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【2020/02/22 02:03 】 |
第60話 ご祝儀は社会人のたしなみ 9





「『爆牙党』首魁、天堂藤達。顔色が悪いのは貴様の方だろうが」

土方が、部下から銃器を受け取り、ゆっくり藤達の方へ歩いていく。

「御禁制品の所持改造、闇ルートでの販売、一般人への不正使用。『ネオ紅桜』事件の首謀者として貴様とその一味を逮捕する。神妙にお縄につけ」


「『その一味』? それが次の覇者に対する認識? にわか侍らしい言い草だよな」

藤達は肩を竦める。

「白夜叉はお前らみたいな町民あがりの手には負えないよ。武勲の刻まれた神々しいその身をすみからすみまで愛でるのは真の武士にこそ許された栄冠」

声を張り上げる。

「真選組を皆殺しにしてその血を白夜叉に捧げろッ、岡田似蔵の執念が生み出した化け物ども、せっかく飼ってやってんだ、最高に面白い見世物を見せなッ」


「ちょ、なにアレ。キモチ悪い」

銀時が不快そうに口を押さえる。

「厨二病こじらせてるみたいなんだけど」

「仕方あるまい。ヤツには戦争の体験などない。年長者から聞いて特殊な夢を描いているだけだ」

「んだよ、あれ実はガキなの? オッサンなのは見かけだけ?」

「見かけだけじゃなく俺たちより年上だ。大事にされすぎて戦争に参加できなかった劣等感があるらしい。戦場を馳せた白夜叉という英雄像で自分のふがいない履歴をすりかえたいのだろう」


「誰かと思えば狂乱の貴公子、桂小太郎殿じゃないの」

藤達は桂へと視線を下げる。

「貴公も真選組から白夜叉を奪還しに来たんだな。攘夷党と共闘できるなんて皆から羨ましがられるだろうさ」


「遺憾だ。俺は貴様と組むつもりはない」

桂が告げる。

「銀時…いや白夜叉、…いやアレをおかしな男と添わせる気はないのでな。真選組に渡す気もないが、貴様がふさわしいとも思えん」

「オイなんだそれ。お前は俺のお父さんか」

「今すぐ手を引けば今回のことは目を瞑ろう。だがこれ以上、悪さするつもりなら貴様は攘夷党を敵に回すことになる」


「どの状況を見てそう言ってんだろ? 往年の英雄も戦況が読めない? それとも…貴公が仕留めたはずの獲物『紅桜』を俺が横取りしたから怒ってる? フハッ! 時代は変わってくんだよ? より強力な武器を手に入れた者が正義を継承できる」

藤達が意気揚々と宣言する。

「貴公が切り捨てた『紅桜』がどんなに有意義であるか、その特等席で御覧になるといい。ついでに貴公の窮地もお救い申し上げるよ、そのあかつきには攘夷党ごと我が傘下に降(くだ)っていただこう」


「死んでも御免こうむる」

桂は真選組と対峙している部下たちに言い放つ。

「藤達の蛮行を許すな。攘夷の徒といえど、俺たちと志を異にする者たちだ。今は真選組にかかずらってる場合ではない。市民の敵、攘夷の敵を一人残らず撃退しろ」


「驚いた、敵に回るというの?」

藤達は目を剥く。

「ならば捻りつぶすまでだ。攘夷党を殲滅し、爆牙党の実力を世間に知らしめてやる。皆、松陽の弟子は強力な旗印だ、白夜叉と貴公子だけ生け捕りにして。あとは、…ヤッちまいな!」


