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* 高銀話です(連載中) 銀時は真近な少年の顔面を掴む。 「本体どこだ、新八の本体!?」 「この忙しいのに、そのボケやらないと気が済まないんですかっ!?」 「だって大事なところだろ?新八かどうか。もしかしたら別人かもしれねーし」 「僕ですよ。コンタクトレンズで変装してたんです。近藤さんに頼んで、ここに潜り込むためにね」 「コンタクトレンズぅ? そんなの眼鏡掛け器ですらねぇじゃねーか! 認めないよ、俺はお前が新八だなんて!」 「すいません、今そのボケにかまってるヒマないんで」 「お前、どこにいたの? 何してたの? んでどっから出てきたんだよ!?」 「詳しい話はあとにしましょう」 「あとにしましょう、じゃねーよ! 勝手なことして行方不明になっちまうからどんだけの人間が心配したと思ってんだ!」 「もとはといえば銀さんが悪いんでしょう、こんな結婚するなんて言い出すから!」 「おまっ、ふざけんな! お前をアレにさせたのは俺なんじゃねーかってさんざん思いつめたんだからな、今ここでハッキリ聞かせてもらいますぅ!」 「そんなこと言ってる場合ですか、目の前に『岡田似蔵』の変身体がいるんですよ!?」 「この期に及んでウヤムヤにする気は無ぇ! 新八、お前、俺の結婚話を潰すためにアレに変身したのか? すべては俺にそういう欲求をぶつけるためだったのかよ!?」 「違いますよ! たしかに結婚には反対しましたけど、なんで僕がアンタにそういう欲求ぶつけなきゃならないんですか!」 「え、だってお前…俺に惚れてるんじゃないの?」 「僕のはそういうんじゃありません! 『ネオ紅桜』の中枢幹は弄ってましたけど、それは鍛錬に使えないかと思っただけで、変身なんかするわけないでしょう!」 「鍛錬? んじゃあ、あれ、お前じゃねーの!? 俺にいろいろしてきたのって…ま、まさか…」 「僕が変身してやったと思ったんですか。目の前で『紅桜』の最期を見届けた僕が『ネオ紅桜』なんかに手を出しませんよ!」 新八が言い切る。 「僕は『ネオ紅桜』で変身したことはありません。だいたい、専門家でもない限り普通の人間に変身なんて無理ですよ」 「そう…か。アレ、お前じゃなかったんだ」 銀時は深く息を吐く。 「んじゃ、後悔させてやるとか、道具を用意してたとか言ってたのは?」 「オモリとか竿とか、家で自主トレする道具です。こないだ銀さんが『紅桜』に本気になってたの見て、あのレベルで特訓すればアンタに本気になってもらえるかなって『ネオ紅桜』も手に入れましたけど、結局なんにも使えなかった」 新八は照れた声で告げる。 「僕はアンタに剣の稽古をつけてほしかったんです。身の程知らずなのは解ってるけど、一度くらい…パワー全開の銀さんと戦ってみたかったから」 「そっ…、」 銀時は瞑った目に力を入れる。 「それでこの騒ぎィ!? ちょ、おま。そーいうのはクチで言やいいだろーがぁ!」 「クチで言ったってアンタ特訓とか絶対してくれなかったじゃないかぁ!」 「とにもかくにも、あの泣けるインポ野郎はオメーじゃなかったんだな!?」 「なんですかその不名誉な称号ォ!」 新八が目を吊り上げる。
