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【2025/06/28 09:16 】 |
第四話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

*  高銀話です(連載中)


第四話 気を引いても虚ろな世界(高銀)


「よっ…万事屋の旦那だァァァ!!」
「ウソ、本当に来たァ!?」
真選組屯所は、にわかに騒がしくなった。銀時がパトカーから降りるとそれを見かけた隊士たちがワッと銀時を取り囲む。奥へ知らせに行く者や、緊張の面持ちで走りこんでくる者もいる。
「旦那、旦那、本当に嫁に来るんですか、誰にしたんですか、もう決めたんですか!?」
「俺って可能性もありますよね、」
「夢みてーだぁぁよかったァァァ!」
「旦那が嫁にッ!」
「触らせてくれ触りてぇぇぇ!」
群がって一歩も進めない。
銀時は真ん中でボーっと立ったまま興奮の隊士たちを意欲のこもらない瞳で眺めている。その着物や主に腰のあたりに手を伸ばしてくる隊士たちを沖田が押しのけて道を開く。
「テメーら邪魔だ。すっこんでろぃ。旦那は俺の貞淑な淫乱嫁になるに決まってら。欲しかったら腕づくで奪りにきやがれ」
その場をぐるりと一瞥する。
「全員でなァ」
「……」
銀時は沖田に目をやる。少し姿勢を低くした沖田から発せられたのは殺気。眼にはギラついた刃物のような光が宿り、それに射竦められた隊士たちは反射的に腰の刀へ手を泳がせる。後ろへ下がる者も、当の銀時の背中に隠れようとする者もいる。
「そのへんにしとけ、総悟。こりゃ腕づくの話じゃねぇ」
土方の一声がその空気を破る。
「伝令いるか」
「はっ、ハイ、ここに」
「役職者に伝えろ。万事屋の件で会議室に集合。各部署の希望者志願者も同席のこと。以上だ」
「ははっ!」
一人の隊士が屯所内のどこへともなく走り去る。それを見やることもなく土方は屋敷の中へと入っていく。
「いくぞ、総悟。とっととソイツ連れてこい」
「へい」
総悟は銀時の腕を取る。
「じゃあ行きやしょうか、旦那」
「いいけど。どこへ?」
「俺たちの愛の巣でさァ」
「どこ連れてく気だコラァ!」
土方が振り返って怒鳴る。
沖田は銀時を屯所の裏庭へ連れていこうとしている。
「ソイツの処遇はまだ決まってねぇ!テメェの部屋に勝手に引っ張り込むんじゃねぇよ!」
「チッ…年寄りはくだらねぇ会議とかで若者の貴重な愛の時間を奪いやがる。旦那はハナから俺のものって決まってんのにな」
「んなもん決まってねぇだろ!まだ万事屋の意向も聞いてねぇ。本人の承諾なく進む話じゃねんだよ」
「俺の愛はこうでさァ、旦那」
沖田は銀時へ向き直り、ヒシと握った銀時の両手を自分の胸元へ掻き抱く。
「アンタを縛り上げて一日中ベッドから降ろしやせん。むろん誰の目にも触れさせやせん。アンタは俺にすべてを任せ、俺はアンタに快楽を注ぎ続ける。アンタは永遠に俺のもんでさァ」
「……オイ、総悟」
土方は頭痛のしてきたこめかみを押さえる。
「大概にしとけ。万事屋がドン引きだろうが」
「え。マジで?」
銀時が沖田を覗き込む。
「一日中寝てていいの?仕事行ったり家賃払わなくていいのかよ?」
「あたりまえでさァ。アンタは俺の愛の奴隷なんですからねぃ」
「愛の奴隷つーか、金の奴隷な」
「お好みなら札束で頬をなぶってやりまさァ」
「うわソレ昇天するぞマジで」
「…ちょ、」
土方が頭を抱える。
「ちょっと待てぇぇぇ!なに意気投合してんのお前ら!お前らの趣味に走ったプレイの詳細なんかどうでもいいし!聞きたくねぇし!んなもんさせねーし!絶対やらせっかァァァ!」
「見苦しいですぜ土方さん」
言い放って、くるっと銀時を見る。
「じゃあ旦那、嫉妬男も見苦しいことですし、いったん戻って俺たちの愛を連中に認めさせやしょうかね」
「かまわねーけど」
銀時はダルそうな目で尋ねる。
「いつどこに俺たちの愛があったの?」
「ここでさ」
ちゅ、と握りしめた銀時の両手に口づける。そしてそれを離すと、にこっと銀時にだけ、きれいな笑みを向ける。
「俺がアンタを手に入れたら一日中離しません。ソレだけは確かでさァ」


