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【2020/02/22 02:13 】 |
第72話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

*  高銀話です(連載中)

第72話 気を引いても虚ろな世界(高銀)



「あいつあんなとこで何やってんの?」

銀時が平坦に尋ねる。

「真選組への嫌がらせ?じゃなきゃ祝言に来るお偉いさん狙ったテロ?」

画面に映し出される若めの桂は白無垢に綿帽子。

紫の口紅や暗めのシャドーも似合う花嫁っぷりだ。

「そういやヅラは真選組に捕まっていたな」

高杉が無感動に思い出す。

「ありゃお前と同じ薬で若返らせて代役に仕立てられたんじゃねーか?」

「なんでヅラなんだよ?」

銀時は不服そうに身を乗り出す。

「外見は女みてぇってもヅラだよ?捕まったって真選組の思惑どおりに動くヤツじゃないからね」

「じゃあ惚れたんだろ」

こともげに高杉が言う。

「あの新郎やってる隣りの男によォ」

銀時は画面を見る。

待っているとようやく新郎の顔が映る。

長身で大柄のその人物は土方ではない。

ピシっと正装して花婿然とした、顔面頭部がボコボコに腫れ上がっている傷だらけの近藤。

「ありゃ真選組の局長だな」

高杉が顔をあげる。

「まさかヅラが敵将を射止めるたァ見事という他あるめーよ」

「……いや。ダメだろ」

銀時が画面を見たまま言う。

「だってアレ、ゴリラだもの。人類じゃないもの。ヅラの情人にゃなれねーよ」

「ゴリラだろうが人類じゃなかろうがヅラが良いってんだ」

高杉は目を細める。

「四の五の文句つけたって始まらねェよ」

「ならなんであのゴリラ泣きそうなの?派手にボコられてんじゃねーか」

銀時が画面の近藤を睨む。

「あれやったのヅラじゃねーだろ。お妙だろ。他の女の尻追っかけてるようなヤツにヅラが惚れるわけねーんだよ」

「助けに行くか?」

「なんで?」

クルッと高杉を見る。

「なんで行くの?助けるって誰を?ヅラ?行かねーよ、そんなん」

「ククッ…」

高杉は銀時のふくれっ面を見下ろす。

「そんなに他の野郎に取られるのが気に入らねーか」

「別にィ。俺の助けなんか要らねーだろうしィ。逃げたかったら勝手に逃げるだろーしィ。余計なことしてあいつを喜ばせんの腹立つしィィ!」

「違いねェ」

真選組は桂を丁重に扱っている。

銀時に続いて桂まで奪われたら真選組も難儀だろう。

ネオ紅桜の脅威も去った。

高杉はザッと試算すると救助を放棄して高みの見物を決め込む。

「ほォ…花嫁はヅラだけじゃないのか」

桂の後ろに映ったものを見て、わざとらしく感嘆する。

「景気のいいこった。ありゃオメーんとこの娘じゃねェか」

「…」

「真選組に嫁に出すことにしたのか?」

「してねーよ」

銀時は浴槽のフチに両腕を組んでその上に顎を乗せる。

「なに勝手に人ん家の娘にあんな格好させてんの。保護者代わりの俺になんの断りもなくだよ。アイツの親父に俺はなんて言って半殺しにされりゃいいわけ?」

沖田とともに廊下をしずしず歩いてくるのは綿帽子に白無垢の神楽。

こころなしか沖田はカメラに得意気な目線を向けてくるし、手を引かれた神楽は照れたような澄まし顔で神妙にしている。

「…そういや白無垢がイッパイあったな」

銀時が呟く。

どんな年齢にも対応できるよう用意されていた衣裳。

祝言に参列するだけの予定で盛装していた神楽は、急遽、花嫁役に駆り出されて衣裳を着せられたに違いない。

してやったりの沖田の黒い笑いに透明な純情が混ざっているのを銀時は冷静に眺める。

「真選組もえげつない真似しやがる」

高杉が面白がる。

「ありゃ志村じゃねーか。アイツまで花嫁にさせられちまったのか」

「…え。新八?」

銀時は顔を上げる。

神楽たちの後ろに続いて現れたのは同じく白無垢を着た新八。

眼鏡のないその顔を真っ赤にして俯く姿が初々しい。

隣りの花婿は顔を映さないようにしているが、背格好からして山崎だろう。

「あ~あ、なんつー歩き方してんだよ。そりゃ女の歩きじゃねーよ」

銀時は握っていた拳を緩めて笑う。

どうやら新八は若返ることも女性化することもなく素のまま女装させられたらしい。