おう、と獰猛な応(いら)えをして爆牙党の荒くれたちが前に出る。

攘夷党、そして真選組を威圧しながら仕掛ける隙を狙う。

「ぎ、銀さんっ…!」

新八は銀時を後ろに置いて構える。

「そのまま真っ直ぐ下がれば傘ですからッ」

「了解~」

「メガネ、お前も傘に入れ」

土方が煙草を取り出す。

ライターで火をつけると深く一服する。

「テメーら。チャイナを先に溶かしな」

捕縛剤の一塊に溶剤をかけている隊士たちに命じる。

「早いとこ傘ん中へ放り込め」

「土方さん…!」

「できりゃテメーらの友人も…って言いてぇとこだが、そんくらいで定員オーバーだからな」

「僕らだけ逃げるなんて、そんなことできませんよ!」

「標的が居なくなりゃ敵さんも退くしかねぇ。そのほうが俺たちも助かんだよ」

「だったら銀さんだけ隠せばいいでしょう!?」

「なにかあったときはオメーらが最後の守りだ」

土方は銃器を担ぐ。

「銀時を頼んだぜ」

「なにアルカー?」

神楽は目をきょろつかせる。

「オマエらなんの話してんだヨ、傘ってなにヨ?」


「来るぞ!」

近藤が下半身の捕縛剤を溶かしながら叫ぶ。

「対器物衝撃砲、発砲許可ァー! お妙さんッ下がって! かぶき町の皆さん、全員池から離れろォ!」


グォォ…と唸りをあげて『岡田』の一体が跳躍する。

屯所の屋根を遥かに超える高さから銀時めざして降下してくる。

「一番隊、前へーッ」

土方が号令する。

神山ほか特殊な銃器を構えた隊士たちがバラバラと集まってくる。

銃器の後ろからは太いコードが伸びて母屋に繋がっている。

そのコードを絡ませないよう苦心して場所取りすると片膝ついて銃器を担ぐ。

「構えーッ」

土方は立ったまま照準を合わせる。

飛び込んでくる『岡田』は一体だけ。

そのことに眉を顰める。

「やれやれ…こいつァ本当は総悟の仕事だったんだがな」

息を止めフィルターを噛んで銃器を構える。

「撃てーッ」


ダゥンッ…と空気の塊のようなものが放たれる。

屯所の庭のいたるところ、居合わせた人間たちの肌身に小波のように圧迫が押し寄せる。

狙いの中心にいた『岡田』は見えない力に押し戻され、空中で姿勢を崩す。

『グハァ…!』

そのまま見えない銃弾で押され、『岡田』は着地点に届かず池の中央に飛沫をあげて落下した。

「よしゃーッ!」

近藤が拳を握る。

「その調子だッ、お前ら上手だな!」

『グハ…ゴホッ…ガァァァァ…!』

ざんぶりと池に浸かった『岡田』は立つこともできずに暴れている。


「な…なんだよ?」

藤達は気がかりそうに池に落ちた『岡田』の様子を窺っている。

「なんの武器だか知らないが、たかが水の中に落ちだだけだろ。そのネオは無傷さ、戦いにもなっちゃいない。なのになんでバカみたいに喜んでんだよ?」


「なんでだろうな」

不敵に睨みをきかせて笑う土方。

「こいよ。次はどいつだ?」


「これは、どうしたことでしょう?」

花野アナが密やかに実況する。

「池に落ちた怪人があがってきません。苦しそうにバタバタと手足を動かしています。真選組は怪人の無力化に成功したんでしょうか? でもまた4体の怪人と爆牙党襲撃の脅威が続いています!」

 

