、ちょっ…、!」 「ぼちぼち観念しろや。婚儀は目前だ」 塞がりきらぬ刃物の傷を柔らかく噛んで唇でなぞる。 「口でなんと言おうとオメーが高杉を恋しがってんのは解ってる。けどあの野郎にゃ渡さねぇよ」 色の薄い乳首を下唇で楽しげに弾く。 「オメーに平穏な時間を、物騒な連中とは無縁の暮らしを享受させてやれんのは俺たち真選組だ。目が治らなくても手足が動かなくても構わねぇ」 もう片方の胸にも指が這う。 膝を割られ、股間に手が差し入れられてくる。 「ふッ…、んっ、ゃめ、…う、…っあぁ、」 見えないまま銀時は自分の上に重みをかけてくる土方の肩に掴まって息をあげていく。 『ちょうどいい潮時じゃねーか。これを機に雲隠れしちまったらどうだ? 目が見えなくても生きていけるぜ』 頭の中に浮かんでくるのは源外の言葉。 『攘夷戦争は遠くなったんだ。過去を引き摺ってるより、好いたヤツとその仲間に囲まれて安穏と暮らしてもバチは当たらねーよ』 「ァ、やッ…んぁあ! だッ、…ぁぁうッ…、」 「入籍したら遠慮しねぇ。毎日俺と、こんなだぜ?」 「な、なに…、どこ…触ってんだっ、…は、離しやがっ、ぁあっ…!」 「オメーなら手負いだろうが目が効かなかろうが、俺を拒むくれーのことはできんだろ?」 銀髪を掻きあげ、顔をよく見えるように自分へ向かせてから唇を唇に寄せる。 「よく考えろ。俺を選ぶか、高杉を選ぶか」 唇が力強い熱に覆われる。 「高杉を選ぶなら押しのけろや。けど俺とここで暮らすなら、このまま…」 「んっ……、は…、っ…、」 口にぬめる柔らかいものを受け入れながら下腹部をまさぐられる。 ようやく銀時は気がつく。 自分の恋心を向けるべき相手を明確にする時なのだと。 「どうする?」 囁きながら愛撫してくる。 身体はとっくにヒクついている。 誰を求めれば安楽か、身体は答えを知っている。 「んっ、は…ぁ、」 答えようにも口の中は熱い滾りに喉まで蹂躙されている。 手は、土方の隊服を掴んでいる。 裾を割って立てた足には土方の手が這っている。 ときおりひどく優しく手が髪を梳いてくる。 啼きながら身を震わせ、銀時は包帯の下で目を伏せていった。
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来週は更新をお休みさせていただきます。 PR |
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