身体になんの違和感もないのが丸わかりなほど、いつも通り重心をまっすぐ腰で支える剣術家の歩きをしている。

「…つーかさぁ、あいつら何も考えてないよね」

新八の後ろの光景を見て銀時は浴槽に肘枕を突く。

「ただ人数をカサ上げしたいだけだよね」

サングラスを掛けた顎ひげの長身が白無垢を纏って普通に歩いてくる。

化粧はしているが、もはや『女』に見せようとすらしていない。

長谷川を娶ろうという隊士は、名前は知らないがよく見かける坊主頭の何番隊かの隊長だ。

土方ではない。

そのあとも隊士とその彼女と思しきカップルが入場してくるが新郎の中に土方は居ない。

なにかの拍子にカメラが参列者を映したとき、銀時は立会人席に探していた人物を見つけた。

いつもの隊服をピシリと着こなし、鋭い不敵な眼光には一部の隙もない。

土方はすでに真選組の鬼副長に戻っていた。

「元気そうじゃねーか」

高杉が評する。

銀時は返さない。

なにかを声に出して述べられるほど浅い縁(えにし)ではなかった。

土方の立てた策が邪魔されずに進めばいい。

いま思うのはそれだけだ。

「……あ」

参列者の中に見慣れたポニーテールがあった。

にこにこと機嫌よく式の主役たちを見守る志村妙。

一番先に懇願されて動員されそうな彼女は花嫁の列になく、チラチラと隊士たちの視線を浴びながら親族席にいた。

「ま…そうだよな」

銀時は引きつり笑って近藤のボコられ顔と妙を見比べる。

妙は楽しそうに新八や神楽を見ていた。

式は滞りなく進んだようだった。

荒れはてた中庭はまったく映らなかった。

幕府の高官たちも真面目な顔をして座っていた。

なにを考えているのか、その堅苦しい表情からは窺い知れなかった。

自分 ─── 白夜叉を見ても彼らはあんな顔で参列していたのだろうか。

「体制派のジジイどもが居ねェな」

高杉が告げる。

「おおかた白夜叉が見られねェと聞いてテメェで足を運ぶのを嫌がったんだろうよ」

「じゃ、あそこに来てる連中は?」

「松平片栗虎のシンパだな。それから胸クソ悪い幕臣どもの代理人がチラホラ見える」

「そうか」

とはいえ桂は自分の代わりに屈辱的な見世物にされていよう。

屈辱的つーか、どいつもこいつもボーっとヅラの顔見てるだけだけど。

ヅラは顔だけは無駄に綺麗なんだよな。

しかし。

桂がおとなしく近藤の隣りに座っているということは近藤は周到な配慮をしているのかもしれない。

花嫁じゃない桂だ、などと暴れ出されては手がつけられないだろうから。

「……ま、いっか」

銀時は半笑いのままブクブク腰を落として湯の中へ沈んだ。





風呂から出ると座敷に戻って遅い昼食を摂った。

昼食というか、本格的な料亭の日本料理だ。

エビだの魚だの花だの木の芽だのを、焼いたり揚げたり蒸したりして色とりどりに配している。

寿司やらステーキやらのリクエストは、脇に添える程度だが洗練された品目として取り入れられている。

ほんのぽっちりづつ、ぜんぶ味が違って、しかも激旨すぎて頬の奥が痛くなりっぱなしだ。

「……旨ぁ~!」

銀時は燦然とかがやく特大パフェを箸休めにつまみながら高杉に尋ねる。

「なにコレ祝い膳!?客が来たから特別な趣向とかなんとか!?」

「そんな特別なモンじゃねェ」

高杉は感慨もなく気に入ったものだけに箸をつけている。

「オメーと食うから気合い入れてくれとは言ったがな」

「これが家飯とか、お前ん家はどうかしてんじゃね?」

銀時は高杉が残した分まで一欠片余さず平らげていく。

そんな銀時を見ながら高杉は手酌で酒を楽しんでいる。

喋るより食べる方が忙しい銀時は、なにか話さなきゃと思いつつ深淵な味の世界に没頭している。

給仕の人間はイチゴ牛乳が空になる前にちょうどいいところで注ぎに来てくれる。

湯葉だの筍だのお椀だの、次々出てくる料理は転げまわるほど旨い。

「…でさぁ」

銀時は唐突に話をフッた。

「なんで山小屋に俺を置いてったわけ?」

「…ア?」

「あの素人剣術のドン臭い兄ちゃん…なんだっけ?藤江田君?菅原君?」

「荒巻壮太。天堂藤達の子飼いの道場師弟だ」

「そうそう。あれが役立たずだったのはオメーに変身を解除されたからだったんだな。そのあとアイツの気配が消えてオメーが乗っかってきたから、たぶんオメーがどうにか手を下して始末してくれたんだろうってのは分かったけどよ」