「…クハッ!そんなのコケ威しに決まってるだろ、ちゃんと戦えよ、この役立たず!」

藤達は池の中の『岡田』に怒鳴る。

『岡田』は突いた手をブルブル震わせては何度も水の中へ倒れこんでいる。

「水に濡れたくらいで使えなくなるようなヤワなはずがないんだよ、甘えんなダメ野郎! オレに恥かかせたらどうなるか解ってるな?」

「やめろ、天堂!」

近藤が真顔で制止する。

「あの池は生き物の動きを止める仕掛けがしてあるんだ。アイツは甘えてるわけじゃない、動きたくても動けないんだ!」

「なんだって?」

藤達は身構える。

土方は額を押さえる。

「なんでわざわざ教えんだよ、近藤さん」

「いや、あんまりアイツが理不尽なこと言うからさぁ、」

「もう遅いでさァ」

沖田があさっての方を見る。

「池を改造して有害電波で満たし、一度浸かった者は自力じゃ上がれねェ。そんな仕組みだってこと、敵に気づかれちまいやしたぜ」

「解説すんなァ!」

「有害電波?そんなものでネオを止められると思ったの?」

藤達は無理にせせら笑う。

「鬼兵隊が開発した『紅桜』はあらゆる障害をはねのけて作動するし、とりわけ電磁波なんて無効中の無効だよ」

「『紅桜』は関係ないでさァ。あの有害電波は生きてる部分に効くんで」

顎で池の方をしゃくる。

「見なせェ、長谷川さんを。まだプカプカ浮いてるでしょ」

「あっ!」

近藤が焦る。

「助けてなかったの!?」

「山崎にスイッチ切りに行かせたが、敵襲で電源切れなかったんだろ」

土方は煙草を噛む。

「んで山崎は戻ってねぇのか。あいつまたミントンかよ」


「いくらカラクリで強化しようと本体である生身の部分が封じられてしまえば動けんというわけか」

桂が解釈する。

「つまり、あの池の水は『ネオ紅桜』だけではなく普通の人間にも危険な罠だな。ハマったら最後だ」

「殺すほどの威力はねぇんで、最後ってほどじゃねぇぜ」

「捕らわれれば最後だろう」

「それを言うなら、始まりでさァ。楽しい時間のな」


池を凝視したあと、藤達は笑みを広げる。

「なら、池に注意すればいいわけだな。解ってしまえば恐るるに足らず」

屋根や電柱にいる怪人たちに檄を飛ばす。

「行け、お前ら! 真選組を殺せ、あの二人を奪え!」


二体が同時に襲ってくる。

衝撃銃の狙いを向けるが素早い動きで隊士を撹乱する。

「クッ、散開!」

土方が砲手を散らし、多方向からの砲撃を指示する。

見えない衝撃波を掻い潜って二体の『岡田』が隊士たちに襲いかかる。


「援護しろッ」

近藤が屋根の上の白い隊服の男たちに怒鳴る。

「味方ごとで構わん、捕獲銃で止めろ!」


「衝撃銃の射程範囲では使用できません」

主だった男が応えてくる。

「そちらの砲撃を止めていただかないと」


「なんで両方使えないの!?コッチ止められるわけないでしょおぉ!丸腰になっちゃうもの!」


「うわっ、き、来たッ!」

新八が悲鳴のように叫ぶ。

「来ましたよ、銀さん! もう傘で逃げてください、アンタだけでも!」

「んあ? なにが来たの?」

「『岡田』の変身体ですよ、皆、手が塞がってるんで、僕らだけガラ空きだから…!」

様子を窺っていた五体目の『岡田』が銀時と新八のもとへやってくる。

遮るものもなく二人は『岡田』の目の前に立たされる。

「危ない銀ちゃん!」

「銀時!」

「なにやってんだぃ、土方コノヤローッ」

一番近い三人が捕獲剤の中で騒ぐ。

溶剤をかける隊士たちも身を低くして逃げていく。

「あわ、あわわわ…!」

新八は手持ちの捕獲銃を構える。

正面に来た敵に必死で引き金を引くが、カシャカシャと虚しい音が響くのみ。

「なんで出ないんだよ!?」

「どけ。新八」

銀時が後ろから新八をよけさせる。

「木刀よこせ」

「ありません、刀ならここに…! でもっ、」

「貸しな。オメーが抜くよりマシだろ」

「どっ、どういう意味ですかそれ!?」

「お前が目になれ」

新八から隊士用の刀を手渡されると銀時はスラリとそれを抜く。

「ヤツの攻撃の左右を教えろ」

「銀さん!」

『グォォォォォッ…サカタッ…サカタサカタサカタァァァァァ!』

両腕が上から覆いかぶさってくる。

新八は震える口でなんとか声を出す。

「上から二本、腕がきますッ!」

「あ、そう」

銀時は刀を構えたまま微動だにしない。

触手と刀の生えた腕が銀時に掴みかかる。

と見えた瞬間、銀時の身体が『岡田』の腕を駆け上がり、怪異の頭髪を握ってその肩に立っていた。

「銀さん!?」

怪異が大きくのけぞる。

銀時の刀の柄が『岡田』のこめかみを殴打する。

『アガァ!』

一声叫んで『岡田』は頭を抱える。

どう身体を使ったのか新八には見えなかった。

しかし銀時は既に『岡田』の腰を蹴って地面に着地している。

その姿は掛下の着物に帯を締めただけの身軽なもので。

「動きずれーな、これ」

綿帽子を掴んで脱ぎ捨てる。

崩れた『岡田』がドサリと膝を突く。

白い化粧に赤い唇、印象的な双の瞳。

新八が思わず見とれていると、真っ白な打ち掛けが袖を広げて玉砂利の上に舞い降りてきた。

「ぎ、ぎ、銀さん、これ…?」

「んだよ」

露わになった少し長めの銀髪が陽の光を煌めかせている。

新八は気恥ずかしさに目を逸らし、うずくまる怪異に銃口を向ける。

「これは『岡田』の変身体じゃなかったんですか?なんでこんな呆気ないんでしょう?」

「そりゃオメー、あれだよ。コイツがド素人だからだよ」

銀時はこともなく答える。

「いくらカラクリを装備しようと、それを使うのは中身の野郎だからね」

「あっ…『ネオ紅桜』の中枢幹を使ってる人!」

「動いてねーし分かってねーし、コイツ実戦どころか普段あんま身体動かしてねぇんじゃね?」

「そ…、そうなんですか?」

「トドメは刺してねーからよ、早いとこ池ん中ブチこめや。でないと止まんねーぞ」

「エッ?」

 

