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【2020/02/21 23:22 】 |
第21話 恋の鞘当ては華麗にすべし 3





「披露宴は来週とお聞きしましたが、もう入籍されたんですか?」

「…まだしてねぇよ」

「婚約者の坂田さんはすでに真選組屯所で副長さんの身の回りのお世話をしているんですよね。周囲からは人も羨むアツアツぶりとお聞きしていますが?」

「まわりがそう言うなら、そうなんじゃねぇか」

「電撃入籍ということですが、実は交際は長く続いていたとか。お二人の出会いはどこですか?」

「ホテルだな。池田屋ホテルで、ばったり」

土方が銀時の顔を見ながら答える。

「そのときテロリストの検挙中で、万事…、坂田君は爆弾処理に奔走してくれました」

「なるほど、それをきっかけに交際が始まったわけですね。デートの誘いはどちらから?」

「デートっつうか、俺がコイツを探して町ん中で偶然見つけて。……あとは花見とか映画とか」

「意外にも一般的な手順を踏んでますね。どうやら副長さんの方が坂田さんを気に入ってしまったみたいですが、告白はどんなタイミングで?」

「……んなもん、ねぇ。なんだかんだで顔合わせて、だいたいコイツは真選組の扱う事件現場に居合わせて突拍子も無ぇことやってるから、俺は…ハラハラして見てたけどよ」

「告白は今日でぇす」

うっすら顔を赤らめている土方の横で銀時が言い放つ。

「生活の面倒は見る、入籍してくれ、一緒に祝言あげてくれって言われてOKしましたァ」

「それはプロポーズですよね? 即答ですか!」

花野アナが食いついてくる。

「もともと坂田さんも副長さんに好意があったんですね!? プロポーズされてどんなお気持ちでしたか?」

「マジかよ?って思いましたが、まあ仕方ねーかなって」

「『仕方ない』とは?」

「あ、なんかすごく愛されちゃってるみたいなんで。断ったらエライことになりそうなんで」

「それだけ本気の副長さんに応えたわけですね。最終的に結婚を決意した理由は? 副長さんのどんなところがお好きですか?」

「…ええと、どんなって、…性格? バカで物騒で刀振りまわしてるところとかね」

「それは副長さんにベタ惚れってことですね? さっそくお惚気ですか?」

「そうです。惚気けてます」

「なんでだァ!?」

「噂どおり目も当てられない熱愛カップルですね」

銀時はカメラに向かってダルそうにVサインしている。

花野アナはクルッとテレビカメラに向き直る。

「今後、坂田さんは性転換して完全に女性になり、真選組屯所で土方副長と幸せな家庭を築かれるそうです。お二人のお子さんの誕生が楽しみですね。大江戸テレビ独占スクープ、江戸湾13号地から花野がお伝えしました」

んあ!?と血相を変える銀時をよそに、テレビクルーは放映を終え、録画を終了して撤収にかかる。

「ちょっと待て、俺がいつ女になるつったよ!?」

「いつって、そう聞いてますけど。真選組広報担当の方から」

花野アナはなんの疑問もなく答える。

「真選組ではそういうお薬があるそうなので、現実にはなかなか表に出てこない性転換の密着取材を大江戸テレビが独占取材させてもらうことになってるんですよ。結婚式の中継もしますから」

「なにそれ。俺は性転換なんかしねーから」

「ちょくちょくお邪魔しますんで楽しみにしててくださいよ?」

「オイちょっと待てェェェ!!」

銀時が叫ぶも彼らは砂浜から引き上げていってしまう。

呆然と見送る銀時を土方は気の毒そうに見やる。

話の出どころは真選組の広報。

テレビ局とのタイアップも想定通り。

高杉は、そして岡田似蔵は銀時のこの映像を見るだろう。


─── さあ、早く殺しにやって来い。俺を


土方は海のつながる埠頭を見る。

そこにポツポツと戦艦が停泊している。

表向きは商艦だが、中には攘夷派の持ち物もあるだろう。

公安の捜査が及ばないよう巧みに手を回してカムフラージュしているテロリストの中に、あの男もいるはずだ。


「…念のため聞くけどよ」

銀時が青ざめた顔で笑いかける。

「近藤が、性別は俺の意志を尊重するっつってたよな?」

「言ったけど。お前は俺の求めを拒めねぇ、禁じ手は無しってことになった」

「ちょ、待て! おまえ本気で俺を女にする気かよ!?」

「…それもいいかもしれねぇな」

笑って追い詰める。

余裕のない銀時は悪趣味と言われようが愛おしい。

「そのままのオメェもいいが、女になったらなったで都合いいこともあるんじゃねぇか」

「……オメェさ、なんで俺が海に降りようつったか分かってる?」

銀時がやる気のない死んだ魚のような目を土方を向ける。

「ここ二人っきりだし。俺のがオメーより速いし。逃げて行方をくらますことだってできるんだぜ?」

「そうしたら、向こう岸からこっちを見てるテロリストどもがオメェを拾いに来るだろうな」

土方は静かに笑う。

「逃げるなら海は基本だ。なにか企んでるのは知ってた。けど、オメェは行かねぇよ。行くときゃわざわざ俺に宣言してかねぇだろう」

「…わからねーぞ、そんなの。逃げないと見せかけて逃げるかもしれねーし。俺、裏かくの得意だから。心理戦とかしつこくやる方だからね」

「逃げる逃げる言ってるうちゃ逃げねぇよ。大抵のヤツがそうだ」

「じゃ逃げない」

「助かる」

土方は銀時に手を差し出す。

「もうここはいいだろ? メガネ探しに行こうや。オメェは今は逃げるより、俺たち真選組の手の内で動いていた方が有利なはずだ。メガネのことにしても、それ以外にしても」

行動をともにしようと、差し出された土方の手は銀時が誘われるのを待っている。

「オメェが逃げるときは、俺が逃がしてやらァ」

「………言っとくけど」

銀時は土方の方へ足を踏み出す。

「俺はテメーに借りなんか作らねーよ。……たぶん」


そろって二人は停めてある車の方へ、海に背をむけて歩き出す。




続く

 

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【2012/11/30 21:50 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
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