味噌焼きを頬張る。

「結局、オメーは俺を置き去りにして帰ってったんだろ?」

「…」

「なんで俺を連れてかなかったんだよ。そうすりゃ新八の誤解も一発で解けたのによ」

「あの時点では」

歯切れ悪く答える。

「オメーは土方と相思相愛だと思ってたからだ」

「んぇ?」

「荒巻とネオ紅桜は回収した。天堂藤達に釘を刺す材料は押さえた。だが他の野郎を恋しがってるテメーを連れて帰るほど血迷っちゃいねェ、どうか俺を好きになってくださいと懇願するようなみっともない真似ができるか、と思ったのさ」

「けどさぁ!」

銀時が非難がましく叫ぶ。

「おま、あれだけヤッといて…、俺がノリノリで応えてたの一番よく分かってたのオメーじゃねーかぁ!」

「戦争中、俺はオメーに無理を強いた」

高杉は真顔で言う。

「植えつけられた恐怖で、あのくれーの恭順があっても可笑しくねェだろうが」

「お、おかしくねぇって、おかしいだろ、おかしいと思えよ、どう考えてもおかしいィィィイイ!」

銀時は真っ赤になって口ごもる。

「だったらなんで、あの、その…お、オメーが恋しくなかったら、オメーより先に気ィ失って逝っちまうわけねーだろがァァァァ!」

「……そうか?」

「そーだよ!」

「だったらテメーでそう言やァよかったんじゃねーのか?」

高杉が腹立たしそうに銀時を見る。

「人を全否定しておいて逝っちまったのは、身体をつなげても心は思い通りにならねェって完全な拒絶に他ならねェって思うだろが」

「だだ、だからそれは…!」

あんとき、ものすごい格好させられてた。

触手プレイであれこれされて感じちまって。

どろどろになって汚れて、とても高杉に見せられたもんじゃなかった。

「あ、あんまり恥ずかしすぎたから…、」

「俺が俺じゃねェってことにすれば、俺に見られたことにゃならねーってか?」

「そそ、そ、そう、」

ウンウンと頷く。

「だってよ、あんな汚い格好してんの見られたら、まるで俺が股関節ゆるいみたいだろ、高杉に嫌われちまったら、……あの野郎ォォォ、世界を何度八つ裂きにしても飽き足りねーよッ!」

「そりゃ回避できて良かったなァ」

ニヤニヤ笑う。

唇の形が嬉しそうだ。

「んで…、ひさしぶりだったし。オメーがキモチ良くなってくれっかどうか自信なかったし。気ィ遣われるより痛くされた方が慣れたカンジで気楽にできたけど…なにより、他の野郎じゃなくてオメーとヤッてるって思ったら」

銀時は赤面のまま高杉に顔をあげる。

「最高にキモチよくて思わず逝っちゃいました」

「……フッ」

酒を膳に置く。

身を乗り出して銀時に触れる。

「俺も、あんなに無我夢中で腰振ったのは久しぶりだ」

なにか言おうとする銀時の唇に唇を押しつける。

「テメーが愛おしいぜ。身体ァ抜群だしな。顔も好みだ。だがよォ、過去を詫びるならテメーを自由にしてやらなきゃならねェ。あんときそう考えて、前後不覚のオメーを土方の手に委ねることにした」

