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【2020/04/07 22:51 】 |
第35話 事後処理はすみやかにウヤムヤに 5





「あー…なに? 目ぇ痛いんだけど」

ベッドからくぐもった声が返される。

個室の中は薄暗かった。カーテンは閉められ、電気は点いておらず、ベッドのまわりに光を遮るように衝立(ついた)てが並んでいる。

それを分けて踏み入っていくとベッドの傍らに護衛の真選組隊士が一人、立っている。その隊士の上着を頭からすっぽり被ってベッドに突っ伏し、上着から銀髪の端をはみ出させている銀時が見えた。

「具合はどうだ?」

近藤が口を切る。

「少し話を聞きたいんだが、話せるか銀時?」

「…なに…なんの話? 俺が辻斬り野郎にヤラれた話? いいけど別に。なに聞きてーの…?」

「ヤツの化け物になる前の平時の素顔を見たか?」

「見ねぇよ」

銀時は上着の下から、もぞりとも動かず答えてくる。

「川んとこでヤツに捕られたあとブン回されて…気がついたら目の前まっくらで何も見えなかった」

「そうか。ならば銀時、ヤツはお前の知っている人物だと思うか?」

「………知らない野郎だった」

間を取り、声が沈む。

「俺は…あんなヤツ知らねー…」

「ヤツと話したか?」

近藤は眉を顰めながら問いを重ねる。

「声は聞こえたろ? ヤツはお前になんて言っていた?」

「…なんかいろいろ言ってたけど覚えちゃいねェ」

銀時は思い返すのを拒否するようにおざなりに答える。

「お前のモンは俺のモンだとか、伝説になりたいとか、なんかそんなんゴチャゴチャ言ってたな…」

「ヤツはお前に何した?」

近藤は簡潔に聞いた。

「ヤツの特定に繋がるような特徴的な行為があったら教えてくれ」

「…触手いっぱい生やしてた」

銀時は被った上着の端を掴んで握り、ことさら軽妙な口調で言い飛ばす。

「けどまァ肝心な生身のアナログ触手が役に立たねーんだからアイツ物笑いの種以外のなにものでもねーけどな!」

「役に立たなかったのか? アレ、でもお前…」

近藤は土方たちを振り返る。

自分の勘違いかと目で二人に問う。

土方は訝しげに銀時を凝視している。

銀時の言う『役に立たない』は犯人が挿入するに至る男性機能を持ち合わせなかった、という主旨だと受け取れる。しかし。

「旦那、完遂されてケツに中出しされてましたぜ」

沖田がシャラッと告げる。

「土方さんの指揮で現場に踏み込んだ野郎どもは全員見やした。それが地球人の成人男性のナニから出た精液であることも確認してありやす。旦那は強制わいせつと暴行罪の被害者でさァ」

「………はあ~」

沈黙が凍る前に銀時が大きくため息を吐いた。

「そんなの覚えてないっての。なんかされたってんなら、お前らの方がよくご存知なんじゃね? 俺は気ィついたら目に殺人光線刺さってきて、アイツに犯られたことなんかどーでもいい。…ってか、身体中に触手まきついてきて穴という穴に入りこんでマッサージされましたァ、それ以上でも以下でもねェよ」

「ヤツはどうなったんだ。岡田は?」

土方が銀時の様子から、ひとつの辻褄が合う線を閃かせる。

「お前を触手で弄りまわして、役に立たなくて…そのあとヤツはどうなった? なんでヤツは逃げ出したんだ?」

「…、知りませんんん~」

ふてくされたように銀時は答える。

「身体動かねーし、目は見えねーし、薬キメられてたみたいで、なんつーの?キモチいしかなかったし?それ以外なんも分かんなかったし…イッたんじゃね?ってくれーで……ってか、これ取り調べェェ?! なんでこんな恥ずかしいこと言わされてんだコラァ!」

がばっと銀時は上着を投げ捨てて身を起こす。

「んぎゃぁぁああ!」

近藤たちに向き直ろうとして、途端に両眼を隠して元の体勢に突っ伏すとバタバタ布団へもぐりこむ。

「目が、目がぁ~!」

「……なら、ひとつネタをくれてやるよ」

土方が、箱座りして丸くなる銀時に告げる。

「お前が岡田に連れていかれたのは信州の山ん中だ。俺たちでも追跡はたやすくなかった。そこに、お前んとこのメガネが居たぜ」

「…、」

「メガネは俺たち真選組を見て逃げ出した。追っかけたらな、妙なカラクリを落としていったよ。どうやら電脳中枢幹、ってヤツらしくてな。ヤバイ代物らしい。いま調べちゃいるが、カラクリが精巧すぎて手が出ねェ。闇市レベルの取引品らしいな」

土方は毛布にくるまっている銀時を見る。

「メガネがどっからそんなブツ仕入れたか、裏は取れちゃいねェ。だがメガネをそんな山ん中へ連れてって、また俺たちの前から逃走させた野郎の顔は見たぜ。テメェと深い仲だったっていう…鬼兵隊の高杉晋助だ」

「…!」

もぞ、と毛布が動く。

依然として銀時の身体は伏せられたままだ。

「メガネは反社会組織に踏み込もうとしてんだ、テメェが覚えてること話しやがれ。なにか手がかりが掴めるかもしれねェ」

「…知らねぇ、俺は何も覚えちゃいねェ!」

「ざけんなテメっ!」

「副長」

そのとき、銀時に上着を貸していた長身の隊士が止めに入る。

「それがこの人から効果的に話を聞き出す手段ですか。違います。貴方は御自分の疑念を持て余しているだけだ。結果、貴方はなんの成果もあげられずにこの人との関係を悪くするだけです」

