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【2019/11/19 07:14 】 |
第6話 愛は採算度外視 4





「土方君の部屋ってこうなってんの」

銀時は不躾に眺めまわす。

土方はここに私物を持ち込んでいない。

使った物はこまめに片付ける性格だ。

部屋は整然としている。

しかし初めて招いた客 ── 銀時に、プライベートを明かす面映さと、招いた理由の微妙さに、土方は何気ない風を装いながら銀時の視線の向かう先や、そのとき銀時の顔に浮かぶ表情をひとつももらさず伺っている。


「……なんもねーのな」

銀時も感想を言いあぐねたようだ。

各所点検の末、床の間に向けた顔を静止させて呟く。

その瞳は床の間に置かれた土方の刀を見ている。

刀置きに掛けられた大刀は普段土方が持ち歩いている刀とは別の拵えだ。

「あれ、中身入ってんの?」

「入れてなきゃ意味ねぇだろ」

「見ていい?」

「構わねぇけど、その前に聞きてぇ」

「聞きたいのは俺だっつーの」

銀時は刀へ向けていた注意を土方に集める。

「真選組(オメー)ら、どんな情報掴んだの。んで、どんな作戦立てたわけ?」

「そいつァ近藤さんが来てから話す」

土方は向い合って座る銀時を、やりにくそうに見つめる。

「……なんで俺を選んだんだ」

「あぁ?いまさら苦情か。誰でもいいつっただろが」

「苦情じゃねぇよ」

土方は誤解を恐れて即座に改める。

「テメーが誰を名指ししようが問題なかった。ただ、テメーの魂胆を知っときたいだけだ」

サラッと自分の口が嘘をつく。

とんだ綺麗事だ。

銀時が誰かを選んでいたら大問題だ。

その選ばれた隊士と今まで通りの関係を保てた自信もない。

その一点をとってみても銀時が自分を選んでくれて感謝している。


「魂胆ねぇ…」

銀時は白けた眼をあさっての方向へむける。

「テメーらの魂胆は明かさねェくせに俺にだけ喋らせようっての?これだから役人ってのは食えねェんだよなァ」

打ち解けた雰囲気が銀時から消える。

急に土方は銀時から弾きとばされたような遮蔽感を覚える。

この流れはまずい。

真選組の副長としても、土方個人としても。

「魂胆とか、言葉が悪かったな。俺ァそんな深い話してねぇよ」

平静を装って食い下がる。

「オメーが俺を選んだ理由が知りてぇ、ただそんだけだ」

「…マジで?聞きてーの?」

銀時は意外そうな瞳をして土方を見直す。

「なんでオメー分かんねェの?そっちのが俺わかんねェ」

「ア?」

土方は銀時と目を合わせる。

「俺を選んだ理由ってのは、わざわざ口に出すまでもねェくらい一般的な事だってのか」

「そうだよ」

銀時の眼がやる気なさそうに半分閉じる。

「言うまでもなく当然、てレベルの理由だよ」

「…分からねぇな」

土方は本気で思いめぐらせる。

銀時に、まがりなりにも婚姻の相手として名指される理由。

考えるうちに体躯が熱くなってきた。

冷静な思考は言っている。

銀時は今後の展開を考えて真選組副長を選んだのだ。

銀時の知り合いの女を追いかけている組織の長よりも。

暴走しかねない腕だけは立つ幼い青年よりも。

動きやすさ、情報の入りやすさ、隊内の権限などのトータルバランスがいいとでも思ったのだろう。

だが、決め手はない。

銀時が『副長』だけでなく自分という人間をどう捉えて下した結論なのか。

たとえば『副長』が自分以外の人間であっても銀時は『副長』を選んだのか。


「やっぱハッキリ言えや。理由を聞かねぇとオメーが『どれ』のことを言ってんのか定まらねぇ」

「…言わせんのかよ」

信じられない、といいたげに土方に瞳を見開く。

まぶたが数度、まばたく。

土方に寄越される銀時の瞳。

「んー、ええと…ど、どうしよっかなァァァ!」

銀時は言いにくそうにしている。

『婚姻相手』などと言われても一向に動じず、むしろ余裕で計略を軽んじていたように見えたが、ここにきて銀時が平静でもなんでもなく頬に赤味を浮かべ、しかもそれを次第に濃くしているのが顕わになる。

一方の土方も銀時がそんな様子であると見るや対峙している自分の顔がおかしなことになっているような気がして焦りだす。

身体が熱いばかりではない。

首から上がのぼせたように熱くて、まさかコレ顔が赤くなってんじゃねぇだろな。

照れてねぇぞ、俺は照れてねぇ!と誰に向かってともなく心の中に大声で言い訳を響かせる。

そうしているうち銀時がキュッと唇を結んで顔をあげる。

思いきりを見せつけるようにその柔らかな唇をゆるゆる開き、

「じゃ、…言うぞ!あ…あのよォ、」

「お…オゥ」

自分はこんなの平気だから。

なにも躊躇ってないから、と表面を懸命に装う銀時の追い詰められ感を十分に感知していながら、今はそれをあげつらって揶揄する余裕も表情ひとつ変える心の寛ぎもない。

土方は観念する。

自分も銀時と同じくらい顔を赤く、身体を熱くしている。

こちらを見る銀時の瞳が、潤んでいく透明な輝きが、たまらなく土方の鼓動を煽り立てているのを、もうどうしようもなく開き直って認めるしかなかった。

─── 銀時が好きだ

    他のヤツに渡したくない

    その身体に綺麗な肌に触れることを自分は許され、

    銀時も同じ心地で自分に触れてくる、

    その指先を、まなざしを自分は欲してる


「…背が同じだから」

銀時は告げた。

「そのォ、俺よりデカくないし。顔見えるし。ちょうどいいし。だから」


言いながら銀時は赤くなった顔をうつむけてしまう。

見るからに『言っちまった!』ノリ。

言わせた自分を恨むように怒りの視線を向けてくるが、頬を染めてそれをされても欲を刺激されるだけだ。

「………エ?」

それはいい。それはいいのだが。

背ってなに?

「背って…背丈?」

「そうだよッ」

睨んでから目をそらし、ハァ~と嘆息する。

「同じ身長のヤツ、オメー以外に見当たらねーだろが」

「……いや」

土方は自分の声が答えてるのを遠くに聞く。

「調べてみりゃ何人かは居るかもしれねぇ」

「要らねーし、そんなん」

ぼそっと銀時が呟く。

「こいつマジか?マジで分かんない?もー分かんねェのはこっちだよ。つか、もういい。分かるまで放置してやる。たっぷり悩め、悩みぬけッ」

「………オィ」

「んだよ!?」

「聞こえてんだけど」

「……あ、」

バツの悪そうな顔が半端に動いて笑う。

「そ…そう、んじゃ、ひとつ……言っとくけど」

「…なんだ?」

「俺がお前を選んだのは、お前と同じ理由だから。……たぶん」

「…!」

今度こそ銀時は赤くなり、今度こそ土方の心臓は止まりそうになった。




続く

 

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【2012/12/01 11:25 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
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