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【2020/04/07 23:12 】 |
第61話 決戦ではなるべく空気を読もう 1





「高杉…テメェ、なにしにきやがった…」

土方が高杉を振り向く。

藤達への構えは揺るがない、なのに高杉を見る眼には失意が浮かぶ。

「テメェらに立ち入りを許可した覚えは無ぇんだがな…」

「なァに、ちとそこの御仁に用があったモンでね」

高杉の視線は土方を通り過ぎる。

たどり着いたのは天堂藤達。

ネオ紅桜を駆使していまだ長塀の上に陣取る爆牙党の首魁だった。

「天堂。俺たちが流しちまったスクラップを糸目をつけず買い回ったんだって? ずいぶんと派手な手間をかけさせちまったようだな」

「クハッ…、それほどでもないさ」

「おまけにソイツを弄って『ネオ紅桜』なるものを売り出したとか。さぞ何も知らない連中が、こぞって金を出したことだろうよ」

「アンタに話を通そうにもツテがなかった。こんなところなのが残念だけど話ができただけでも幸運、ってな。鬼兵隊の高杉とお近づきになれて恐悦至極だよ」

藤達は上目遣いに笑う。

「今度、席を設けさせるから話しをしよう。売り上げ金や配当の。俺はアンタを敵に回す気はない。アンタに喜んでもらいたいし、爆牙党を盟友としてほしいからな」

「フン…、その話の前に片付けなきゃならねェ案件があるだろ?」

高杉の目つきが変わる。

「ソイツを離しな。二度とふざけた真似するんじゃねェ。そうすりゃ今回のおイタは不問に付してやる」

「エッ…?」

藤達は高杉を見て、キョロキョロする。

突然の風向きの変化。

目の前の『岡田』に捕らわれている銀時を見て、ようやく息を呑む。

「そういえば白夜叉はアンタと恋仲だったって…? でも確か自然消滅したんだよな。そんな今更な話、持ち出されても……フハッ、それは本気なの?」

藤達は油断なく高杉を探る。

「アンタがネオを快く思ってないのは解ったさ。俺が出過ぎた真似したのをこの白夜叉と引き換えにチャラにするって意向だね。だがその価値があるのかな?」

勢いよく銀時を指差す。

「白夜叉は真選組の土方に惚れたんだ、女になって嫁ごうとしてるものを俺がどうしようとアンタには関係ないよな? ただ単に俺に嫌がらせしたいだけじゃないか?」

にんまりと口角を釣り上げる。

「アンタは自分が紅桜に失敗したからネオで名を上げようとする俺が気に食わないんだ。それとも俺にも渡したくないほど、まだ白夜叉に未練があるっての? 鬼兵隊の高杉晋助さん?」

「て、テメッ! 高杉にヘンなこと訊いてんじゃねーよ! 殺すぞこの富士ビタイぃぃ!」

『岡田』の腕に捕らわれ、両手を捻じあげられたまま銀時がジタバタする。

「アイツが俺なんか、未練なわけねーだろ! とっくに終わってんの! てか、手軽にデキて面倒がなかっただけだから俺はアイツにとって! アイツが一番大事なのは、もうこの世にいねー人だし、そのために戦ってんの! 俺はアイツ以外ヤダったけどね!」

「可哀想に、白夜叉の片想い?」

余裕に体を揺らして藤達が笑う。

「もとはといえばネオが白夜叉を付け狙うのも部下の岡田似蔵の遺留情念で極めて危険な状態なのに、なに手を打つわけでもなく放置だろ? 白夜叉が大切なら真っ先に安全策を講じると思うけどな」

「うるせーよバカ。そんなの解ってんだよ!」

「似蔵は白夜叉を愛していた、と同時に自分の主人との一体化を望んでいた。主人に同化し白夜叉を獲得するために夜な夜な坂田銀時を求めてネオは彷徨ったのさ。苦労したんだけど、あの回路だけはどうやっても中枢幹から外せなくてな」

「あのなァ、花粉症野郎が惚れてたのは高杉だっつってんだろ。アレのどこが色恋? データになってまで俺を殺そうとしやがって、見当違いの嫉妬向けんじゃねーよ! 俺と高杉はなんもないっつーの!」

「見当違いじゃねェよ」

高杉の視線が銀時に向いてくる。

「俺がすべて投げ打ち、この身を捧げて乞うのはお前の存在だけだ。銀時」

「…あぇ?」

「お前を愛してる」

「ん…ぇえっ!?」

「愛してる」

「う…ウソ、もういっぺん言って…?」

「お前を愛してる」

「…ぅ、…も、もういっぺん…」

「愛してるぜ」

「……もういっぺん」

「愛してる、銀時ィ…」

「たっ…高杉ぃ、」

「愛してる」

「…んぁ、…も、もういっぺ…」

「いい加減にせんかァ!」

捕獲剤で地面に固めこまれた桂が遮る。

「そんなの十年前から分かりきったことだ、貴様らの茶番には付き合いきれん。さっさと銀時…いやアレを連れていけ。だいたい貴様がまごまごしてるからこんなことになったのだ」