「だからっ…! ん…、はむっ…」

「志村から話を聞いたのはそのあとだ」

キスで言葉を奪っておいて間近に囁く。

「犬の散歩をしてる暇があったら土方と布団で乳繰り合う方がマシだってな」

「んんッ…!」

「居ない日は井戸の底で水ゴリする、それを元にギャグを捻って雑誌に投稿するってよォ」

「ぁんっ…はっ…、」

「それでテメーの縁談が『捏造』って分かった」

ゆっくり、銀時を押し倒していく。

「テメーの土方への気持ちは、そう見せかけてるだけだってな」

「高杉ぃ…まだ」

銀時は上に乗りかかる高杉を見上げる。

「メシ食ってねぇ」

「あとで食え」

「…んっ!」

「それで病院へオメーを取り返しに行った」

完全なる私事。

兵を動かすわけにはいかないから単身で。

「オメーの気持ちを確かめ、斬り死にしても連れ帰って目の治療をするつもりだったのさ」

「死んだら…、ダメつったろ」

胸元を開けられ、首に吸いつかれて銀時は息を乱す。

「生きる予定のない野郎は…お断りだから」

「人質やら、弱みやら握られて…テメーが本心を偽っているのは間違いねぇ。真選組に囲まれた中でテメーが何言ったって信じるわけにいかねェ」

手で乳首を弄りながら、硬さを示した部分を求めて手が下腹部を探っていく。

「テメーが俺を拒もうと、どんな弁明をしようと…俺はお前を連れて来ると決めた」

「っぅ、ァッ…!」

「だってそうだろう?『井戸の底』で『投稿』とくりゃ、答えは『ウソ偽りの捏造』しかねェ」

「ァッ、んぅぅ…っ、」

「俺とお前、あとはほとんど知る者もねェ符牒を使っての伝言だ…俺の勘違いじゃねェハズだ」

銀時は身もがく。

ゆるく立ち上がった性器を掌でゆっくり愛撫される。

ときおり乳首を噛まれ、声を立てるまで吸いあげられる。

尿道口を開かれながら敏感な亀頭を捏ねられると、すぐに膝が揺れて腰が動き始める。

「だからもう迷わないと決めた。テメーが志村に託したのは、俺への救難要請だ。テメーが何を言おうと…どんな態度を取ろうと、お前を得るためじゃねェ、自分が悔いの海に沈まねェために…やれるだけすべてやるしかねェ」

