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「俺にテメェを阻む力がねェと思うなら仕掛けてきな。結果の見えきった勝負は、ちと気が引けるがな」 高杉の表情に、いつもの余裕ぶった笑みはない。 抑えきれない怒りに顔つきが変わっている。 藤達は抜け目なく見比べる。 鬼兵隊の兵たちと爆牙党の手勢、そして3体のネオ紅桜。 「アンタとの勝負に引けを取るとは思えないけどな」 藤達は困ったものだ、といいたげに肩を竦める。 「でもやめとくよ、危ない橋は渡らないことにしてるんだ。今日のところは退いとくさ」 チラッと高杉を探り見る。 「アンタの愛しい白夜叉をもらっていけば十分だからな」 「……なに言ってんの、コイツ」 銀時が冷めた顔を向ける。 「死にたいわけ?」 「クハッ! いいね、その言いっぷり」 藤達は銀時を惚れぼれと観賞する。 「鬼兵隊の高杉が本気で惚れてる恋しい人を、この手で組み敷いてモノにするんだ。考えるだけでゾクゾクするな。人のものを盗って性を営むのは最高のエクスタシーだよ」 「テメーのチンポ並みに粗末な願望なんざ、どーでもいいからわざわざ人に聞かせんな。ガキ共に悪い影響出たらあの世で反省させっかんな」 「君を躾けるのは楽しそうだな。知ってる、白夜叉?」 藤達は焦点のない銀時の瞳を眺める。 「真選組の目の前で君を拉致し、陵辱して思いを遂げたのは…今、君を捕らえてるその子だよ?」 「…んぇ?」 「その子はウチの門下生でな。なかなかに剣の腕が立つんだけど、みごとにネオに適合したんだ。だからそのへんのボンクラとは動きが違う。君も敵わなかったろう? 手も足も出ず、犯されて視力を奪われた」 「……」 「その子の毒液で君は全身の痛みに苦しみながら俺に抱かれることになる。当然さ、この子は紛(まが)い物じゃない。鬼兵隊の高杉が造ったオリジナルの『紅桜』の性能を、ほぼ完全に活かしたネオを装着してるんだからな」 「コイツが…あのときの、アレ?」 「そうさ。どこもかしこも可愛がってもらったろう?」 ねっとりと欲に塗れた視線を走らせる。 「この子も情念の成就に正気を失ったらしくてね。連絡が取れなくてヤキモキしたけど、今日ようやく帰ってきた。白夜叉が他の男のモノになるのを嗅ぎつけたんだろ、戦闘体勢でネオを装着したまま、ついさっき俺の元へ現れたんだからな」 「いやあの…」 「君は逃げられない。おとなしく俺のものになりな。帰ったら俺との婚礼式…そのまま床入り式だ」 「すいません、イヤです。きっぱりお断りなんで」 「そういうわけだから高杉、これで失礼するよ」 屋根の上を仰ぐ。 「貴公と物別れに終わるのは残念だけど。俺と白夜叉の子を見れば貴公も認めざるを得ないだろう。そのときは友好な関係を結べるよう期待してるさ。また、いずれ」 「あっ!」 藤達は部下たちに撤収を目配せする。 同時に『ネオ紅桜』2体へ手振りで塀の外を指す。 「あいつ逃げる気アル!」 神楽が声を立てる。 「なにやってるネ、銀ちゃん連れてかれちゃうヨ!」 「落ち着けリーダー、陰険で姑息な高杉のことだ、なにか策を講じてるハズ」 「これで無策だったら敵ながら笑えまさァ」 沖田が屋根の上を見る。 「オイ高杉ィ!真選組に隠し玉はもう無ぇぜ、テメーがなんとかしなきゃ旦那は爆牙党に持ってかれちまう、なんとかしやがれィ!」 「黙るっス、幕府のチワワがァ!」 来島また子が沖田を睨みつける。 「晋助様に気安く話しかけるんじゃないッスよ。アンタたちとは敵同士なんスからね」 「なんだとこのパンツ丸見え女。ナメた口効いてるとテメーのパンツ、シミだらけにしてやるぜ」 「フン、ガキの考えることは似たり寄ったりッスね」 「そのパンツ、シミだらけになったら脱がしてテメーの大将に拝ませてやら。せいぜい期待してなァ」 「ちょ、なんなんスか、そのドSっぷりィィ!」
