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【2020/02/22 02:16 】 |
第71話 終章6





「…ぅ」

銀時は高杉の手を掴む。

引き寄せられて身体が浮き、脱いだ襦袢ごと高杉に抱きかかえられる。

「ちょ、ヤッ…!」

身を捩って降りようとする銀時の動きを封じたまま高杉は廊下の一方へ歩き出す。

バタバタ足が宙を蹴る。

その太腿が廊下の暗がりに白く浮かび上がる。

背中から腰に襦袢が回されている。

高杉の肩に縋りながら銀時は硬い胸に腕を突っ張る。

「もう見えてるから!自分の足で歩けるからヤダッ!」

「押さえといた方が良かねーか」

高杉は平然と笑う。

「ケツから滴らせて歩くってのも悪かねーがな」

「ちょ、そーいう問題じゃなくて」

銀時が、むくれる。

「運ばれんの好きじゃねぇって知ってんだろ!?」

「……あぁ」

高杉の調子は変わらない。

「覚えてる」

「なら、おろせよ」

「怖ぇか?」

「…、」

「トドメを刺されると思ったら両手両足括られて連れてかれたんだったなぁ」

「その話はいいっての」

「俺がお前を置き去りにしたあと捕まったんだろう?」

「関係ねーよ」

「それを聞いても俺りゃオメーが自力で帰還したことに満悦して、オメーがどんな辛酸を嘗めたか思いを馳せることもなかった」

「そんなんどーでもいいしィ」

「なァ、銀時」

銀時を抱く高杉の腕がきつくその身を掻き抱く。

「すまなかったなぁ、お前をズタズタに傷つけて。お前にも人としての限界や押し殺しちまう感情があるってこと…お前を偶像に仕立ててた俺にゃサッパリ解らなかった」

「…」

「これからお前が俺にその身を預けられるよう、一生かけて務める。お前のすぐ傍で信頼を勝ち取りてェ。俺にその機会を与えちゃくれねーか」

「信じられるかよ。テメーの言葉なんか」

高杉の二の腕をグイと押す。

「さんざんバカだなんだ人を罵りやがって」

強い瞳で高杉を見据える。

「俺がテメーの戯言を信じると思う?それが口先だけじゃないって解るまで、またどんだけ踏ん張らなきゃならねーと思ってんだ」

「銀時…」

「お前はさ、俺が思いつかないような絵空事を、まるで手の届く現実みたいに言う。すっかりその気にさせられてお前の言ったとおりに手ぇ伸ばしてみると、お前はもう遥か遠くを向いてる」

つらそうに口元に笑みを浮かべる。

「お前の魅惑的な囁きに心踊らせても、結局は落胆して委細飲みこむことになる。繰り返せば諦めを覚える。お前との関わりはさぁ、俺にとっていくら気ィ引かれても虚ろな世界でしかねーんだよ」

「…そうか」

「今は俺が大切、みてーなこと言ってっけど。人間そんなに変わるもんじゃねーし。手に入ったらどーでもよくなるだろーし。そのうち俺が思ってもみないモン目指して突っ走ってっちまうかもしれねーしな」

「…そうだな」

「お前はテメーの信念にしがみついて世界ぶっ壊すとかいって派手にやらかして、なんやかんやで玉砕して人の言うことも聞かずに一人で納得して逝っちまいそうじゃね?」

「……言葉もねェ」

「だから、オマエは止めとけって…ヅラが」

「ア?」

「ヅラだけじゃねェ、会うヤツ会うヤツお前を選ぶとロクなことにならねー、命すり減らして死んじまう、あんなヤツのどこがいい、物好きも大概にしろって怒るわ、笑うわ、呆れるわ」

「んだと?」

「だからさぁ、俺は言ってやったんだよ。テメーら全員余計なお世話だって、高杉はたまんなく可愛いんだって!」

「…かわいい?」

「そう。高杉が下準備と根回しに苦労しながら、さも涼しい顔して荒唐無稽を実現してみせるときにする、ちょっと得意気に結んだ唇の上がり具合とか。高いとこ登ってオレ一番高ぇ~ってワクワク喜んでる顔とか。いくら見てても見飽きねーよ」