「なんのことか知らないけどッ、アンタのただれた交友関係を僕に当てはめないでくださいよ!」 妙が柵のもとから呼びかけてくる。 「自分の弟とはいえ眼鏡がないとイマイチ誰だか解らないわ。いつのまに真選組に居たの? 近藤さんも御承知だったんなら、志村家に連絡のひとつもないってどういうことかしら?」 「すみません、姉上」 新八が声を張り上げる。 「僕から近藤さんに頼みこんだんです、姉上にも内緒にして欲しいって」 「あら。それなら私がこんなところに乗りこんでくる必要は無かったってこと?」 ころころと妙は笑う。 「そんな勘違いをした覚えはありませんよ。かくなる上は新ちゃんが嘘を本当にしてしまえばいいのよ」 「あ、姉上!?」 「新ちゃん、銀時ちゃんを志村家の嫁として連れてきなさい。それなら家の敷居をまたがせてあげても良いわ」 「そんなの無理に決まってんでしょう! 銀さんはね、…うわあっと!」 怪異が近藤と土方を掻い潜って触手を突き刺してくる。
間一髪、新八は銀時もろともそれを避ける。 花野アナがマイクに叫ぶ。
「狙いは花嫁のようです! あの禍々しいカラクリまみれの巨大な男が、花嫁をどうしようというのでしょうか!? 真選組との戦闘が続いていますっ!」 『岡田』の動きを押さえている近藤が振り返る。 「俺ごとで構わん、こいつを撃て!」 「近藤さん!」 「トシは最後まで銀時を守れ、いいな!?」 「しかし…!」 「コイツを足止めせんことには、どうにもならないんだ! こいっ、新八君!」 「………わかりました!」 新八が意気込みを見せる。 背中に担いでいた銃器を下ろして構える。 気配に、銀時は新八から距離をとって下がる。 「あ。…なぁ新八…、手が空いてたらでいいんだけど…オマエやっぱ…、アイツんとこ居たの?」 「アイツって誰のことですか?」 「…うぐ、」 「ウソですよ」 「て、てて、てめっ!」 「『岡田似蔵』の変身体を仕留めたら全部お話しします」 「今話せ。どうせクチは空いてんだろ」 「銀さん、緊張感なさすぎですよ」 「だってなんにも見えないんだもの」 「見えなくたって、アンタ狙って触手向かってきてんですよ?!」 「なんで俺なんか狙ってんだよ。やっぱ生きてたのか、生きてたんだな、あの花粉症リーゼント野郎」 「岡田似蔵…のことですよね?」 「ああ。アレがトチ狂った新八じゃねーなら、ピンポイントで俺を標的にしてくんのは野郎しか居ねーだろ」 「いやそれは…、危ない近藤さんっ!」 業を煮やした怪人が近藤に触手を向ける。 構えた銃の狙いを迷っていた新八は、迷う猶予もなく援護の引き金を引く。 ボシュッ…と低い音がして粘調性の白い捕獲弾が発射される。 『グワハァァァァァ…!』 狙い損じることなく捕獲弾は怪人の片足に絡みつく。 「っ、撃てーっ!たたみかけろ、動きをとめろォ!」 近藤が屋根の上の狙撃手たちに命令する。 怪人の上半身がグラリと揺らぐ。 怪人めがけて飛び交う捕獲弾、被弾を避けろと近藤に押しのけられる土方、怪人を足止めしてもろともに捕獲弾をかぶる近藤、銃を降ろし傘の元で銀時を護ったまま身震いする新八。 『グォ…グハァァァ…、』 白い弾が撃ちこまれる。 怪人は着弾ごとに身動きが取れなくなっていく。 キャバ嬢もホストも長谷川も、まだ逃げずにいる者たちが物陰から捕縛劇に息を呑んでいる。 観衆の言葉にならない声援が結実したように『岡田』は蜘蛛の巣に絡めとられた昆虫さながら地面に手を突き、ついに四つん這いの格好でその場に固めこまれた。 「やったァ!」 沖田らと地面に固まっている神楽が勝ちどきをあげる。 「銀ちゃんに酷いコトした犯人を捕まえたアル!」