妙が薙刀を構える。 「あの男が口ほどにもなかったら、銀時ちゃんの貞操の危機よ」 「待ってください、お妙さん」 狂死郎が止める。 「商売柄、私はあの高杉という人物を聞き知ってます。むざむざ恋人が目の前で連れ去られるのを許すような男ではない。銀さんの恋人にふさわしいほどに腕が立ち、頭の切れる、奇抜で柔軟な策士とか。今この目で見ても噂が誇張でないと分かる。あの男が動かないなら、我々も動くべきではない」 「そういうことだ」 近藤が不本意そうに笑い、号令する。 「真選組隊士に告ぐ! 花嫁を取り返すぞ! 爆牙党に狙いを絞れ! 狙いは塀の上の浪士だ、一人ずつ確実に捕らえろ、怪人に構うな!」 「怪人に構うなって…銀時ちゃんはどうする気ですか」 妙が咎める。 「あの毛皮なんか肩につけたビジュアル系気取りの頭領にくれてやるおつもり?」 「銀時は大丈夫だ!」 近藤が言い放つ。 「アイツは…アイツには愛情の双璧がついてるからな!」
桂も部下を動かす。 「真選組に構うな、鬼兵隊と動きを合わせろ。エリザベス、皆を率いて藤達と銀時を囲め!」
爆牙党の男たちが吠えて抜刀する。 「我らが道を塞ごうとする貴様らこそ敵だ!死ね、攘夷党ども!」 うおおおお、と書かれたプラカードを掲げてエリザベスが爆牙党に突っこむ。 塀の上で、攘夷党と爆牙党の斬り合いが始まる。
「あとは頼んだよ。適当に散って戻ってきな。帰ったら祝宴だ」 屯所の外の道路には真選組の戦車が一定間隔おきに配備され、砲口を藤達に向けている。 その一番近い戦車の砲塔から山崎がマイクで呼びかける。 「襲撃犯どもに告ぐ!君たちは包囲されている!おとなしく武器を捨てて投降しなさい!さもないと撃つぞ!」 「白夜叉もいるのに?」 藤達はせせら笑う。 「お前ら江戸のゴミは地面に這いつくばってドブさらいでもしてな。その120mm砲じゃネオの足は止められない」 道路には戦車がポツンポツンと置かれているだけで、あとは隊士の一人、パトカーの一台も見当たらない。 朝からの規制で屯所の周囲はすっかり無人となり、この騒ぎに集まる見物人も、おしかける公的機関の役人もいない。 「この調子なら戦車だけ壊せば追っ手はなさそうだ。お前ら、致命的にオツムが足りないんだよな」 藤達が唯一、姿を見せている山崎に言う。 「戦車なんか持ち出せば周囲数十メートルは発射危険エリアで生身の兵なんか置いちゃおけない。お前らは俺と花嫁の門出を黙って見ているしかないのさ。…ネオちゃん、いいから行って戦車を斬り裂いてきて?」 空身の『ネオ紅桜』2体を差し向ける。 2体は唸りをあげて外の道路へ飛び降りる。 彼らが地面に着地する、寸前に激しい電撃音がして、怪人たちの体は勢いよく弾き返された。 「なにィ!?」 1体は屯所の塀に叩きつけられ、もう1体は屯所内の庭まで飛ばされている。 藤達は怪人たちを見て、彼らが弾き返されたと思しき何もない空間に目を凝らす。 「一体、これは…?」
