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銀時は衣装の布地を掴む。 「とても触りなれた紋付の手触りじゃないんですけど」 「そうか?」 「ま、まさかたァ思うが…これ、コレ何?」 「白無垢だけど」 「しっ…しろむくぅ!?」 銀時は手を離して後退る。 「なんで白無垢?俺が白夜叉だから?白つながりで手のこんだ嫌がらせですかァァ!?」 「そうじゃねぇ!そうじゃねぇからその名称を出すなァァ!」 「じゃあなんで白無垢?白無垢ってアレだろ、祝言のとき花嫁さんが着る礼服だろ?なんでコレが用意されてるわけ?」 「オイ、危ねぇぜ?」 「んあッ…!」 見えないまま衣装から離れようと後退る銀時を土方が引き戻す。 銀時は畳の上で何かの布地を踏んづける、と同時に背中に別に掛けてある着物が触れた。 「こっちにも着物…? なんだ、こっちが本命の紋付かよ?」 「いや違う。それも白無垢だ」 「白無垢? てことは、予備か。2着用意してんの、なんのために?」 「2着どころじゃねェ。ここには各サイズの白無垢を10着以上取り揃えている」 「じゅ、10着ぅ!? なんでそんなに用意してんの、ここは白無垢バーゲン会場かよ!?」 「だってオメー、当日オメーがどんな大きさになるか解らねぇだろ?」 「………はい?」 銀時は土方の腕に掴まったまま聞き返す。 「言ってる意味が分かんないんだけど」 「当日オメーには薬を飲んでもらう。そしたら体型も変わって、さぞこの白無垢が似合うことだろうよ」 「あの…あのぅ、それは…、」 銀時は片頬あげて引きつる。 「やっぱ、女体化…的な?」 「拒否権は無ぇぜ」 「だっ! ま、ちょ、でも、あのやっぱあ、ああ、アレだ、オメー俺を愛してないのかよっ!」 銀時は土方に顔を突きつける。 「愛してるんならこのまんまの俺でいい筈だぜ、俺がオンナにならなきゃ愛せねーっつうわけェ!?」 「アホか。愛してるよ」 「ん、…んがっ!」 銀時は言いかけた口を中途半端に動かす。 「んじゃ、…んじゃあ、このままで良いだろーがっ!」 「お偉いさんの前で同じ体格の野郎二人が祝言じゃ、カッコつかねぇんだと。こりゃ上からの命令だ。近藤さんが受けた。変更は無ぇ」 「なっ、………なんだよそれ! なにが命令だ、受けた、じゃねーよっ! 見損なったぜこの、…大バカヤローがぁ!」 怒りと焦りの入り混じった声で銀時がなじる。 「おっ、…おまえはっ! 『上からの命令』だけで、俺をオンナにしようってのか!? 俺の意志とか、人権とか希望より、そっちが絶対なのかよ!?」 土方の隊服を掴んで揺り動かす。 「結婚前からこれじゃ先が思いやられるぜ、テメーら『上』にゃ逆らえないんだろ?『上』が俺の手足斬れって言ったら斬るのかよ!? こりゃそういうこったろが!」 「『上』の命令だけじゃねーよ」 土方が言い放つ。 「お前がそうなった方が都合がいい。俺たちゃそう判断したんだ。お前に以前のような戦闘能力がないと知れ渡れば無駄にお前を戦場へ引っ張り出そうとする連中が仕掛けてこねーで済むだろ」 銀時を見下ろす。 「テメーは裏を守ってろ。ガキの世話して、隊士の面倒見て、真選組を支えてりゃいい」
「……ぐッ、」 「テメー…俺を本気でオンナにするつもりか…」 「オンナどころか、下手すりゃガキになっちまうかもしれねぇな」 平然と土方は皮肉な笑いを浮かべる。 「地球人だと年齢設定ができないんだと。適齢期以前の年齢に戻っちまうこともあるらしい」 「…っ、」 「どんな大きさになっても当日は式を挙げて娶ってやる。ロリコンの誹(そし)りでもなんでも受けてやらァ。さすがに幼児用の白無垢は無ぇがよ、チャイナ娘くれーのサイズからなら用意してあるぜ」 「ろっ…ろりこ…、……っそこまでするかァ!?」 「悪いようにはしねぇよ」 悲痛に叫ぶ銀時を土方は抱き寄せる。 「オメーがえらく若返っちまっても、俺たちが全力で護る。もうオメーは刀を握る必要は無ぇんだ」 「そいつぁ御免だな、護られるなんて性に合わねェ」 銀時は腕を突っ張る。 本気でないそれを土方が強く抱き締める。 「たしかに…隊士全部あわせてもオメー1人の戦闘力に匹敵するかどうかかもしれねぇ。けどな、テメーがたった一人で戦ってきたもんを、これからは俺たちが支える。共有してぇんだ。お前の敵は、俺の敵なんだよ」 「あの…悪いけど、オンナになって若返っちまっても俺の方が強いと思う」 「……うるせぇ」 「戦力で考えんならさァ、誰か代役立てて俺の代わりに…」 「オメーを見に来んだよ」 銀時を抱いた腕に力をこめる。 「お偉いさん方も。『岡田』も。攘夷浪士たちも。往年の白夜叉の健在ぶりを…または無力化されたさまを愉しみてぇんだ。オメーじゃなきゃ意味が無ぇ」 「なんでお偉いさんが? 俺のことなんざなんにも知らねーだろ?」 「戦争末期に活躍した攘夷の英雄、それだけで十分なんだよ」 「見世物かよ」 「まあ、そうだな」 攘夷軍の英雄が、田舎の俄(にわか)侍の手に堕ちて封じられる不遇をな、とまでは土方は言わず噛み殺す。 銀時は、嘆息して力を抜く。 「『岡田』…てか、新八は来んの?」 抱かれるまま隊服の胸に顔を当てる。 「追っ払う算段はできてんだろうな? お偉いさんの前だからって仕留めるとか、重傷負わせるなんて余興になったら許さねぇ」 「備えはしてる。『岡田』の戦闘力は超大だ」 銀時の髪に手を添える。 「鬼兵隊も来るだろう。お偉いさんの前で失態は犯せねぇ。客人に怪我でもさせたら俺たち全員の首が飛ぶ」 「テメーらの首、つなげとくためにも…」 銀時はうっすら笑う。
「祝言は無事、お客に満足のいくよう終えなきゃならないってわけか。不興を買うわけにゃいかねーもんな」 PR |
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