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【2020/04/07 22:35 】 |
第19話 恋の鞘当ては華麗にすべし 1





「心当たりは?」

「んー、…海。江戸湾13号地の砂浜」

新八の行き先を聞かれて銀時はダルそうに答える。

「お通の楽屋。コンビニの溜まり場。電気街。あとは恒道館とかぶき町だな」

「広い範囲を回ることになりそうだな。…乗れや」

土方は一台のパトカーの助手席を開けて銀時に促す。

銀時は土方の顔を見る。

「なに。コレに乗るの?」

「嫌か」

「目立ちすぎんだろーが」

「人探しにゃ便利だぜ。追跡にもな」

「まさか、オメーがコレ運転すんの?」

「せっかくのドライブだ。運転手は要らねぇだろ。二人っきりでデートと洒落(しゃれ)こもうや」

「…マジかよ」

銀時のやる気のない瞳がウンザリしてパトカーを眺める。

土方はドアを開けたまま銀時の腕を掴む。

うざったそうに土方の手をほどこうとして、さりげなく手首を掴みなおされる。

「ウソでも笑いやがれ。隊士どもの前だ。ちったァ喜んで見せねぇか」

甘やかな表情で銀時の耳に囁く。

「……う、ぁ…!」

慌てて銀時は土方に向き直る。

土方の咎めるような瞳を見て思い出す。

「う…、うん。嬉しい。嬉しいよ、たぶん!」

そういえば熱愛カップルを演じなければならないのだった。

「でもさぁ、…ちょっと落ち着かなくね? デートってより連行されてるみてーじゃね? こんな物騒なモンより普通の車に乗りてーなぁ、ウン、乗りてぇ!」

「あいにくウチにゃこんな無粋なツートンしかねぇんだよ。乗りな」

「ちょ、初デートがパトカーとかふざけんな。トラウマ植えつける気かよ」

銀時は土方に平坦な瞳を向ける。

「だったら歩きで行こうぜ。新八だって公共交通機関しか使ってねーんだからよ」

「なんだ。そんなに車ん中でイチャイチャしたかったのか?」

銀時の首をラリアット気味に引き寄せる。

「公用車だろうが気兼ねするこたァねぇよ。屯所より景色のいい場所で初手合わせといくか?」

「そんじゃ竹刀でも持ってくぅ? お稽古好きだねぇ土方くん。銀さんがコテンパンにノシてあげるぅ~」

「竹刀はいらねぇだろ。自前の道具で事足りらァ」

こめかみに怒りを溜めた笑いを銀時に向けてくる。

「それより他の道具準備しねーと。人気のねぇところじゃ店もねぇし」

「やだぁ、土方くんのエッチ~…ふぐっ!」

のらりくらり返答していた銀時は至近からいきなり唇を塞がれた。

唇が押しつぶされる感触。

驚いて相手を見れば目の前に土方の切れ長の瞳があって睨みつけてくる。

「あ、…ぁむ、…っは、」

触れるだけのキスだと思ったら、しっかり舌を差し込まれた。

屯所の正面門の内側、外の道に面した半分公共の広い場所。

隊士たちの視線は自分たちに注がれている。

「…んぐっ、ぁっ、…らめらって、」

土方の首に手を這わすフリをしてグググっと後ろ髪をつかみ、徐々にキスを引き剥がす。

銀時のキツイ瞳が、離せや、と警告する。

「恥ずかしいのか?見かけによらずウブだな」

ニヤッと瞳が笑い、土方は唇をつけたままそんなことを周りに聞こえるように言う。

「ててて、てめぇっ! ちょ、どこ触って、いっ、…いいかげん、やめろって、…ぉ、願いしますぅぅう…!」

両手を相手の肩に突っ張って後ずさる。

土方は銀時の耳たぶにキスを押しつけ、ギュッと抱き締めてから恋人を離す。

「仕方ねぇな、続きは海に着いてからにしようや。…あと、これ持っとけ」

土方はポケットから取り出したものを銀時に握らせる。

「…携帯電話?」

見ればそれは黒塗りの、使いこまれた携帯電話。

銀時は、あぁ、と思う。

自分の居所の確認だ。

彼らは銀時の首に鈴をつけるつもりなのだ。

「屯所の連絡用だ。どのキーでも長押しすりゃ屯所に繋がる。サイドキーでもな。つながったらバイブで震えるからよ、いちいち取り出さなくても使えるって寸法だ」

「へぇ。…間違えて押しちゃったらどうすんの?」

「そのつど確認が入る。誤報はよくあることだ。気にすんな」

命の危険に晒される彼らはこんなものまで装備しているらしい。

銀時は手の中の物体を眺め、そのまま懐の合わせへ突っ込んだ。

「副長、いってらっしゃい」

隊士たちが敬礼する。

物言いたげな視線があちこちから飛んでくる。

「指示は出しといた。てめぇらキッチリ仕事しろ」

土方は銀時を車に押しこめて運転席に座る。

なかなか副長職というのは忙しいらしい。

急に銀時と出かけることになったため、こまごまとした指示を部下たちに残していた。


『アイツもさぁ…』

銀時は土方と反対側の窓に肘をついて窓の外を見る。

『よく戦況にらんじゃ、噛んで含めるように現場に指示してたっけ』

滅多に声を荒げることはなかった。

いつも余裕の笑みを浮かべて自分の身を顧みない方法ばかり取っていた。

余裕がなくなったのは自分と二人きりのとき。

すべての感情をぶつけるように銀時の生身には容赦がなく、銀時の体内では暴君を極めていた。

─── 高杉……

考えると、他のことが耳に入らなくなって、高杉のことばかり考えてしまう。

高杉とは、単なる旧友の間柄。

戦況の悪化とともに自分たちの接触は薄れ、戦の終結とともに情交する関係は自然に消滅した。

そのあとは交わした約束があるわけでもない。

昔寝てた相手、それだけだ。

会えば口くらいは利く。

迷惑をかけられれば文句を言う。

その程度。

ただ、このごろ夜中に出会うようになった。

犬の散歩に途中から加わってしばらく歩く。

なにということもなく喋る。

大通りに出る前にアイツは身を翻して去っていく。

─── べつに誰かと籍入れたってアイツには関係ねーんだよな

銀時は空を見たまま目を眇める。

車の中、土方と二人きりの空間。

銀時は口を噤み、土方を見ない。

土方も考えごとにまでは干渉してこない。

こうしていると大抵、なにボンヤリしてるんだ?と、いろんな人間に問われる。

自分はそんな顔つきをしているらしい。

しかし土方は銀時が何を考えているのか、おおかた察しているのだろう。


車は屯所を離れ、首都高速に入って江戸湾へ向かった。




続く

 

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【2012/11/30 22:00 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
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