ガシャン、と砲塔上部の扉を開けて白ひげゴーグルの平賀源外が顔を出す。 「突貫で仕立てた戦車砲搭載型電磁波包囲装置、名づけて嫁さん奪還電磁檻作戦、俺の気分と一緒に電圧は上がりっぱなしだ、あと半日はいけるぜ、大将!」 「き、貴様…カラクリ技師!?」 藤達は度を失う。 「その戦車が、ネオを吹っ飛ばしたっていうの!?」 「難しいこと言っても素人にゃ解るめェ。加速粒子を叩き出して対象物の表面にマイナス電子を引っ張りだし瞬間的に固定してエンハンス、同時に同力価のマイナス電子をぶつけて爆発的に反発させる。まあ一言でいやぁ、人もカラクリもこの見えないエレキの檻から出られねェってこった」 「そ、そんな…!」
高杉が身をかがめて礼を尽くす。 「時間の無ぇ中、仕上げてくれて感謝するぜ。オメェの働き、カラクリの威力。まさに俺の想像以上だ」
源外は照れくさそうに紅潮する。 「あんとき、ババアの店で銀の字を取り返す算段を授けてもらってよかったよ。さもなきゃ俺りゃぁ、真選組に見当違いの特攻をかけてたとこだ」
高杉は感じ入ったように顔を伏せて笑う。 「その気性、技量…アイツに似てる。いやそりゃ、三郎がアンタから授かったものか」
堪えたように笑うと、握った手の親指を突き出す。 「この周囲四方、各戦車に搭載した電磁波同士の作用を繋ぎ合わせることで屯所は猫一匹這い出る隙間もなく反発檻で囲われた状態だ。触れる物は屯所へ向けて弾き飛ばされる。ケガしたくなきゃ檻に触れないよう気をつけな、兄ちゃんたち!」
桂が笑顔を見せる。
「爆牙党の心得違いどもを源外どのの檻へ投げつけろ。さすれば自動的に真選組どもの庭へ落ちよう。あとは奴等にどんな楽しい時間が始まろうと俺たちの知ったことではない」 にじり寄る攘夷党の志士、そして塀の下で待ち構える真選組隊士に藤達は顔を引きつらせる。 「このままじゃ捕まっちまう!」 「でもどこへ?」 爆牙党の荒くれたちも浮き足立つ。 「どうやって逃げりゃいいんですか、お頭ァ!」 「クハ、こうなりゃ白夜叉を盾にするしかない」 藤達が向き直る。 「こんな手は使いたくなかったけど仕方ない。高杉! あのジジイに言って戦車砲を止めさせろ! さもなきゃ大事な白夜叉に傷がつくよ?」
高杉が応える前に、新八が駆け出る。 「なにをしたって無意味です、貴方が高杉さんに敵うハズがない!」 「黙れ、ガキ!」 藤達は隊服を来た、眼鏡のない新八に怒りを募らせる。 「大人の話に首つっこむな! どんな躾してんだか、ろくな親じゃないだろう!」
妙が笑顔を一転させる。 「ろくな親じゃないのはテメェの方だろうが、このくされビジュアル崩れがァ!」
藤達も爆牙党の浪人たちもビビる妙の恫喝に動じることなく新八が続ける。 「僕がどうしてここにいるのか、なにもかもお話しします」 「し、新八…」 首を回して銀時は声のほうを向く。 「なにもかもって、オメー、あ、あああれだ、あんま、こっ恥ずかしい部分はナシな!」 「こっ恥ずかしい部分なんてありませんよ!」 新八は眉を立てて怒鳴る。 「アンタが定春の散歩行くとき、夜中に高杉さんと会ってるのを僕は偶然見たんです。それで確信した。銀さんが心許してくつろげるのは高杉さんの元しかない。銀さんは誰よりも高杉さんが好きなんだってね!」 「しょっぱなから、こっ恥ずかしいだろーがァ!」 「黙って聞けよ天パァ!」 「聞いてられっかァ!」 「土方さんの部屋でアンタの結婚に反対したのは、そういうわけです。アンタが高杉さん以外の人と結ばれるなんてありえない。