「心外だ」

「あーもう、なんでオマエなの? なんで俺オメーみてぇな野郎に惚れちゃったわけ!?」

「…なんでだろうな?」

「バーカバーカ!誰がテメーなんか!…チクショー、あぁバカは俺ですぅ!」

悔し気に睨みながら拳を振り上げる。

勢いと不釣り合いな弱々しい連打を高杉の胸元に見舞う。

「お前の傍にいたら命がいくつあっても足んねェ。何度心が引き裂かれるか知れねェ。でも面白いんだよ!お前の傍でお前を感じて一緒に居んの好きだし、匂いも感触もこんな好きなヤツいねーし、命のやりとり含めてオマエといるのが俺は最高にワクワクすんの!」

「身に余らァ」

「体力だってあの頃のようなわけにゃいかねぇ。誰の傍にいれば楽ができるか重々存じあげてる。でもなァ、身体が言ってんだ。無風の海みてーな安穏は窒息しそうだって。心が悲鳴あげちまうんだよ」

高杉の僧服の乱れた襟に顔を擦り付ける。

「お前が誰を好きになろうが知らねぇ!どんな仕打ちされようが変わらねぇ。俺が見て触ってひとつになりたいのはオマエだけ、俺の心が決めたことは俺自身にだって曲げられねーんだ」

「銀時…好きだぜ?」

懐のぬくもりを抱きしめる。

「お前が俺に抱いたその境地、今度は無にしねェ。いつも報いずに思いの潰(つい)える虚しさばかり突きつけちまったなァ。恐縮の至りだ。…悪かった」

「高杉ぃ…」

「恋心を自覚したのはお前が戦(いくさ)を去ったあとだ。だが今更、どのツラさげてお前に会える? 迷う俺にアッサリお前は以前と同じ顔で笑った」

思い返して目を伏せる。

「お前は俺が傍に寄ることを許した。謝る言葉もなく取り繕うだけの俺に夜毎、顔をあわせ犬を連れて散策するのを拒まなかった。あの犬は俺にとっちゃ恩人でね」

定春は吠えなかった。

高杉に擦り寄っていった。

まるで銀時の心を読んだようで、なんだかなー、だったのを覚えてる。

『これがオメーの白い獣か?』

高杉は臆することなく定春を見上げて匂いを嗅がせた。

『たいそう美しく利発じゃねーか。どうだぃ?今度俺と…』

定春に笑いながら持ちかけた。

『江戸の町ん中ァ、夜明けまで走り回らねーか?』

聞いて定春はビックリして高杉を二度見してた。

グラっと心奪われていた。

果てしなく歩きまわるのも、誰かと一緒に駆け遊ぶのも定春にはこたえられない喜びで。

よくこんな一言で犬を虜にするもんだと感心したっけ。

『ダメぇ!定春が走り回ったら何をどんだけ壊して怒られるか分かんねーからァ!』

『…そうか』

高杉は、ねだる定春の鼻面を撫でた。

『なら、いつか機会があったら同行たのむぜ?』

定春は目を輝かせ、尻尾を振って飛び回って、もう高杉を拒むどころじゃなかった。

夜中の散歩に出ると高杉を待って立ち止まってたくらいだ。

「俺は銀時が好きだ、そいつァ解った。だがどうやったら大切にできるのか、そもそもテメーはどう思ってるのか五里霧中だった。そんな俺をお前はなにも言わず受け入れてくれた。過去の所業があってなお、お前は俺を責めもせず拒みもしない。自分はテメーに許されている、そう思ったら初めて我が身を恥じた」

「へー、そうなんだ」

「贖罪の方法は解らねェ。だがお前が差し出してくれる心を壊さねェようにしようと思った。人を愛する方法は、どうやらお前が俺に示してくれている。お前が俺を包んだように、俺もお前を包もう…ってな」