「ご挨拶だな、ヅラ」

高杉がムッとする。

「俺りゃ機が熟すのを待ってただけだ。出際は心得てるつもりだぜ?」

「そうじゃない。貴様は手配中の身でありながら銀時と逢引していたな。なぜそのとき今のやりとりをしなかった。銀時に幕府の手が伸びると思わなんだか?」

「……」

「俺は貴様がキライだ。銀時を踏みにじるような貴様のやり方は断じて許せん。銀時の平穏を脅やかすことしかできんのなら、いつでも俺が銀時を貰いうける」

「ちょ、ヅラ。なに言ってんの」

「だが残念なことに銀時はお前を好いている。肉欲の捌け口として無体の限りを尽くし、愛情をそそぐことも省みることもない身勝手なお前を、なんの見返りも求めることなく銀時は昔から…そして今もだ」

キッと高杉を睨む。

「貴様は銀時になにをしてもいいと思っているだろう? 銀時が痛みを感じないと、傷つかないとでも思ってるのか? もし今回も口先だけで銀時を弄するつもりなら腹を切れ。介錯は俺が努めてやる」

「…余計な気を回すんじゃねェよ」

高杉は俯き、そして顔をあげる。

「こんな場所で言う気もなかったが、ちょうどいい機会かもしれねェな。…オイ、銀時。俺がお前を敵陣に置き去りにしたのを覚えてるかァ?」

「…覚えてるけど。それが…なに?」 

「一度や二度じゃねェ。お前を庇うのは白夜叉の名を汚す冒涜だと思ってた。俺が武神であるお前におこがましい真似なんざできるか、ってな」

「……」

「あんとき俺の目は他を向いていた。護るべき連中もいたし、奪還すべき人もいた。ひたすら進むべき一本の道を邁進して、行き詰まるとあたりまえのようにお前に感情をぶつけ、気が晴れるまで当たり散らしちゃお前に不安と欲求を処理させていたんだ。まるで大いなる者に甘える駄々っ子のようにな」

険しく眉を寄せる。

「お前は強いから、なにをしても許されると思っていた。許される、許されないの次元であるかどうかすら考えなかった。お前が俺を支えるのは当然のことだった」

「……ん、」

「お前にも人としての処理できない感情があると、自分こそお前を支えなければならないことをてんで解っちゃいなかった。今も俺は十分に解っちゃいねェだろうが、ちったァ解ったことがある」

高杉の表情が和らいで銀時を見る。

「死んだ人間への感傷より、生きてるヤツを失わないために、あらゆる努力をすべきだってな」

「あ…、なんっ…?」

「死んでしまった人の無念を晴らすのは大事だ。しかし無念が晴れたかどうか知足するのはテメェの自己満足に過ぎねェ」

視線があがって空を向く。

「故人は俺を抱きしめちゃくれねェ。あんなにも自分を投げ打って情熱を傾けたところで、あの人と話すことも触れることもできやしねェ。そうこうしてるうちに俺はまだ生きて触れるヤツを失って、また触れることもできなくなったと悔やむんじゃねェか。そう思ったら銀時…テメェの生きて在ることが法外な衝撃すぎて寒気がした」

ふと銀時に笑いかける。

「お前がいなくなったら俺りゃ死ぬ。お前なしじゃ生きていけねェ。どんなにお前が最愛のものか、消息が知れなくなって初めて知れた。同時に問うた。俺がお前に何をしてきたか、お前を大切にしないで何を成すのか、とな」

「じゃっ…じゃあなんで、腑抜けだのナマクラだの言ったんだよ!?」

銀時の怒りが解けて出る。

「幕府と契って野垂れ死ねつっただろうが! それってこないだだよな? 一週間も経ってないんだけど、お前は最愛のヤツにバカだのツラ見せたら斬るだの誰と寝ようが勝手にしろだの言うわけェ!」

「そりゃテメェが土方を選ぶっつったからだ」

唇を引き結ぶ。

「あんとき、俺をきっぱり拒んだろうが」

「どんとき? いつ? それなに!?」

銀時は羽交い締めのまま身を乗り出す。

「俺、お前に誰を選ぶだの拒むだの言ってねーよな!?」

「『鬼籍に入る覚悟はあるか』って聞いたぜ。そうしたらお前は『ねェ』って答えた。てことは俺と死線をくぐる気なんざねェってことだろうが」

「は……、はぁ!?」

「『心穏やかに暮らしてェ』ってのは真選組との安穏とした生き方をするって意思表示でしかあるめーよ」

「な、なに言ってんのォ!? お、俺はだな…、う……っ、うぎゃっ、」

銀時は一旦絶句して顔を赤く染めていく。

「俺は、『幕府側にまわって殺される覚悟はあんのか?』って聞かれたと思って、お、おま、おまえの敵になんかならねーって…、できりゃお前と二人、のんびり暮らしてーよって、俺にとっては精一杯のお誘いだったんだけどォォォ!」

頬をふくらませ気味に騒ぐ。

「だからそれ蹴られたと思うだろ!?勝手にしろ、幕府にでもしがみついてろっつわれたんだからさァ! あんときだってなんで急にテメェが現れたんだか解らねーよ、いきなり乗っかってきやがって、待てつってんのに出し入れして、テメェは昔っからなんにも変わってませんんん!」