僕は…ひそかに、二人が仲良くつきあってくれるんじゃないかって、このあいだ衝突したけど、幼馴染みなんだし、銀さんが安らげる場所を失くしてほしくない、この人のもとで安心して笑う銀さんが見たいって、そう思ってたから」 「じゃ、じゃあオメー…銀さんは俺のもの、とかなんとか言ってたのは…」 「高杉さんのものです、とは言えないでしょう。真選組の人の前で」 ジロっと睨む。 「アンタは高杉さんと結ばれる。失うことばかり多かった銀さんが大切な人と幸せになる。いつかそうなると思ってたのに、結婚なんて言い出すから、僕はあの場で決心したんです。このことを高杉さんに知らせに行こうって。銀さんに後悔しないでくださいよって言ったのは、高杉さんに顔向けできないことしないでくださいよって意味ですよ。あのあと僕は鬼兵隊の人に高杉さんに会わせてくれって頼みに行ったんです」 「なっ…そんな危ねェ真似したのかよ!?」 「危なくないですよ。埠頭に行って探しまわったらその日のうちに会えました。銀さんが連れ去られたからヘリで追う、お前も来るかって。高杉さんから声を掛けてくれて。すぐさま僕もお願いして乗せてもらいました」 「埠頭かよ。そんなとこ思いつきもしなかった」 「ヘリの中で高杉さんは僕の話を聞いてくれて…、僕の気持ちも解ってくれて。銀さんは必ず助け出すって言ってくれて…でもその前に生みだされてしまった『ネオ紅桜』を回収しなきゃならないし、真選組と結婚するって言ってる銀さんを攫うわけにもいかないから、こらえろって」 新八が意外そうに付け加える。 「高杉さんってなんでもお見通しなんですよ。真選組が銀さんに近づいたのは、おそらく見廻組とか幕府の手から銀さんを守るためだろう、そういう魂胆だろうって」 「んー…まあね、そうかもね。高杉は昔から妙にアタマが回ったからね」 「山について、危険だから高杉さんたちだけ山小屋に向かって、僕はヘリで待機してたんです。しばらくして帰ってきた高杉さんが、あそこに銀さんがいるけど連れて来なかったって言うから。どうなってるか心配になって様子を見に行こうとして…」 チラと塀の間際にいる土方を見る。 「山小屋に真選組の人たちが一杯いるのを見て、捕まると思って引き返したんです。土方さんには、鬼兵隊の人たちと行動してて悪いことしてるなって思ったんですけど…、岡田似蔵の念波が宿ってる『ネオ紅桜』の変身体をなんとかする方が先だと思って、それで鬼兵隊の皆さんのところへ連れてってもらって」 新八は詳細を明かさないよう喋る。 「そこでまたいろんな話をしたんですけど、高杉さんがどんな些細なことでもいいから銀さんの様子を全部喋れって」 「……ぁ」 「思いつく限りお話ししたら、急に高杉さんが銀さんの入院してる病院へ行くって言い出して。銀さんと直(じか)に話したかったってことですが、結局会えなかったらしくて」 「だってアイツ部屋間違えるんだもん」 「うるせぇ」 高杉が愉しげに笑う。 「そこの副長サンに一杯食わされたのさ。完敗だったぜ」 「これはもう結婚式当日に的を絞るって高杉さんが、…その、いろいろ手配して」 新八の視線が屋根の上の白い隊服の男たちを掠める。 「さっき、その人が『銀さんが大事なら狙われてるのを放置しないで手を打つはずだ』って言ってましたけど、高杉さんはいろんなところに手を回して、自分も出かけていって…僕と一緒に定春の散歩までしてくれたんですよ? ゴハンやったり毛を梳いたり…行けないときは人をやって水とエサを換えてくれて。あと、その…お登勢さんに挨拶してました」 「挨拶!? エッ? ババアに挨拶ってナニ!」 「言わなくても解るでしょう、銀さんをくださいみたいなことですよ!」 