「そのわりに、すぐキレて怒るよな」

「テメーを大切にするって慣れない作業に取り組んで恋心を打ち明ける機会をおずおず窺っていたら、真選組と婚約したって報を聞いてよォ。俺りゃ土方に敵わねェのか。俺の取り組みはどんなにテメーの目に無様に映ってたか。考えたらテメーを律する寄す処(よすが)を無くしちまってな」

「それぜんぶ我欲じゃねーか」

「お前が土方を選んだと思や、心穏やかじゃいられねェ」

「俺の幸せを願うのが愛なんじゃねーの?」

「そんな控えめな愛は持ち合わせてねーな」

「ソレ愛って言わねーから」

「なるほど。そいつァ為にならァ」

廊下を歩いて奥まった戸口をくぐる。

こじんまりした脱衣場を通りすぎながら高杉は抱いたまま銀時の身体から襦袢だけ落とす。

踏み入れた浴室はうってかわって広く、凝った造り物や装飾が配してあって、くもりガラスの窓から昼の明るさが差し込む他は高い天井や浴槽の奥は不気味に暗がりが蟠(わだかま)っている。

それでもタイル張りの浴室は磨かれた目地が白く浮かび上がり、浴槽に張られた湯が温かそうに煙っている。

レトロな浴室なのにシャワーや蛇口もあって、その前に置かれた椅子に腰掛けるよう下ろされた。

「洗ってやるから待ってろ」

「いらねーよ、自分で洗う!」

慌ててシャワーの蛇口をひねる。

蛇口は龍をモチーフにした真鍮細工で、どこを掴むか戸惑う。

それでもなんとか湯を出して頭を突っこむ銀時を見届けると、まだ僧服を纏っていた高杉は脱衣場へ引き返していく。

アイツ戻ってきたらゼッテーちょっかい出してくる。

その前に洗っちまわねーと。

とくに顔。

化粧を落とす石鹸てあんの?