「はっ…ぁぁあぐっ!」

「もう一度お前の気持ちを確かめて、それが本心だと納得するまで…他の野郎にゃ渡さねェってな」

「ッ、はぅっ…、んぅぅ…っ、」

入ってきた指が中を十分なサイズまで広げていく。

先刻も受け入れたはずのそこは先ほどとは違う抵抗感がある。

身体が違うからか、異物への恐怖と、その奥底に潜む期待のような快楽の源。

子供の身体では感じなかった高杉への欲求が指で弄られるごとに沸き立ってくる。

「そのために万全の陣を敷いた。私情と言われようが構わねェ。自分を救えずになにが革命だ。お前を縛るものから解き放ち、その本心を聞く。それが真選組襲撃の全容だ」

からみつく銀時の腿を開かせてローションを使う。

冷たいそれにヒヤリとしたのも束の間、すぐにローションは二人の体温になじむ。

入り口を十分に慣らしたあと、腰を進めて中を穿つ。

狭いところを突破するまで銀時は息を逃がして耐えている。

そのさまも、くせのある銀髪も愛おしい。

高杉は銀時が目を瞑っているのをいいことに欲望むき出しの顔を歪ませながら穴の奥を犯す。

「すべてじゃなかったな。お前の本心を聞いたら、こうして…」

「ぁんんッ!」

「テメェとひとつになりてェ。テメェのなにもかも、奥底まで俺で埋めつくして貪りてェ…そんな下心が渦巻いてらァ」

「たかすぎっ…、」

銀時は受け入れたものを咥えこんで、きゅうっと締め上げる。

まるで悲鳴のように腰が揺れ、中が締まり、絡んで離すまいとする。

高杉が突くたび銀時が浮かべるのは苦痛の表情そのもので。

なのに漏れる喘ぎはどう聞いても高杉を煽る快楽の嬌声。

「ぎんとき、好きだ…、これからずっと俺りゃ…オメーとともに在る」

「ぅっく、ぁ…離れたらコロスって…言ったよ…な、」

手を伸ばして銀時は高杉の首に腕を回す。

「武士に…二言はねぇ、勝手にくたばったら…っ、コロスから…っ!」

「テメェの手にかかりゃ、本望だなァ…?」

ククッと笑って腰を押しこむ。

銀時は声もなく呻く。

反り返る身体、銀色の髪、ふせられた睫毛も銀色なのが最高に刺激的だ。

高杉はほとんど消えた胸の傷に触れる。

天人の薬の妙な効能で、あのとき負った傷は薄い傷跡に変わっている。

欲望のまま銀時を貪るのに遠慮は要らない。

二人だけの獣の交歓。

「はっ…ぅ、ぅんっ…!」

機を捕まえて銀時が高く弾ける。

「んっ、……ぁあああっ…!」

反ったペニスから高杉の腹へ白濁が飛ぶ。

その裏筋をしごきながら腰を突き、うねりかえる銀時の腹の奥の柔らかい熱襞へ、高杉は欲望の精をぶちまける。

「クッ…、ぎんと、きっ…」

「ぁ…きた、…きてる…、たかすぎの…」

全身で精液を受け止めて、たまらなさそうに白い腰が揺れ動く。

欲しがるその中へ、高杉は最後の一滴まで吐き出して果てる。

「んっ…は、ぁっ…」

満足気な銀時の吐息。

二人は触れては舐めあうキスを交わす。



「テメーの肌ァ、手触りがいいなァ」

「ん…、まあな」

「すきだぜ?俺りゃァ…」

「オメーは俺が好きだよなァ。…俺もだけど」

銀時は気怠い視線で高杉を見つめる。

高杉は一時たりと銀時を離さない。

時間のすぎるまま何度でも睦み合っては絶頂へと身を放ち、また肌を重ねて一番深いところで互いを感じ合う。

食事をし、身を清め、ともに寝入ってはまた触れ合い、愛を告げ、じゃれつき、ふざけては他愛なく戯れる。


たまにテレビをつければ攘夷戦争の特集が流れている。

国を護った英雄たちが取り上げられ、その中で白夜叉の波瀾万丈の生涯も紹介されている。

結末は真選組屯所でのあの爆発。

まるで悲恋のように編集された構成は、攘夷戦争の特集というよりは古典的な恋愛物語のようだ。

銀時の花嫁姿や高杉へのひたむきな表情が、粋と情けを愛する江戸市民に深い共感をもって受け入れられてしまった。


「もうさぁ、俺、このまま万事屋で暮らしてもなんの問題もない気がするわ」

銀時がこぼす。

「名前も坂田銀時で。だって女になっちゃった銀時は過去へ行って子供を産んだんだよ。だから白夜叉そっくりの俺はアイツの子孫でいいと思う」

番組は必ず銀時が過去の世界で子孫を残したことを匂わせている。

おそらく銀時が子孫を名乗り、表を歩いて暮らせるよう真選組の思惑が入っているのだろう。

「ま、幕府さえ黙らせりゃ、世間は他人の色恋なんざ忘れてくモンだ。そのうちオメーが銀時だろうが子孫だろうが、どうでもよくなるだろうよ」

高杉が頷く。

しかし、世間はそんなに甘くはなかった。





10日ほどの蜜月を過ごして銀時は高杉の屋敷を出た。

服装はいつもの黒い洋装に着流しを合わせ、木刀を差している。

もうほとぼりが冷めた頃だろうと高杉のお墨付きをもらって外を歩いたら、すぐに人の目にとまってジロジロ見られた。

ひそひそ話されたり、物言いたげに見られたり、家の奥へ人を呼びにいく者までいる。

銀時は引きつりながら見ないようにして歩いていく。

救いだったのは、物珍しそうな視線が概ね好意的だったことだ。


「あっ、銀時! …いや、えーと、坂田さんの子孫さんで?」

団子屋の前を通りがかると、張っていた店主にバッチリ捕まった。

「お母さん…いやお婆さん?いや、アンタの先祖さんとは昔、ちょっとあってね…」

あったのはツケだけだ。

なのにワケありみたいな言い方をする。

「お代はいいんで、どうぞどうぞ。寄ってってくださいよ!」

「いや急ぐんで」

銀時は丁重に断る。

あの分だと店主の野郎、人をオカズにしやがったな。

 

「あ、銀さん!」

サングラスの無職が手を振る。

どうやら真選組に永久就職とはいかなかったらしい。

「『銀さん』はマズイか。なんて呼べばいい?」

「いいよ、銀さんで」

あの屯所の騒動以来、近しい知り合いには連絡を入れておいた。

事情を説明し、この世に健在であると伝え、いつ万事屋へ戻るかも明かしておいた。

長谷川は変わらぬ銀時の様子に、へらりと笑う。

「じゃあ子孫の銀さんで。…どう、ゆっくりできた?」

「うん。食ったし寝たし。ジャンプ読み放題だし」

「彼氏とよろしくしてたんじゃないの?」

「あたりめーだろ。シッポリだよ」

「いいなぁ。俺なんかもらったバイト代、マシンに吸い込まれちゃった」

「台の選び方がマズかったんじゃねーの。今度オレに選ばせろって」

「イヤだよ、銀さん自分が座っちゃうんだもん」

長谷川にも世話になった。

だが互いにそれを口にすることなく手を振って別れる。

「今度飲みに行こう、銀さんのおごりで」

「ふざけんな」

 

 