『グガッ!』

『岡田』の眼球の色が変わっている。

新八にも憤慨が見てとれる。

この中身は、武道にも縁がない一般の人間なんだろうか。

「危ないッ」

立ち上がりざま伸ばしてきた触手を。

あでやかに薙ぎ払ったのは駆け込んできた狂死郎と妙だった。

「大丈夫ですか、銀さん。新八君」

「きょ、狂死郎さん…!」

「ここまで弱体化していれば我々の手にも負えます。目の見えない銀さんがここまでやってくれたんだ、あとは私たちに任せてください」

「そうよ。近藤さんたちも白い液まみれでよくやってるじゃないの。ここは花嫁のためにも、私たちが踏ん張らなきゃね」

「姉上っ…!」

「これ、全国中継なんでしょう? 恒道館道場の名を知らしめる絶好のチャンスよ」

妙が新八に耳打ちする。

「銀時ちゃんの神技にあこがれて入門したがる女の子がいるかもしれないわ。ブライダル護身術として売りだせばアッという間に希望者が集まって道場を再建できるわよ」

「そんな再建でいいんですか…?」


「さあ、かかってらっしゃい」

キリ、とハチマキを締めたキャバ嬢の集団が槍や薙刀を構えて弱った『岡田』を取り囲んでいく。

「袋叩きにしちゃおうよ」

仕切りなおしたホストたちが進み出てくる。

狂四郎が言い渡す。

「池へ落とせ。命まで取る必要はない、動きを止めればあとは真選組が引き受けてくれる」


「オイ、危ねー真似すんな」

「大丈夫です。つついて水へ追い込むだけですから」

「オメーらが危ないつってんだよ」

「その心配はないでしょう」

狂四郎が銀時に応える。

「アナタの一撃が効いて、あの男はロクに動けませんよ」


弱った『岡田』は反撃してくることはなかった。

ワァワァと追い立てる威勢のいい男女に行き場をなくして池へ転げこむ。

大江戸テレビはその様子を華々しく写しだした。


「集まった人々の手で、怪人がついに戦闘不能です! 連続辻斬り犯、爆牙党の怪人は一般市民の手で警察に突き出される形となりました!」

花野アナが興奮気味に解説する。

「池の仕掛けといい、セメント作戦といい、真選組、よく持ちこたえています! しかも信じがたいことですが、あの怪人を相手に見事な立ち回りをみせた花嫁は、実は目が治っていなくて見えていないという情報が入ってます! 真選組一丸となって敵を迎え撃っております!」

 

「ンハッ、このまま済むわけないのにな」

藤達が焦れた形相で背後の『岡田』に命じる。

「あいつら、てんで期待外れだ。次はお前が行け。うまくやれよ、これ以上爆牙党の名を汚すことは許さないからな」

並ならぬ力量を匂わせる最後の一体。

それが藤達の前から飛び去ると、近藤に挑みかかる。

「うおぉッ!?」

近藤は手にした刀で受け止めるのが精一杯だった。

しかもまだ足は地面に固めこまれている。

『やべえな、コイツ…』

近藤が顔つきを変える。

次の一撃に備えて構えると、しかし『岡田』はクルリと背を向けて別方向をめざす。

「あっ、オイ!」

拍子抜けした近藤は、しかし目を見開く。

「トシィィィィィ!」

『岡田』は土方を狙っている。

土方は先の二体に翻弄され、隊士を率いて戦っている。

ガシィ…と怪腕が土方を斬る。

「うぐッ、」

土方は担いでいた銃器で『岡田』の剣を止める。

『岡田』は薄笑いを浮かべて嬲る。

二撃、三撃あたりで銃器は盾にもならなくなる。

投げ捨てて土方は刀を抜く。

「副長ォォォ!」

「…い、いいから撃てッ」

片腕を不利な体勢で受け止める。

「かまわず池へブチこめッ!」

「イエッサー、副長!」

グリグリ眼鏡の神山が敬礼すると、おもむろに鍔迫り合う二人に衝撃砲を向ける。

「隊長からの教えでは、撃つときはためらわずに撃てと!それがたとえ副長でも、むしろ副長と一緒に敵を葬り去れと!」

「御託はいいからとっとと撃てやァ!」

「イエッサー副長!」

神山が生真面目に引き金を引く。

サッと身を躱して『岡田』は土方に背を向ける。

「待ちやがれ、オイ!」

売られた喧嘩。

土方は気を立てたままその背中を追う。

衝撃砲は誰にも当たらず空へ吸いこまれていく。


「下手クソ」

見ていた沖田が呟く。

「やっぱりアイツは狙いが悪ぃぜ」

 