続く

拍手[5回]

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【2011/01/06 19:31 】 | 気を引いても虚ろな世界(高銀) | 有り難いご意見(2)
第三話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

*  高銀話です(連載中)


第三話 気を引いても虚ろな世界(高銀)



「旦那は独身ですかぃ?」
「そうだけど?」
「つきあってる相手くらいは居ますよね」
さぐるように眼が銀時を見上げてくる。
「たとえば、夜な夜なデートしてる相手とか」
「…いねーよ、そんなん」
「そうなんですか、意外でさぁ」
沖田はトボけた顔で首を傾げる。
「こいつァ計算外だ。でも将来を誓いあった恋しい相手ってのは居るんでしょう?」
「だから居ねーッて」
言い放って沖田から離れる。
「話がそれだけなら行くぜ。愛しいパフェちゃんを待たせてるんでね、あっちのファミレスの厨房に」
「待ちな。話は終わってねェ」
土方が逃げ道を塞ぐように回りこむ。
「むしろこっからが本題だ。万事屋、これは武装警察真選組としての仕事なんでな」
刀の鞘をつかんだまま、その顔をあげて銀時を睨む。
「悪く思うなよ」
「…かまわねーよ」
銀時は感情を載せずにそちらに顔を向ける。
土方の鋭い視線を躱しもせず受け止める。
相手の呼吸を伺いながらあらゆる剣戟の動きを身体がなぞり始めたとき。
スッと間合いに入ったものが銀時の腕を掴んだ。
「と、いうわけで旦那。真選組に嫁に来てくだせェ」
掴んだものは沖田の両手だった。ひとつ間違えば銀時の木刀に叩き折られていたそれは無邪気を装った呈で銀時の利き腕を絡めとっている。
「あ、俺だ。車まわしてくれ。場所は柳川の弁当屋の角な」
即座に携帯電話を取り出し指示を与える。その間も銀時の腕を1ミリも離さない。
「ちょっと、ちょっと。沖田君」
銀時は首をまわして沖田を見下ろす。
「なにやってんのオメーは。そして今、俺の耳におかしなことが聞こえたんで離してください」
「おかしくねーでさぁ。あんたの耳はデビルマンより高性能だから自信持ちなせェ」
「いやだ。そんな自信は捨てる。捨て去る。人間、謙虚が一番なんだよ。お前も謙虚になれ。なんか変なこと言っちまっても取り返しがつくから。とりあえずこの手を離せ」
「離したら逃げちまうでしょう。そんな小学生でも分かりきったこと俺に勧めてアンタは恥ずかしいと思わねーんですか。悔い改めてとっとと真選組の軛(くびき)に繋がれやがれ」
「だからナニそれ」
真顔で沖田を覗きこむ。
「ぜんぜん意味が分かんないんだけど。連行か?つまり任意同行を求められているのか俺は」
「アタマが弱ぇ弱ぇとは思ってやしたが、ここまでとは」
沖田は情けない、といった風情で首を左右に振り動かす。
「アンタには好きな御人は居ないんでしょう?だから真選組に嫁に来てもらうんでさ。ウチはトップの近藤さんから最年少の俺まで、よりどり男が揃ってますぜ。好きなのみつくろってくだせェ。なんなら隊士をはべらせますんで。好みを言ってくれれば何人でも取り揃えまさァ」
「オメーにはいつか負けるんじゃねーかと思ってたけどよ。ボロ負けしたわ今、頭の悪さで」
銀時は声に苛立ちを潜める。
「オメーんとこの隊士、野郎ばっかじゃねーか。なんで俺が嫁?俺りゃ男だろ?男と男で嫁も婿も新郎も新婦もねーんだよ」
「大丈夫、天人の便利な薬があるんで。女体化なんてアッと言うまでさァ」
「んなもん、するかァァァ!!」
銀時は腕を引く。
「お前らが女になれ!いやソレだってお断りだけどね!とにかく妥協できそうなポイントがみつからねぇ、この件はなかったってことで!!」
「なに言ってるんですかィ、コトはそんなに簡単じゃねーや」
沖田はやってきたパトカーに合図を送って傍まで寄せる。
「一人ずつ試用期間で夜の相性でも見るんですね。俺もバッチリ旦那を俺好みの嫁に仕上げてみせまさァ」
「なに言ってんの、この子」
銀時は沖田の本気を感じて土方を見る。
「ちょっとおたく、どーいう教育してるわけ?これが警察の仕事だとでも言うつもりじゃねーだろな!」
「………岡田似蔵」
土方は二人のやりとりの間、取り出して吸っていた煙草を口から外して煙を吐く。
「この名を知ってるだろ。残念ながら、テメーに拒否権はねぇんだ」