「おや銀さん。身体の方はすっかり良いようですね」

かぶき町に差し掛かると高天原の前で狂死郎に遭った。

「どうでした?好きな男のために女装した気分は」

「ぶふっ!?な、なんでそれを…?」

銀時は狂死郎を凝視する。

「まさか。お前、知ってたの?」

「なにをですか?あれは女性になったんじゃなくて、若返っただけだったってことですか?」

狂死郎はあたりを憚って小声で告げる。

「もちろん。たとえどんな姿をしていようと男か女性かの区別はつきます。商売ですから」

「あー…そう、」

屯所で会ったとき、花嫁姿の銀時に対して狂死郎は最初から最後まで浮き足立つことがなかった。

あれは銀時が性転換などしていないと解った上での沈着だったのだろう。

「思った通りの人でしたね。銀さんの恋人は」

狂死郎が会心の笑みを浮かべる。

「なるほど、あの人のためなら真選組の言いなりになってあんな格好で式に臨もうとした銀さんの純愛も分かります」

「いや、あのね、純愛とかじゃなくて」

銀時は訂正を試みる。

「べつにアイツのためってわけでもねーよ。しょっぴくって言われたんだよ」

「見せつけられて、ほんの少し妬けました。あの人にも銀さんにも敵う気はしませんが」

ウィンクして狂死郎はホストらしい軽口に本心を混ぜる。

「私もお二人の幸せを祈らせていただきましょう」

 

 

「有意義だったぞ」

いきなり塀の影から声を掛けられた。

「敵の内情をつぶさに調べることができた。奴等は取引などと称していたが俺にかかればあの程度の警備、赤子の手をひねるようなものだ」

それなりの変装をしていたが、桂は成人男性の姿をしていた。

「まあ、多少の計算外は否めないがアクシデントはつきものだしな」

改めてコホンと咳払いする。

銀時はイラッと青筋立てる。

「聞いてねーよ!テメーがゴリラと恋に落ちたとか、大事なものの中に真選組も入りそうとか、俺にはまったく、なんの関心もねぇ!」

「まあそう言うな」

フフフと笑う。

「ヤツのクセや好みから好きなブランド、行きつけのバー、将軍の護衛予定まで実にたやすく情報を仕入れたのだ。聞きたいか?聞きたいだろう?アイツの喜ぶウィスキーの比率はな~」

「やめろテメェ、本気でそんなものに情報の価値があると思ってんのォォォ!?くだんねーことに俺のメモリを使わせんな、国家機密的なモンが一部紛れこんでる気もするけどォォォ!」

「高杉とは」

押しやる銀時の手をすり抜けて桂が振り向く。

「心が通じたのか?」

「あぁ。……まぁな」

銀時は、動きをとめて桂を見る。

桂が頷く。

「貴様ら二人とも初恋の成就だ。めでたい限りだ、と言っておこう。…して、そんなタイミングで申し訳ないが俺はしばらく姿を消すぞ」

身を翻す。

「あれ以来、なにかと周囲が騒がしくてかなわん。ゆっくり逢引もできんし蕎麦も食えん。というわけで俺への連絡はエリザベスに託してくれ」

「ハイハイ。また行方不明とかになって鬘(ヅラ)だけになって戻ってくんなよ?」

「ヅラ(鬘)じゃない、ヅラ(桂)だ」

言い置いて去っていく。

 