銀時は新八の腕から踏み出す。 「んじゃもう俺はお役御免てこと?」 「え?どういうことですか、銀さん」 「どうもこうも、俺りゃ最初っから辻斬り捕まえるまで協力…いや、そんなことよりどうなんのコレ? まだやんの、結婚式?」 「できりゃ続けてぇな」 銀時の傍らに、どうやら無傷の土方が歩んでくる。 「オメーの心がどっち向いてるにしろ、俺りゃ何度でも求婚すっからよ」 「…祝言には出るわ。オメーらの体面もあるだろーから」 「そいつァありがてぇ」 「でもさ…これって、ものすごい惨状なんじゃね? 見えなくても解るんだけど」 銀時が中庭全体へ顔を巡らせる。 ベチャベチャの地面、縫いとめられた怪人、負傷した身動きとれない隊士たちに、一塊となった神楽、沖田、桂。 屯所の長塀にはエリザベス率いる攘夷党の志士が桂を救出しようと真選組の隊士に小競り合いをしかけている。 「ぐお、ちょ、くっついちゃった!くっついちゃったよォ!」 近藤の下半身が粘着弾に巻きこまれている。 「まあカワイイ。庭にゴリラ型の灯籠を置くなんて、現代式庭園の最先端ね」 妙が、にこやかに笑う。 「もう一生ここに置いといてくださいね。剥がす必要ありませんから」
「お…お妙さァーんっ!」 桂が嘆息する。 「まあいい。これを早くなんとかしてくれ。ネバネバを取る方法があるのだろう?」 「あるにはあるが、こんな大量の捕獲剤を溶かすほど解除液があったような無かったような」 「なんだと?パクられるのはともかく、貴様とリーダーを背中に乗せて暮らすのはいくら俺だとて御免被るぞ」 「俺もケツの下にテメーがいちゃ落ち着かねーや。オイ早くなんとかしてくれィ」 「ワタシ平気アル」 神楽が唯一動く足先をバタバタさせる。
「お腹すいたヨ、とりあえずメシもってくるヨロシ!」 長谷川が和傘のもとへ駆け寄ってくる。 「真選組に居たの!?まー、ヤバいことになってなくて良かったけどね」 「長谷川さん」 新八はその長身を見上げる。 「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」 「いや、いいよ。俺なにもしてないし。君の活躍で事件も解決したみたいだしね」 安堵して長谷川は土方の傍らの銀時に向く。 「銀さん、見えてなかったの?」 「そうだよ。見えてるカンジでいこうと思ったんだよ」 「また無茶して~…てか、オマエ…」 長谷川が綿帽子の中へグラサン面を寄せる。 「思ったとおりオンナになったら可愛いね。男のときより桁違いにハクいわ。これ嫁にするなんて副長さんが羨まし…ばふっ!」 「テメエッ!人をコケにしやがって、許さねーぞコラァ!」 白無垢の袖から手が出たと思ったら長谷川の両襟を掴み、肘と腰を使って長谷川の体を跳ね上げ、きれいに長谷川を放り投げる。 銀時の拗ねたような表情、赤い唇、こちらを睨む目つきが色っぽい、なんて喜んでいたら長谷川は頭から池に突っこんでいた。 「ぶは、ボシャァーッ!」 水の中で長谷川が手足を、大袈裟なほどバタつかせる。 「誰がハクいスケだ。バックシャンだ。オレは前も可愛いですぅー!」 「あ、あぶっ…! テメ、やりすぎだろ銀時!」 土方が不自然に慌てて長谷川の救出を部下に命じる。 「オイ、4~5人でかかれ。スイッチを切ってからな」 「はっ!」 部下が頭を下げる。 山崎がどこかへ走っていく。 それほど深い池でもないのに長谷川は足がかりを探せないのか全身が水に浸かったまま、もがいている。 新八は恐れをなして銀時に耳打ちする。 「ホントに見えてないんですか、銀さん…?」 「見えてねーよ。なんで?」 「いえ。見事な投げ技だったんで」 「そんくれー、お前だって目ぇ瞑ってできるだろ?」
「無理です」 花野アナが晴れやかに叫ぶ。 キャバ嬢やホストの喝采も響いている。 「花嫁は無事ですっ! 最後まで花婿が護りきりました! しかし大勢の隊士の方が負傷しておられます! 局長さんと何人かの方がセメントのようなもので固まってしまいましたが、あっ…いま隊士の方たちが局長さんをセメントの中から救出しようとしていますっ」 庭の様子を中継していく。 撒き散らされた捕縛弾、くっついて動けない近藤や桂たち、打撲や骨折に座りこむ隊士たち。 写真撮影するはずだった池のほとりは乱雑に踏み荒らされている。 