知ってんだよ俺は、よく変装すっから。

こういう頑固なヨゴレって普通の石鹸じゃ落ちねーんだよな。

とにかく半端に塗料が流れたオバケみてーなツラは高杉には見せらんねぇ。

あとその…ケツ。

中に出されたモン、ぜんぶ掻き出して洗っとかねーと。

「手伝ってやらァ」

「んぎゃあ!」

後ろのそこへ手を伸ばした途端、背後から高杉に抱えこまれた。

「んなっ、な、なにしやがる!?」

「テメーん中に仕込んだヤツ、出しといた方がいいんだろ?」

「そうだけど、ちょ、離せって!」

裸の高杉の胸腹が背中に密着してきて鼓動が跳ね上がる。

そのまま床にかがめられ、四つん這いに尻を高くあげさせられる。

「自分でやる、自分でやれっから触んなッ」

「角度的に届かねェよ。残らず掻き出してーなら俺に委ねるしかあるめーよ」

「ヤッ…メッ、んんッ!」

尻たぶを左右に開かれて敏感な部分に触れられる。

高杉を受け入れていたそこは期待なのか恐怖なのか自然にきゅっと力が入る。

力を抜いて緩めさせようと、穴を撫でまわしていた指が埋めこまれてくる。

「あ、ぁうッ…!」

がくがくと身を揺らして衝撃に甘い痛みが混じるのを受け止める。

高杉の指は力強く中へ分け入ってくる。

こんな明るい場所で、そんなところを奥まで探られている、そう思うと下肢が震えてきつく目を閉じる。

「はぁ、あぁ…、」

中で指が動いている。

高杉のそれは先ほどの熱い塊を思い出させて。

快感を欲しがる部分に誘おうと勝手にゆらゆら動いてしまう。

「もう少しだから辛抱してなァ」

高杉は真面目な声で言うと作業を続ける。

熱いものの残骸が指に絡められて掻き出されていく。

ずるん、と異物が取り除かれ、腸内がカラになる。

まるで擬似の排泄行為。

銀時は拳を握ってその羞恥に耐える。

「…ァ、」

指先を湯で洗い流すと、ふたたび中へ差し入れられる。

どこを触られても甘いうねりが腹の中に乱反射する。

「ぁ、…ぁん、ン…っ」

ひときわ刺激に弱い腹側の一点を指が行き来する。

じらすように周りを弄ってはすり抜けていく。

「はっ…んっ、んんんーッ!」

銀時は自分の口を押さえる。

高杉の指が、いままで避けてきた一点を指で挟んで揉むように刺激している。

「ィヤッ、ぁぐっ、なっ、ぁッ!?」

腹側へ不規則なリズムで押しこまれる。

下半身に溜まった痺れが一瞬でペニスを擡げさせていく。

「うぁッ、た、かす、ぎッ!」

「もう中は綺麗にしたぜ?」

二本の指を自在に動かしながら片腕で銀時の腰を捕らえて引き起こし、その双丘に口づける。

「すっかり勃っちまった。もう入れてもいいかァ?」

「なっ…んなっ…!」

銀時は言葉が声にならない。

「ソレなんのためにやったんだよ!?」

「決まってんだろーが。また愉しむためだ」

「やだ、イヤだ、キリがねェ!」

前へ這って逃げる。

「なんかもう疲れた!ゆっくり休みてーよ!誰かァ!」

若々しい身体は高杉の腕力に抗しきれず、造作もなく引き戻される。

「誰かコイツ止めてェ!死ぬ、死んじまう、……ぅ、ぅぁあああッ!」

後ろの穴になにかが触れる。

指でも熱い塊でもない、やわらかくて指より自在に動くヌルリと湿ったもの。

「ゃっ…、ぃゃっ…だっ、」

尻にあたる頬と乱れた息遣いから、なにをされてるか分かる。

それは穴を丹念に這いまわりながら、中心を優しく抉って中へ入りこんでくる。

「ぁっ…たかすぎ…っ…!」

「ン…、すきだぜ、ぎんとき…」

「ゃ、やだ、そんなの…っ、やっ、ぁッ…!」

「お前の身体中、どこもかしこも舐めてェと思ってた」

「ぁんんッ!」

身体中…?

全身、そして下腹部が熱くなる。

なんでよりによってソコなんだよ。

叫びたいが息が整わない。

「オメーの至るところぜんぶ愛しいぜ、ぎんときィ…」

「はっ…ぁっ、はぅっ…」

舐める音がする。

高杉のあの舌がしていると思うと腰が砕けそうになる。

入るときか出るときか両方か、たえず高杉の口と舌から背徳的な快感を送りこまれて。

されるまま銀時はタイルに潰れて下半身を愛されているしかない。

「いいかげん、入れて欲しかねーか?」

ちゅ、とキスされる。

「舌ァ引き抜かれそうだ。俺のコイツもオメーの中に収まりてェしなァ?」

「…ぅ、」

高杉のを奥まで。

埋めてほしい。

アレが欲しい。

動かして、突いて。

「たかすぎ…」

キモチよく逝かせてもらいてー。

「……いれて…いいぜ」

「ククッ、光栄だな」

高杉は体勢を取ると勃起をあてがう。

「ねだるときも、あくまでお許しをくださるわけだ。この気の強ぇ白夜叉さまは」

「んなっ! そんなんしてねーだろ、…あぐ、んぁっ…!」

太く硬いものが後ろを押し開き、確実に奥を求めて進んでくる。

「あっ、ぁ、あぅぅッ!」

その先端が腹側の一点に突き刺さる。

背が跳ねて銀時は声もなく先走りを滴らせる。

「はっ、あっ、ゃっ、だっ…ぁんん!」

奥を貫く前に、浅いそこを確かめるように何度も突かれる。

ペニスが腹につくほど反り返り、とろっ…と透明の液が噴き出す。

「ゃッ…、もぉッ、ぁああっ!」

腰をつかまれ、高杉が動くたび前立腺が不規則に捏ねられる。

そのたびペニスの先から、とめどなく薄い液が漏れる。

「はぅ、…ぁぅう…ぁ…ふぅっ…んっ」

精の放出の快感、遠くへたゆたうような穏やかな絶頂。

息も忘れるほど押し寄せるそれに銀時は呆然と浸る。

背中に高杉が覆いかぶさってくる。

硬くて太いものを押しこまれるが、もう痛みはない。

いろんな角度から突かれて腹の中がトロけていく。

「ぎんとき…ぎんときっ…!」

荒い息遣いが聞こえる。

自分の息もせわしない。

痛くされなくても気持ちいい。

腸壁に熱いものを掛けられる異様な興奮に銀時はすべての吐精を果たし、ヒンヤリしたタイルの上へ静かに息をついて横たわった。

 