「あ、いたいた、坂田……さぁ~ん!」

花野アナが撮影スタッフを引き連れて走ってくる。

「現代に蘇った坂田銀時さんの末裔の方ですよね!?少しお話を窺ってもいいでしょうか、お名前を窺いたいのですが!」

「あー、俺。坂田銀時です」

さわやかっぽい笑顔で撮影に応じる。

「戦争中、数奇な人生を送った祖母と同じ名前なんですよ~」

「そうなんですか」

花野アナの表情がホッとしたように親しみを浮かべる。

「歴史は変わったということですね。貴方のご先祖さまは、この時代から過去へ時間を超えた攘夷戦争の英雄と呼ばれた人なんですよ、なにかお聞きになってましたか?」

「ああそうなんですかぁ」

申し訳なさそうに言う

「なんでも祖母は最初の出産のあと肥立ちが悪くて、そのまま…だから詳しい話は聞いてないんすよ」

「まぁッ、そうなんですかッ!?」

ものすごい勢いで驚かれる。

「坂田さんが…あの人が、そんなことになったなんて…」

言葉に詰まり、見る間に涙を滲ませる。

「それでも、お子さんが生まれたということは少しは幸せな時間を過ごしたと考えていいんでしょうか…?」

「あ~、そう聞いてますよ」

銀時は花野アナの涙に面食らって言い繕う。

「なんか祖父とはラブラブで~、ラブラブすぎて周りが手がつけらんないほどラブラブで~とにかくラブラブ~ってことですから」

「…そうですか」

花野アナが目を拭う。

「これから坂田さんはどうされるおつもりですか?」

「どうするもなにも俺は前からずっと、かぶき町で万事屋銀ちゃんを営業しています」

高杉と練った設定通りにカメラに向かって言い放つ。

歴史は変わった。

変わった世界での万事屋銀ちゃんの主は子孫である坂田銀時だ。

皆が知ってる銀時は、子孫の方の銀時だったのだ。

そう言いくるめてしまえば多少の齟齬は押し通せる。

ハッタリをかませて力説すると花野アナはすんなり了解した。

「そうですか。そうですよね、坂田さんにとっては最初からこの世界が御自分の世界ですよね?」

花野アナはカメラに微笑む。

「過去へ舞い戻った花嫁、坂田銀時さんは子孫の方の中に生き続けています。過去での苦労、そしてロマンスはいかばかりだったでしょうか。私たちの想像を裏付けてくれる資料はありませんが、子孫の方がこの時代に生きていらっしゃる、それが時間を超えた花嫁の愛の証のように思えてなりません。以上、かぶき町から花野がお伝えいたしました!」

 


「おかえり、銀時」

げんなり疲れきった様子で万事屋の階段をあがろうとする銀時に、お登勢が出てきて声を掛けた。

「ずいぶん肌ツヤがよくなったじゃないか。栄養も幸福も充実してるようだね」

「ババア…」

「滞納してた家賃は、どこからともなく払い込まれたよ。しかも二重にね」

「え。どういうこと?」

「アンタのために…」

お登勢は手にした煙草を吸いこんで溜める。

「二人の男が別々に支払ったってことさね」

「マジかよ。正気の沙汰じゃねーよソレ」

「当分、家賃の心配はしなくてよさそうじゃないか。あの男、ハッキリ言ってったからね。アンタをもらうって」

お登勢が笑う。

「多少、二階でドタバタしてても気にしないよ。あたしゃあの男が気に入っちまった」

「いよぅ、銀の字」

絶句している銀時に、追い打ちをかけるように源外がお登勢の店から顔を出す。

「目は治ったみてぇじゃねぇか、よかったなぁ!」

「じーさん、アンタなんでこんなとこへ…!?」

「今日、オメーが帰ってくるっていうから祝杯をあげによぅ。どうだ、お登勢んとこで飲んでかねーか?」

「わかった、わかったから!いいから引っ込め!」

銀時は急いで源外を店へ押し戻す。

「ジジイ、テメーはお尋ね者なんだよ、ちったぁ自覚を持て!」

「銀ちゃあん!」

二階から子供らが降りてくる。

「待ってたのになんでそっち入っちゃうアルか?!」

「おかえりなさい、銀さん」

新八が曇りない笑顔で迎える。

「高杉さんから聞いて…僕ら、嬉しくて…!」

「あらあら、すっかり銀時ちゃんじゃなくて銀さんになっちゃったのね」

二人の後ろから妙が顔を見せる。

「残念だけど、まあいいわ。歓迎会は、どうせならお登勢さんのとこでやらせてもらいましょうか?」

「いいね、今日は臨時休業だ」

「主役はオメーだぜ、銀の字!」

「タダ酒ほど旨いもんはないカラネ」

キャサリンが酒の用意をしている。

「ソレハいいけど、誰が金を払うンダヨ!」

「ちょっとまて、歓迎会ってなに!?」

銀時はじゃれついてくる子供たちに引っ張られて暖簾のかかってないお登勢の店へ入っていく。

「オレ普通に帰ってきただけなんだけどォ!」

「普通じゃないですよね。銀さんが出てってから、やっとの帰還ですよね?」

「そういや俺りゃ大将から礼金もらっちまってよぉ、今日はこれでパァッといくかぁ?」

「じゃあとっときの酒を出すよ。銀時の成婚祝いさね」

「いや、それは…」

銀時はゴクンと息を飲む。

「だから、俺とアイツは世間の騒ぎが収まるまで隠れてただけでェ、身体のこととかもあって疲れてたしぃ、それ以外テメーらが考えてるようなことはなんにもっ…!」

「ここ10日、くんずほぐれつヤッてましたって顔してなに言ってるアル」

神楽が銀時をカウンター席に座らせる。

「顎とんがってるヨ、銀ちゃん」

「ちょ、神楽!そーいうの言うんじゃありませんん!テメーこそ沖田とナンもなかったんだろーなァ!」

「ないアル」

「どっちだァァァ!?」

 