「あれ、新ぱ……、ッ!?」

なにもない空間を手探りしていた銀時の身体が、咄嗟に反応した。

迫る敵に身構える。

しかしどこに飛びのくこともできず、背後に飛び降りてきた『岡田』に振り向きざま抜刀して振り抜く。

『グギギギギギ…』

怪人は笑ったようだった。

少し顎をそらし見下すように。

「…くッ、」

大刀を握った手首が掴まれ、捻じあげられる。

銀時の顔が苦痛に歪む。

このまま捻じられれば手首が砕ける。

「銀時ィィィ!」

近藤、桂、そして神楽と新八。

「銀ちゃぁん!」

「銀さんっ」

「テメェッ、」

土方が走ってくる。

「そいつを離せェェェーッ!」


「んぁッ…ッっ、」

銀時の指から柄が離れる。

ガシャ、と大刀が落ちる。

すかさず『岡田』は銀時の両手を上でひとつかみに纏める。

背中から片腕を回して帯ごと抱きとると、斬りつける土方を躱して跳躍した。

 

騒ぐ者、走る者、武器を取る者が数人いたが、主には茫然と見ているしかなかった。

隊士も、ホストも、キャバ嬢も。

白い隊服の男たちも。

神楽や新八まで、非情な光景に動けないでいる。

花野アナのせわしない声が非常事態を告げている。

どこかで銀時は守りきれると思っていた。

安全圏にいるような気がした。

 

「クハハハハハッ! ほらね、俺の勝ちだろ?」

銀時を捕らえて戻ってきた『岡田』に、してやったりと藤達は目を細める。

「他のコピー品はともかく、この子のは回収した本物の『紅桜』をベースに使ってるんだ。白夜叉だろうが真選組だろうが赤子の手をひねるようなものさ」

 

「テメェ、藤達ゥゥゥッ!」

爆牙党のたむろする塀の下へ土方は走っていく。

「銀時を返せッ返しやがれッ!」


「イヤだね。これは俺のものだ」

銀時の白い頬を指の背で撫でる。

「聞けば女になったとか。ますます愛でる価値があるというもの。たっぷり可愛がらせてもらうよ、すぐに俺の子を孕むだろう」


「ちょ、触んないでくんない」

銀時は顔をそむける。

「生きてることが嫌になるから」


「白夜叉を手に入れれば目的は果たしたも同然。真選組の皆殺しと、狂乱の貴公子は残念だけど諦めるかな」

藤達は池に落ちた二体と地面に縫い止められた一体を一瞥すると、真選組と組み合っている二体の『岡田』を呼び寄せる。

「お前たちも引き上げるよ。こんなところ長居は無用」

口の両側をつりあげて土方を見下ろす。

「バイバイ、真選組さん。せいぜい花嫁を寝取られたマヌケ面でも世間に晒せばいい」

 


「どこへ引き上げるって?」

よく通る低い声が藤達の動きを止める。

「こんなところまでノコノコやってきたお前たちに帰る途なんか無いぜ」

「誰!?」

藤達は声のする方を振り向く。

屯所の母屋の正面、一番高い屋根。

さきほどまで誰も居なかったそこに。

「罠にかかったとも知らずに素で花嫁強奪を決行するたァ」

ククッ…と笑って隻眼が見下ろす。

「テメェはとんだ三文役者だよ」


僧服姿に手甲、脚絆。わらじ履き。

被っていた笠を取ると左目の包帯が誰の目にも見える。

背後には武市変平太、来島また子、その他の鬼兵隊隊士が控えている。


「たっ、高杉ッ!」

藤達の足元がよろめいて蹈鞴(たたら)を踏む。

「鬼兵隊の、高杉晋助…!」

 

庭に居た者たち、大江戸テレビのカメラも屋根の上を注視する。

奇妙な静けさがあたりを支配した。

 

 


続く


 

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【2012/11/22 22:20 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
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