「黙れ。テメェを攫ってった野郎は真選組の手にゃ負えねェ。アレを止められるのは俺だけだ。テメェを助けられるのが俺だけなら、行かないわけにゃいくめーよ」

高杉も心外、とばかりに目を怒らせる。

「なのになんだテメェは。俺だと十分解っちゃいながら騙されねェとか、俺と思わせてるだけで俺じゃねェとか散々ほざきやがって…そんなに俺が嫌だったってのか」

「あああ、あれはっ…、」

銀時はピタっと動きを止める。

ぐっと詰まり、視線を逸らしてさらに顔を赤くする。

「こ、こんなトコで言えるかァァ! あんな醜態さらしてんのをテメェに見られてどんだけ肩身狭くて死にそうだったかテメェに解るかァ! 解んねーだろうボケがァ!」

「…アァ?」

「ただでさえテメーにはのうのうと暮らしてるとか蔑まれてんのに、カラクリ装着してるとはいえちょっと剣術噛ったくらいの鈍臭い素人に、あんなとこまで持ちこまれて、まるで俺が股関節ゆるいみたいじゃねーかァ!」

「……」

「だから俺は思いついたね。あ。そうだ。コイツ高杉じゃねーよ。だから高杉に見られたことにはならねェから大丈夫。って必死でテメェじゃねェって思いこもうとしてたんだぞ、ゴラァ!」

「なんのために?」

「んあ?」

「なんのために俺じゃねェって思いこもうとしてたんだ?」

「そりゃお前、助けにくるはずない高杉が助けにきて、躯も間違いなく高杉でキモチいのに、でもやっぱり違ってましたァ別人でしたァっつわれたら、崩れちまうんだよ。俺の心が」

銀時は薄く笑みを浮かべる。

「あの状況で崩れたら立ち上がれねェ。助かる保証はなかったし、まだ自力で脱出する気でいたからな」

「…ククッ。あいかわらず助けをアテにしねぇ野郎だな」

高杉が呆れたように見下ろす。

「だがテメェにそういうクセをつけさせたのは俺だ。テメェをさんざんな目に遭わせた。嫉妬し、蹂躙し、束縛して放置する。毎日がそんなだった」

「いや、そこまでひどくは…」

「テメェに犯しちまった悪行を謝りてぇ」

切ない瞳で問いかける。

「すまなかった。銀時」

「…ぇ、…なんでお前が謝んの?」

「できりゃ、償いてェ。今日は、テメェの気持ちを確かめに来た」

「ま、…マジで?」

「紛らわしい聞き方はすれ違いの元だ、単刀直入に訊くぜ」

「ん、お、…おぅ、」

「俺はお前と共に生きたい。離したくねェ、愛してる。お前も俺と一緒にいたいと思っちゃくれねェか?」

「そっ…そりゃもちろ」


「言わせるわけにはいかないな、君は俺の花嫁だ」

藤達が銀時の口元を手で遮る。

「伝説の恋の成就を目の当たりにできるのは胸踊るけど、白夜叉を手に入れるのを俺はずっと夢見てきたんだ」

「あぇ…?」

銀時は藤達の声を聞いてボンヤリする。

まるで他の世界から戻ってきたように。

「なにお前。アレ?なんだっけお前」

「クハ、可愛いことを…すぐに俺しか見えなくなるのにな」

 

「アイツ、めげねーな」

沖田が囁く。

「見なせェ、土方さんなんか圧倒的な勢いで観客を黙らせての告白合戦に、みごとに肩おとしてぼっきり心折れてまさァ。ありゃしばらく立ち直れねーな」

「あの程度でめげてどうする」

桂が鼻を鳴らす。

「攘夷者など、昔から自分の主張をするだけの集団だ。言ったもん勝ちだからな、藤達は引かんぞ」

「アイツ邪魔アル」

神楽が憤慨する。

「銀ちゃん、あの高杉のヤバイ匂いにめろめろしてるのに、なんで銀ちゃん離さないアルカ?」

「戦力に自信があるのだ」

桂が言う。

「ヤツはまだ『ネオ紅桜』を3体、保有している。高杉の兵力が未知数とはいえ強気に出るには十分な手駒だろう」

 

「銀さん…!」

新八は捕獲銃の点検をしてもらいながら長塀を見上げている。

妙、そして狂四郎たちも高杉と銀時、藤達を不安そうに見やる。

花野アナは鬼兵隊や爆牙党、隊士たちの動きを見てはいるが一言もない。

近藤は複雑な表情で銀時と土方を見ていた。

 


「もう一度言うぜ。銀時を離せ」

高杉の声がものものしい響きを帯びる。

「さもなきゃテメェはここで終わりだ。無様を晒したくなきゃ消えろ」

「クハッ、吠えるのは結構だけどな」

藤達は笑いながら試すように高杉に挑む。

「それだけのコトを俺に指図する武力を今ここに鬼兵隊は持ってるの?」




続く


 

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【2012/11/22 22:15 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
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