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相手の頭を抱きあい、唇をすりあわせ、互いの中身を吸い尽くそうと唇が禁を犯して開いていく。 ああこれで。 濡れた舌もろとも相手の熱が味わえる。 下から抱きつく形で銀時は土方の肩から後頭部を引き寄せる。 密着したまま開通させた唇の合わせめから相手の熱まみれの感触を迎え撃とうと唇から舌が出かかったとき。
廊下に面した障子戸の向こうから騒がしい小声が制止した。 「聞こえたらどうすんだよ、殺されるぞ」 「なんで副長なんだよォ~」 「代わりてェェェ!」
銀時は押しつけていた唇を離す。 熱のあいだに隙間ができる。 応じて土方も動きを止める。 「気にすんな」 「むっ、無理に決まってんだろがッ」 「お前が誰のモンか広まりゃ目的通りだ」 「おまっダレが誰のもんだ?」 小声で銀時の顔に囁きながら唇を押しつけてくる。 さすが集団生活に慣れてる奴は違う。 プライバシーなにソレ?だ。 目を伏せた土方が眉をヒクつかせているのは隊士の盗み聞きではなく銀時の気が逸れてしまったせいだ。 「放っときゃいい。どうせ誰も入って来ねぇ」 「ちょ待て」 銀時は自分たちを伺っている第三者の存在に正気を引き戻される。 自分がこの男と懇(ねんご)ろになったと知られる。 それはあまり、いやかなり不味い。 他の誰に知られたって構わない。 しかしただ一人。 笑いを含んでこちらを振り向く深くて底知れない隻眼の瞳。 あの男にだけは自分が誰かに情をかけたと思われたくない。
銀時は表情を閉ざす。 「祝言には出席すっけど肉体(からだ)はナシだ」 「…なに言いやがる」 「お前のことキライじゃねぇ。すげーキモチィ。けどヤッちまったら俺は…お天道様に胸張ってられねぇんだよ」 「………そうかよ」 潤んで土方を見ていた瞳が、今は睫毛をけぶらせて半眼に閉ざされている。 それでも銀時は土方の腕に、触れる距離にいる。 欲しいものを強奪しないヤツが居るか。 こんな好機を逃すヤツがいたらお目にかかりてぇ。 「んぅぐッ…!?」 抱いていた銀時を畳に落として押さえこんだ。 やっかいな両腕をつかんで畳に押しつけながら銀時の身体の上に乗っかかる。 ぬかりなくもっと厄介な膝を自分の下肢で念入りに封じる。 「な、っにしやがっ…!」 焦って土方を跳ねのけようとするが下からの抵抗などタカが知れている。 遠慮なくその逃げ場のない顔に顔を近づけて唇を追いかける。 逸らす顎に阻まれて捕まらなければ手近な頬を噛み、首を噛み、その襟の合わせから鼻をつっこんで肌を吸い上げる。
思いの外、抵抗できなくて戸惑っている。 全力で暴れた方がいいぜ。 俺は頭ん中で何回こうしてお前を犯したか分からねぇ。 ここは俺の部屋だ。 場所慣れしてねぇお前は不利だ。 このまんま、どんな手つかっても既成事実を作ってやる。
銀時はわめいているが、まだ怒ってはいない。 問答無用でブッ飛ばされないほどには自分はコイツとの人間関係を築いていたらしい。 ただしコイツは解ってねぇ。 俺がどんなにテメェが欲しいか。 触れた唇に一度応えられちまったものを離しちまえるほど人間できても枯れてもいねぇ。
「エッ?」 「諦められねぇんだよ!」 「えっ、ソッ、んなこと言ったってよ、」 「テメェこっち向けよ」 「向いてるだろうがァ!んでテメーにベタベタちゅーされまくってんだろがァァ!」 「そうじゃねぇよ」 「ア?」 「テメェはどこ見てんだ…誰見てんだよ」 「…どこっつわれてもなぁ、」 「いいかげんこっち見ろや…テメェはちっとも俺を見ねぇ」 「見てるよ、ウン。いま頭しか見えねーけど」 「俺が嫌いか?」 「そういう問題じゃねぇよ!」 「逆ギレすんな、そういう問題だろが」 「うるせーよ、ヤッちまおうかな?くれーにはキライじゃねーよ!」 「んじゃヤッちまやいいじゃねぇか」 「でもよしヤッちまおうってくらいには好きじゃねーんだよ!」 「んだとコラ?」 「…痛ッ!ちょあんま吸うな、跡つけんな勝手にィ!」 「うるせェ、テメェもソノ気になったくせに我慢できんのか?」 「そりゃできれば厠行きてぇけど」 「…俺より厠のがマシだってのか」 「いやそんな卑屈な売り言葉、買いたくねぇから」 「~~~ッ、クソがァ!いいから一回ヤラせろやァァ!痛くしねェからよォォォ!」 「痛くねぇワケねぇだろォォ!!あんなトコにこんなモン入れんだぞ、よっぽど好き…物好きじゃねーとできる技じゃねーんだよォォォ!」 「舐めてほぐして腰から脳天までグズグズに溶かしてやらァ、任せろテメェのなら俺ァ舌つっこめっからよ!」 「いっ…いやな図を想像させんじゃねーよッ!」 「アァ?いまので身体熱くなったぜ。考えて感じちまったんだろがァ!」 「てっ、てめッ、羞恥プレイとか冗談じゃねぇ!俺をいくつだと思ってんだ、身体に乗っかられたまま耳元でエロい声で囁かれて感じねーわけねーだろがァ!」 「だからそのままヤられちまえっつってんだァァァ!!」 「そんなワケいくかァァァ!!」
「だいたいおかしーだろうが!なんでヤんなきゃなんねーんだ?オメーらの計画ではお偉いさんを納得させるための祝言つっただろうが。ホントにヤる必要なんかねーんだよ!てかそれを強制ってテメーらソレ犯罪だろ慰謝料よこせ、ハンバーグランチにドリンク付けねぇと、あ、三人分よこせ、ガキどもも腹すかせてるんだよ、それからパフェな!」 「声がデケェんだよッ!!」 土方が叫ぶ。 「こっちだっていろいろあんだ、そう簡単に見破られちまったら意味がねぇ!付け入る隙がねぇくらい、お前がこっちに夢中だって話になってもらわねぇと、おびき出せねぇだろうがァ!いいから黙って力抜いてろや、俺がどんだけテメーに惚れてるか教えてやらァ!」
銀時の抵抗がピタリと止まる。 静かな、揺るぎない声が確認する。 「誰をおびきだすの、オメーら?」 「……あ。」 被さっていた身体がピクッと動きを止める。
土方の視線が銀時を逸れ中途半端に宙を泳いでいった。 PR |
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