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【2019/11/19 07:15 】 |
第7話 愛は採算度外視 5





「すまねーな、待たせて」

近藤はこの部屋ではいつもそこに座るのだろう、土方より奥に陣取ってドカリと腰を下ろした。

「どうだ。話は進んでるか?」

「まあな」

銀時は土方から目を逸らし、近藤にも向かぬまま答える。

「とりあえずオメーが来ないことには話にならねぇってとこまで進んだ」

「なんだ、全然進んでないじゃん!ありえなくね?」

銀時と土方を交互に見る。

「もう寝床で一戦終わって痴話喧嘩でも始まってる頃かと思ったのに!」

「そっちのがありえねぇだろ」

土方が嫌そうに近藤に視線を向ける。

「俺からはまだ何も話してねぇよ」

「なに。土方君ていつもそうなの?」

銀時が腕組みして近藤に向き直る。

「部屋に連れ込んだら超特急で終点突破して、もう車庫でメンテナンスしちゃってるカンジ?」

「そうそう。トシは口説く手間も脱がす時間もかからないから。皆、勝手にトシに熱あげちゃうからなァ、会って5分でベッドインなんてザラだと思う」

「てことはだ。俺がこの部屋に来て10分くれぇだから、5分で床入りしてたとしてオメーがもう一戦終わってると判断したということは、土方君てばラストスパートまで6分かからねーってこと?」

「トシは早射ちだからな」

「そんなせわしない早射ち、見たことねぇ。ちゃんと的に当たってんのか?」

「狙いも正確だぞ。そのうちトシ似の子供たちが集まってサッカーチーム作ると思う」

「てめぇらいい加減にしねぇか!」

こめかみに青筋たてた土方が大声で遮った。

「部屋に連れ込んだ覚えも無責任に手ぇ出した覚えもねぇ。人聞きの悪いネタで盛り上がんな!」

「ほー、珍しいじゃないか」

近藤が感心したように土方を見る。

「こんなの、いつもなら聞き流すだろ?」

「酒の席ならな。ありもしねぇ妄言で騒いでる酔っ払いなんざ相手にしねぇよ」

「そうか。わかった」

近藤は真顔でうなずく。

「銀時、お前グッジョブだ。俺からも頼む。トシをよろしくな!」

「よろしくって、お前。本気でコイツと結婚させる気?」

銀時は目を眇めて近藤を見る。

「お前言っただろ、一人選べってよォ。そろそろ本題に入ろうぜ。テメーら、なんのつもりでんなことやってんだ?」

「…うむ、それだがな」

近藤の顔つきが変わる。

「近頃、我が真選組の結婚率の低さが話題になった。お上からのお達しで立場上、俺も動かざるをえなくなった。そこでまず隊内の現状を把握しようと独身者を集めてざっくばらんに話し合った結果がコレだ」

「ええと、途中から聞いてなかった。聞く必要もねーだろ。帰らせてもらうから足代包め。それで昼飯食うことにするわファミレスで」

「待て待て、こっからが本筋だって!」

立ち上がろうとする銀時の腕を近藤が引き止める。

「皆が所帯持たないのはテメェが死んだとき嫁さんどうするって話なんだよ。それから仕事中、嫁さんに気ぃ取られて呆けてたら死ぬだろって話だ。だったら強くて美人で、テメェら守ってくれるくれぇ腕の立つ別嬪さんなら文句ねぇだろ。それが同じ職場にいりゃ心置きなく戦えんだろ、ってことになって」

「じゃ、そういうオンナ探してこいって依頼か」

「その条件にピッタリなのが、オマエ」

銀時の言葉を無視して近藤は銀時を、はったと見据えた。

「お上に言われて何もしなかった、なんてことになりゃ俺たちクビ飛んじゃうからね、一組でも祝言あげればちゃんと隊内で取り組んだ成果だって認めてもらえるからさぁ、もう招待状も用意したし。挙式は来週の土曜日だし。それまでに離れを新婚部屋に改装するから。いつ抜き打ちの見回りが来てもいいようにそこで生活してくれ。明日から改装業者が入るからな!」

「だいたい理解したと思うけどよ」

銀時は生気のない眼で近藤を見る。

「聞きたいことは二つだ。まず、俺の意志はどーしてくれんだ。二つ、俺ァ男だから嫁んなるのはムリ。お前らの前提おかしいだろ。そこんとこどーなってんのか説明しろ」

「うーん、そうだな。心苦しいが…すまん銀時!」

近藤は顔の前で両手を合わせて拝む。

「実はお前を婚姻相手としてお上に申請したら、テメーらみてぇなムサイ連中に嫁に来てくれる気のいいヤツは、そうはいねぇ。絶対に離すなって厳命が下って。お前の意志は二の次になっちまったんだ。もうお前、この話受けないと犯罪者だから」