「これって意味あんの?」

疑わしげに尋ねる。

タイルの床に仰向けにされて、膝を立てて両足を開かされている。

「まだ俯せのがマシなんだけど」

「深いところに出しちまったからな」

高杉は指を差し入れて掻き出している。

「次はサカっちまうわけにゃいかねーだろ?」

「それとコレ、俺がM字開脚させられてんのはなにか関係があるわけ?」

「お前の尻が形良くてよォ」

目を細めて指を動かす。

「見てると挿れたくなっちまうのさ。だったら見ねェようにするしかあるめーよ」

「それってどうなの」

もろに性器を晒してるのは構わないんだろうか。

「このいたたまれないキモチはどこへ供えりゃいいんだよ」

「もう終わる」

高杉は仕上げに浅いところを一拭いする。

「あとは中まで開いて洗い流してやらァ」

「ちょ、カンベン!」

銀時は勢いよく上半身を起こす。

「大変なことになるから!それってどう考えてもシャワ浣……うぐっ、」

言いかけて止まる。

胸苦しくなにかがこみあげてくる。

「……ちょ、待って…、キモチワル…、」

口を押さえる。

本格的に吐き気がする。

高杉の下から身を引き上げてヨタヨタ這うように排水口へ向かう。

「あぐ…、んがっ…おぼ、おぼろろぼっしゃー!!」

胸のあたりで、逆流しようとする塊が暴れている。

懸命に銀時はそれを口から出そうとする。

しかし空腹の胃は吐くものもなく。

銀時はとまらない嘔気に涙を滲ませる。

「かはっ!」

最後に。

銀時の口から出たものがあった。

「ケヘッ、ェゲッ…、」

急激に腹が軽くなる。

すっきりして重荷を取り去ったように身体中が楽になる。

「なんだそれは?」

高杉が覗きこむ。

出てきたのは長い紐状のデコボコした物体。

抜け殻のように潰れているが、どうやら丸い部分が数珠つなぎになった一塊のものだ。

「んあ?」

銀時も見下ろす。

「んあぁぁーッ!」

その形には見覚えがあった。

土方に手渡され、飲むようにいわれた天人の薬。

「これ、コレッ…!」

「心当たりがあるのか?」

高杉は怪訝そうに銀時を見る。

うなずいてそれを告げようとしたとき。

銀時は朝と同じ感覚に襲われる。

息苦しく浅い呼吸は次第に空気が吸えなくなり。

肩が背中がとめどなく震え。

体が分解されるような不安に手足を丸めてうずくまる。

「ぁっ、…ぅ、くっ…」

手足が勝手にうごめき、小刻みな震えが全身に広がってとまらず銀時の意志では収拾がつかなくなる。

高杉は黙って傍に着いている。

なにが起こっているか、おおむね察しているのだろう。

銀時の動揺をよそに高杉は冷静に見守っているように見える。

「ぁぐ…ぅ…、」

こんなのは聞いてない。

もっと若返っちまったらどうしよう。

でも薬は吐いたんだし。

銀時は首を振る。

高杉が動かないかぎりコトは安全に違いない。

その一念で体内に吹き荒れる細胞変容の嵐に歯を食いしばる。

「銀時」

気がついたら高杉の腕を掴んでいた。

力任せの指の跡がついている。

その指はもとの自分の大きさで。

掴む力は年齢相応、視線もさっきより高い。

「…あ」

手を突いて起き上がる。

見慣れた自分のもとの姿。

身体は充実して気力が漲っている。

「戻った…」

「どうやらコイツは徐放剤らしいな」

高杉が薬の塊を拾い上げる。

「体内に留まってるうちは若年化させるが、吐けば効果が切れて戻っちまう仕組みだ」

「ちょ、そんなもん触んなって」

「真選組はハナから時限式に変身させて元へ戻すつもりだったのか。この分だと効果は1日たらずってところだな。挙式直前に飲まされたってのは、時間が経ったらオメーが吐いちまう危険が増すからだろうよ」