「ななな、なんだとォ、なにしてくれてんの高杉テメェ! そんなの、そんなんアリかよォォ!」 ジタバタ暴れたあと、高杉に尋ねる。 「それで…、ババアなんつってた?」 「二人、元気に生きろとよ」 高杉が薄笑いを浮かべる。 「祝福してくれたぜ?」 「…そう、……そうか。…ちょ、やべ。しばらく顔合わせらんねェ…」 「それで僕は」 コホン、と新八が咳払いして続ける。 「鬼兵隊の声明文をもって真選組に来たんです。『婚礼当日に推参する。当方の不手際により野放図に跋扈するに至ったネオ紅桜なるカラクリ兵器をこの手で一掃いたしたし。ついてはこの者を守り手として加えていただければ幸い、叶わねば恩情をもって斟酌されたし』ってね」 「お、恩情をもってシンシャク…?」 「鬼兵隊と一緒にいた僕を、事情を汲んでお咎めなしに放免してくださいってことですよ、恥ずかしいな、もう!」 新八は汗ばんだ自分の額を擦る。 「あとは見ての通りです。近藤さんは僕を隊士として処遇してくれて、この数日は隊士の皆さんの部屋に寝泊まりして号令の訓練したり、道場稽古したり。あと今日の作戦について詳しいところまで教えてもらいました」 「あ。だからヘンテコな銃もってたわけか。お前のコンタクトも眼球カバーなの?」 「いや普通のコンタクトですけど」 新八は低く答え、藤達を見上げる。 「とにかく!僕が見てきた限り、高杉さんは銀さんのために考えつく限りのことをしてきました。『ネオ紅桜』で銀さんを危険な目に遭わせ、いきなり来て銀さんを無理やり連れて行こうとする天堂さん、貴方は武士として御自分が不甲斐ないと思いませんか!?」 「なんなんだ、このガキ!」 イラッと藤達は新八を見下げる。 「お前なんかお呼びじゃないんだ、すっこんでな!」 「貴方なんかに銀さんは渡しません、なにがあっても貴方の恋人にはなりません! すみやかにおひきとりください!」 「こわっぱが、調子に乗りやがって!」 藤達は眼の色を変えて激高する。 「だったら証明してやろうじゃないか、白夜叉は俺のモノだってね。ネオの薬液には催淫剤もあるんだ、お前らの可憐な英雄がどうされるか解るだろ?」 思わせぶりに高杉を見る。 「俺の愛撫にあられもない姿を晒して初めての部分を貫通されるんだ。結婚式の初夜に男に捧げるはずの処女を今ここで俺に差し出すんだよ、お前ら全員で白夜叉の破瓜を見届けるがいい!」 「ちょ、やめて」 銀時は身を捩ろうとする。 「立ったままとか駅弁とか、オレ無理だから。こんな塀の上で富士ビタイ相手にできるほど器用じゃないからね!」 「ネオちゃん、触手から白夜叉を気持ちヨクさせるお薬を注いであげて?」 藤達が己の股間をまさぐる。 「そしたら腰をこちらへあげさせて。着物の裾を開けるように…クハッ、心配しなくても極上の快楽で男を教えてあげるよ」 「ちょ、やだって、やめてください、」 触手が伸びて銀時の身体に巻きつこうとする。 「本気でやめろっつってんだよ、後悔するよ、オメーッ!」
高杉が叫ぶ。 形相が変わっている。
屋根を蹴り、庭を数歩で跳んで塀に駆けあがり、一瞬で斬りつけることができるはず。 なのに高杉は動かない。 堪えるように拳を握って塀の上を睨みつけている。 「高杉さん、なぜ…!?」 新八は焦燥を浮かべて高杉を見る。 鬼兵隊、そして真選組隊士までもが高杉を窺う。
それでも高杉は部下を従えたまま屋根に立ち尽くしていた。 PR |
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