「テ、テメッ!俺を申請!?なに勝手なことしてくれてんだァ!んなもん承諾した覚えはねーよッ」

「いわゆる事後承諾ってヤツだな」

「しねぇぞ、そんなもん!お偉いさんの集まった席で暴れてやる。テメェらの魂胆暴露してやる!」

「そりゃ困る」

近藤が笑う。

「なんとか協力してもらいたい」

「だから俺は男だから祝言ムリだし!それともなに?コイツが花嫁衣裳着んの?」

苛立たしげに土方を指す。

「だいたい俺には仕事があんだよ。従業員もいるし。ドッキリとしては面白かったけどナイから。現実にはナイから!」

「じゃ、こっから取引だな」

近藤が楽しげに言う。

「最近、江戸に辻斬りが出るのは聞いてるだろう。その人相風体の証言から高杉晋助率いる鬼兵隊配下の岡田似蔵と断定された」

「………」

銀時は近藤に顔を向ける。

銀時に言葉はない。

その反応を、表情を土方はジッと伺っていたが銀時の瞳には何の変化も見られない。

「いつぞやまでは岡田は実際に人を斬っていた。だが…そうだな、高杉率いる鬼兵隊と桂小太郎の攘夷党が江戸湾上空で武装戦艦を衝突させた内部抗争事件を境に岡田は人を殺さなくなった」

銀時は動かない。

呼吸すら留めているように見える。

「岡田が鬼兵隊の指示で動いているのか、だとしたら狙いはなんなのか、すべて不明だ。ただ、襲撃を受けた者たちは皆、同じことを言っている」

紅桜をその身に宿し。

銀時の一閃で散っていったその姿が銀時の脳裏に翻る。

「『坂田銀時はどこだぃ?』」

近藤の声が、岡田似蔵の言い回しと重なって銀時の耳にすべりこんでくる。

「終始、そんなことを言いながら被害者を嬲る、とな。最初は人の形をしているが、次第に腕や身体が膨れ上がってイビツな化物に変形していくそうだ。抜身の刀を持っていて、片腕だけは最後まで刀らしき原型をとどめているが、いずれにしろ全身から管(くだ)のようなものが出て被害者を絡めとり気が済むまで暴行を加える。皆、命は取りとめちゃいるが全治一ヶ月以上の重傷だ」

「狙われんのが全員、オメーと同じくれぇの年齢の、似たような背格好の男なんだよ」

土方が挟む。

「それも必ず二人連れで歩いてるヤツを襲う。一人を一撃で昏倒させたあと、もう一人を標的にする。テメェによく似た方をな」

「……で?」

銀時は低い声を出す。

「どのへんが取引?」

「お前と岡田似蔵の関係を俺たちに残らず話してもらう必要がある」

近藤が告げる。

「もちろん、鬼兵隊や高杉との関わりもな。残念だが今の時点でお前は限りなく黒に近けぇ」

近藤の眼光が銀時を捕らえる。

「お前が俺たちに素直に話すとは思えねぇ。だが手荒な真似はしたくねぇ。お前は拷問したって口割るタマじゃねぇし、なにより俺たちも今までのお前との関わりがある。できりゃ穏便に済ませてぇんだ」

微動だにしない銀時に、近藤が問う。

「銀時。あの内部抗争でお前が果たした役割はなんだ?岡田はなぜお前を狙う?奴らとモメたのか?なにが原因で決裂した?天人との取引か?新型の武器か?その現物はどこにある?お前、知ってるのか?」

「結婚云々は後付けか」

銀時は近藤から目を離さず、平坦に発する。

「どうせこっちの話が本命だろ」

「それだけじゃねぇよ」

近藤がフッと、すまなさそうに笑う。

「結婚話も今回の騒動の一環でな。お前が事情を話せばテロ事件の容疑者として捕縛。話さなければ公務妨害で捕縛。どちらにせよお前は俺たちに協力を『強要』されることになる」

「どっちもゴメンだ。弁護士呼べっつったら?」

「お前の自由意志はなくなる。ってことになる」

言いたくなさそうに、しかしあえて軽い口調で言う。

「必要なことしか喋らなくなって、おとなしく部屋に閉じこもって、ついでに身体も非力な女にしちまう。そんな便利な薬が天人の技術じゃいくらでも作られてるし、俺たちのところまでダブついてる」

「脅しだな。取引じゃねぇ」

銀時は血の気のなくなった顔でうっすら笑った。

それを見て土方は上着のポケットの中に煙草とライターを握りしめたまま、銀時から逸らすように俯けた瞳を静かに伏せた。




続く

 

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【2012/12/01 11:20 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
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