「うるせぇ、ひっこんでろ!」

「いいえ、引っ込みません。私はこの方の護衛を命じられました。副長が相手であっても、この人の病状を悪化させるような行動は謹んでもらいます」

「なに自分はそっち側ですみてーな顔してんだ!? そもそも、なんでテメーはコイツに上着貸してんだよ! 所属はどこの隊だコラ!」

「俺んトコです、土方さん」

沖田が挟む。

「一番隊に配属された厠のスペシャリスト、隈無清蔵(くまなく せいぞう)さんでさァ」

ニヤリと笑って進み出る。

「清蔵さんの上着はアンタみてーに雑菌ついてませんからね。旦那の癒しが必要な身体には清蔵さんの鉄壁の清潔観念がもっとも効きやす」

「ぐぬぬ…、」

「真選組に、この人以上に清潔な人はいませんや。病人の世話するならこの人が適任でしょ?」

隈無は毛布の下に丸くなった銀時に自分の上着を丁寧に掛け直している。

銀時はその上着の端を掴んで握る。

「坂田さんの警護は責任者として私が任されました。明日の退院まで、一番隊が交代でこの部屋に詰めます。お話が終わったようでしたら副長たちも速やかに御退室ください」

「頼んだぜィ清蔵さん。旦那にとってバイ菌でしかない土方さんを撃退するのは清潔第一の清蔵さんしか居ねェよ」

「バイ菌ってなんだよ? なんで俺がバイ菌んん!?」

「おまかせください、隊長」

「…トシ、ここは清蔵さんに任せよう」

近藤がポン、と土方の肩を掴む。

「銀時。悪かったな。とんだ目に遭わせた」

そのままベッドの銀時に声を掛ける。

「お前をこんな事に巻き込むつもりじゃなかったんだが。…岡田は捕まえなくちゃならねぇ」

配慮しつつも淡々と申し渡す。

「祝言もあげなきゃならねぇ。お前はここを出て屯所の離れでトシと婚前生活するんだ。真選組はお前を手放すつもりはねぇからな」

「近藤さん、」

思わず責めるような視線を向けた土方を、近藤は片手で下がらせる。

「新八君のことも。俺たちのこの話がなければ彼が鬼兵隊に駆け込むことはなかったはずだ。彼を見つけ、なんとか説得して連れ戻すことに専念する。申し訳ない…!」

「…祝言」

銀時が毛布の下から問いかける。

「俺が土方君と結婚すんなら俺の罪状は問わねー…っつったよな?」

「ああ、言った」

「だったら…俺がここに見舞いに来てほしいヤツ呼んでも不問に処されるよな? 呼んでもらおうじゃねーか。俺をソイツと二人っきりにしろ」

「…誰を呼ぶつもりだ?」

銀時の目的が見えない。

まさか、鬼兵隊の高杉晋助その人を呼び出すとでもいうのだろうか。

「てめぇらに万事屋の諜報網もらすわけねぇだろ、企業秘密だ」

毛布の下で銀時が精一杯、吠えているのが分かる。

「いいから俺の言った通りに連れてこい。ソイツとの会話は誰も聞くな、ソイツを詮索もするな。婿入りする俺が真選組に不利なことするはずねーだろ、見舞い客との面会は自由にさせてもらうからな!」

「高杉はダメだぞ、銀時!」

近藤が先手を打つ。

「ヤツが来たら、いくらなんでも俺たちは見過ごすわけにはいかん!」

「誰があんなヤツ呼ぶっつったァ!? お前ら耳悪ぃの!? いいからとっとと俺のマブ友達(ダチ)連れてこいやァァァ!」

毛布を被ったまま、姿を隠した怯えた猫みたいにシャーシャー言いながら銀時は面会の希望を繰り返す。

銀時が会いたがっているのは闇世界の住人や指名手配犯かもしれない。

そういった人間には屯所は敷居が高すぎる。

退院して屯所に押しこめられる前に病院に呼んだ方が簡便だ、銀時はそう計算したのだろう。

「…仕方ねぇな。部屋の外には警備を置かせてもらうぞ」

「好きにしろ、ただし面会人には手ぇ出すな」

銀時が毛布の下で背中をふるふるさせる。

「……あ。土方君いる?」

探すような声が聞いてくる。

土方は眉を顰める。なんで居ないと思うのか分からない。

「居るぞ」

「筆、貸してくんない?」

毛布の中から、片手だけスススと伸ばされる。

「…墨は?」

「墨も」

携帯用の毛筆セットを用立てて、ベッドの横におかれた台の上に据える。

「ここに置いとく。使うときゃウチの隊士に言え。握らせてやる」

「ん、どーも」

ひらひらと片手が振られる。

土方はその手を見て、プイと顔を背ける。

握るのも叩くのも違うと思う。

こんなとき、銀時はどうされたいのか。

なにを求めて手を伸ばしてきたのか、知りたいと土方は思う。

しかし、それを十分知り得る時間も状況も得られないまま、数十分後。

銀時が示した条件の男を真選組隊士がパトカーに乗せて病院へ連れてきた。

エレベーターを昇り、特別室の並ぶ廊下へ踏み入り、銀時の部屋の前へやってくるまで、案内の隊士たちはその男を横目でチラチラ眺めていた。




続く


 

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【2012/11/24 12:20 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
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