「なに。じゃ俺、二重に騙されたの」


─── 一度、女になっちまったら元には戻らねぇ。完全な女になる。そういう薬だ。


男に戻す方法はあるのかと訊いた高杉に、土方は言い放った。

あのとき引っ掛かりを感じたのだ。

オンナになってないのに、あたかも銀時が女体化したみたいに宣伝する彼らを見て、もしかして『戻らない』ってのも方便なんじゃないかって。

もしかしたら、これ全体が世間の目をごまかすフィクションじゃないか。

土方には自分をこの状態から解放する手立てがあるんじゃねーかって。

「とくに変身の影響は残ってなさそうだな」

高杉が銀時の身体を点検する。

「元通りのオメーの綺麗な身体だ」

「………ハァ~、」

銀時は、しゃがみこんで大きく息を吐く。

「よかったぁぁぁ!」

 


髪と身体を洗って湯に浸かり、手足を伸ばす。

目も見える。身体も万全。銀時はタイルの浴槽にボーっと寄りかかる。

「機嫌いいじゃねェか」

「ん、気分いい」

「そいつァなによりだ」

あとから入ってきた高杉が銀時の横に腰を下ろす。

浴槽は広く、十人やそこら入ってもプール並みに余る。

気にもせず浮かんでいると高杉の指が銀髪に絡んでくる。

「…なに?」

「可愛いからよォ」

「そーかよ」

いたわるように触れてくる高杉の手は心地いい。

目を閉じてゆだねていると疲れと安堵に寝入ってしまいそうだ。

「昼飯は何がいい?」

高杉こそ上機嫌に聞いてくる。

その伸びやかな声にますます眠りを誘われる。

「ん…寿司とか、鯛とか、ステーキとか…あとチョコレートパフェとマロンパフェとイチゴ牛乳とプリンとモンブランとショートケーキをホールで」

「よさそうなところを支度させる」

高杉は家の者を呼びつける。

銀時がウトウトしていると、耳障りのいい声が簡潔に用事を伝えている。

それを終えるといきなりパチンと音がして、浴槽の壁に設置された巨大モニターの電源が入る。

「んぇ…?」

「オメーが寝てる間、見ようと思ってな」

高杉は手にしたリモコンでチャンネルを変えていく。

「どうやら真選組の屯所で始まったらしいぜ」

「…始まったって?」

「幕府の偉物を集めて祝言をあげるのが今日の奴等の仕事だろ。その中継をやってるって聞いたからよォ」

「祝言?」

銀時は画面を見上げる。

「オレ居ねーのにできんの? アレ、じゃ代役を立てたのかな?」

てっきり中止だと思いこんでいた。

「土方くん、誰と式を挙げるんだろ?」

「気になるか?」

「ならねーよ」

「オメーにベタ惚れだったもんなァ。まさかこんな簡単に手のひら返すたァ…」

言いかけて高杉も黙る。

銀時は屯所の中継を凝視する。

花野アナの静かなリポートとともに厳かな雰囲気の中で式が執り行われている。

ちょうど花嫁が廊下をわたって座敷へ向かってくるところ。

その綿帽子の下の面差しが大写しになる。

紋付を着た新郎の横。

たおやかな細身の、しっとりした雰囲気のある芯の強そうな少女。

「……………ヅラ?」

銀時は思わず画面を指す。

印象的な瞳、うつくしい黒髪。

それはかつて自分たちとともに混沌の戦場を駆け抜けた、あのころの戦友の顔立ちそのものだった。




続く


 

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【2012/11/17 11:22 】 | 高銀小説・1話~完結・通し読み | 有り難いご意見(0)
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