「おっ、ありゃ旦那たちじゃねーですか」

黒い隊服の集団が歩いてくる。

隊士を引き連れた沖田と、その隣りに土方。

真選組の市中見廻りは昼のこの時間、かぶき町に差し掛かっていた。

「元の身体に戻ったよーだな。軽くて速そうな旦那とも戦ってみたかったけど」

「戻らねぇわけねーだろ。そんなだったらあんなに苦労した甲斐がねぇ」

スナックお登勢へ入っていく銀時の姿を見て土方は憮然と言う。

「仕事中だ。もう行くぞ、総悟」

「土方さんだけ行ってくだせェ、俺たちは祝賀パーティに呼ばれてくるんで」

「やめとけ、平賀源外もいるんだ。話をややこしくするんじゃねぇよ」

「じーさんにも世話になりやした。礼儀知らずの土方さんに代わって俺が挨拶しときやす」

「………勝手にしろ!」

土方が踵を返す。

「オイ皆、総悟を置いて屯所に帰」

言い終わらないうち、隊士たちは沖田と一緒に駆け出していく。

酒にも馬鹿騒ぎにも銀時にも目がない連中。

「テメーら、午後の給料差っ引いとくかんなぁ!」

土方が彼らの背に浴びせる。

聞こえているはずなのに脅しが効く隊士たちではない。

「ったく、なんだってんだ…」

一人、取り残された土方は見回りを続ける気にもならず、煙草が吸える場所を求めて歩き出す。

ポケットの中の煙草を掴んだまま水路の上にかかる橋の欄干にやってくると、ようやく煙草に火をつけて一服する。

銀時が消えたあと、真選組の祝言は問題なく終了した。

独身者の多さを憂う幕府の役人たちを、とりあえず黙らせることに成功した。

白夜叉不在の咎めを覚悟したが、しかし幕府は土方を腫れ物に触るように扱った。

目の前で花嫁を奪われて失恋に傷心の男。

彼らの目に映っているのはそんな痛々しい姿なのだろう。

好都合だが。

実際、あれからなにをやる気もしない。

銀時のためとか、賊をおびき出すためとか、幕府をごまかすためとか、いろいろ理由をつけたが所詮自分は銀時に恋い焦がれていただけだ。

銀時に、自分とともに恋に落ちてほしかった。

既成事実を作ってしまえばひょっとしてそんなことにならないかと期待し、ヤケクソで「要求を拒否することは認めない」と条件をつけたが、叶わぬ恋だった。

新居で初めての晩、自分か高杉かどちらか選べと銀時に迫って、自分は拒否された。

あのときありえないほど目が腫れて、とても人前に出られなかった。

目の見えないアイツを流血覚悟で襲う選択もあったが。

自分で傷口を広げるような真似はさすがにできなかった。

銀時にはその自制心を『布団の中では最強』などと称されたが。

なんのことはねぇ、自分で自分の腹をかっさばきたくなかっただけだ。

「全部終わったら、帰してやるつもりだったんだぜ?」

いない銀時に呟く。

ふと思い立って懐から取り出したのは一枚の写真。

屯所の庭で、花婿の自分と白無垢の銀時が中央に映っている。

隊士たちの笑顔。

自分も表情を作りながら、必死で視力のない銀時の身を気遣ってあたりを睥睨していた。

残っているのはこれだけだ。

一枚撮ったところで賊の襲撃を受けた。

目を細めて銀時を眺める。

見えないながら健気に前を向いて花嫁らしい仕草をしていた銀時。

愛おしくないはずがない。

いま銀時の名を、姿を思っても身体が熱くなる。

けど。

「……テメェは帰してやらなきゃな」

高杉のもとへ。

未練を残したってしかたない。

土方は写真を掴み、まっぷたつに破る。

「……!」

自分は写真の銀時もろとも引き裂くつもりだった。

しかしちぎれた写真は土方を境に破け、銀時だけは奇跡的に全身無傷で残していた。

「笑えねぇな…」

銀時が自分に嫁ぐために装った美しい白装束を見て、それを誰にも見られないよう手の中に握る。

咥えた煙草の横から煙を吐きながら、土方は小さく笑んだ。

 


続く

 

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【2012/10/13 16:53 】 | 気を引いても虚ろな世界(高銀) | 有り難いご意見(0)
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