「晴れの日に、こんな強烈な出来事を体験して花嫁はどのようなお気持ちでしょうか。恐ろしい事件でしたが、お二人の絆はますます深まったのではないかと思います。花嫁にとって一生忘れられない結婚式になりそうです!」 カメラが人物を写しながらスパンしていく。 攘夷党の志士たちと真選組の小競り合いへレンズが向いたとき。 『それ』が写った。 「エッ?」 カメラマンが最初に見つける。 ADも気づいて声をあげる。 「あれッ!?」 「見てください、あっち!」 集音係が、また別の方を指差す。 きゃああああッ…と金切り声があがる。 妙が不安そうに見上げる。 「あれは…!?」 狂死郎が庭を囲む屯所の塀や建物を見回す。 屋根の上、塀の上、屯所の外の電柱など、この場所を見下ろすことのできる場所に『それ』たちは凝然と立っていた。 多少の背格好の違いはあるものの、刀とカラクリを腕に生やしたサングラスにリーゼント、皆一様に鼻を鳴らして屯所の匂いを嗅いでいる。 四体いた。 『ネオ紅桜』で変身した『岡田』たち。 それが今まさに触手を生やして庭へ飛びこんでこようとしている。
新八が銀時を後ろにして八方へ構える。 土方は唇を噛む。 戦力となる隊士はほとんどいない。 民間人を逃がすのが精一杯だ。
「クハッ!…ずいぶん顔色が悪いじゃないの、真選組さんよ」 そのとき、長塀から新たな攘夷志士たちの集団が現れた。 頭目は長い総髪を後ろに流した機敏な身ごなしの男。 ガラの悪い荒くれ者の中で、ひときわ洒落た着物で毛皮をアクセントに肩から掛けている。 「こんにちは、白夜叉。迎えに来たよ?」 男ながらに手入れされた眉毛、生え際に入ったソリコミ、爬虫類系の目鼻を歪ませて銀時に笑いかける。 「真選組と結婚なんて許さないさ。貴方にはそれなりの相応しい男が必要だ。そう、例えば俺のような?」
「むむっ、貴様ら」 同じ塀にいた攘夷党の志士たちが現れた者たちを敵視する。 「『爆牙党』一派かっ!?」
「…ヅラ、あれダレ?」 銀時が尋ねる。 「『ばくがとう』ってなに?俺をディスってんの?『糖分』への挑戦?」 「過激派攘夷集団『爆牙(ばくが)党』、彼らは義のない戦いぶりに眉を顰められる新興の一派だ」 桂が地面にくっついたまま答える。 「大声で貴様に恥ずかしい告白をしてるのが天堂藤達(てんどうとうたつ)。六角事件で死んだ創界党の天堂紅達(てんどうこうたつ)の従兄弟だ」 「藤達?六角?知らねーよ、そんなん」 「だろうな。ヤツは昔日(せきじつ)の白夜叉を崇拝していてな。過激な白夜叉ファンクラブの会長といったところか」 「で。あいつなにしに来たわけ?」 「お前の略奪だろう。なんせ、あの藤達はな…、」
桂が言い終わらないうち藤達の背後からヌッと『岡田』が進み出る。他の4体と比べても充実して馬力のある警戒すべき個体。 「『ネオ紅桜』って知ってるかな? そうそう、オリジナルの岡田似蔵の情念が強すぎて皆、白夜叉を犯しに行っちまうヤツラのこと。今日は白夜叉の白装束を嗅ぎつけたのか全員集合してるな」 藤達は屯所を見渡す。 合計5体の『岡田』がヨダレを垂らして狂気を宿している。
「適合したのが意外にもこれだけだったけどな、江戸を手に入れるには十分さ。あとは白夜叉、貴方が俺の手に堕ちてくればいい。松陽の弟子、攘夷の鬼神が我が手にあれば皆、さすがに解るだろ。俺に逆らう大義なんか無いってな」 桂が付け足す。 「アイツが辻斬り暴行事件の黒幕だ」 「………」
銀時は藤達の居る方向をむいている。 藤達が冷淡な笑いで命令する。 「さあ、皆。俺の愛しい白夜叉サマをここまで連れてきて?」
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