 

続く
 

拍手[3回]

【2010/12/31 02:08 】 | 気を引いても虚ろな世界(高銀) | 有り難いご意見(0)
第二話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

*  高銀話です(連載中)
*  livedoorブログ更新(余市日夏の銀魂たわごと)/リンクから飛べます


第二話 気を引いても虚ろな世界(高銀)


「よぅ銀時。夜な夜な男前の兄ちゃんと逢引してんだってな」
団子屋の店主に捕まった。
「してねーよ、そんなスキャンダラスなこと」
「見たって言ってたぜ」
「なんかの間違いだろ」
「それもそうなんだけどよ、団子のツケ払ってけよ」
「のど焼け団子って知ってるか。みたらしとろとろの中にひとつだけワサビ入り激辛が混じってんだよ。合コンとかでロシアンルーレット的なアイテムは需要が伸びてんだよ。出血大サービスでアイディア料とツケを相殺してやるわ」
「ダメだ俺ァ、わさびみてェな辛ぇ団子には興味ねーから。それよりよォ、銀時お前たまったツケ払ってけよ」
「のど焼け直し飴ってのもセットで売るといいらしいぜ」

 

「ごまかさなくたっていいじゃん。誰だよ、俺の知ってる人間?」
「俺はアンタが誰を知ってるか知らねーよ」
「またまたァ、隠さなくたっていいだろ。俺と銀さんの仲で」
長谷川はサングラスごしに興味の視線を向けてくる。
「最近いつもんトコにいないからどうしたのかと思ったんだよ。隅に置けないねェ」
「懐が寒いんだよ、飲み歩くには」
「もういいや、言っちゃおう」
銀時の耳に長谷川が小声で告げる。
「俺、ソイツに妬いてるかもしれないんだわ」
「あー、そうなんだ。ごくろうさん」
「お前と分かり合える同種は自分だけ、みたいなさ。なんかお前は俺をそんな気にさせる雰囲気がある」
「だろうな。俺ァ皆をそんな気にさせながらここまで生き抜いてきたからよ」
「ホント、今度見せてよ。アツアツの彼氏」

 

「粋な遊び人風の男性らしいですね」
昼のかぶき町を歩いていた狂死郎と八郎に出くわした。
「かまっ娘倶楽部の人たちが騒いでましたよ。あんなイイ男、見たことないって」
「オイオイ、どこまで話が広がってんだよ」
「あの人たちがあんなに夢中になるなんて、少々ホストとしてのプライドをくすぐられましたよ」
憂い顔でうつむきながら、フッと銀時に眼を走らせて笑みを浮かべる。
「是非、店にお連れくださいませんか。無料招待させていただきたいので」
「なに闘争心燃やしてんの、この人。まったく意味ねぇエネルギーがメラメラ燃えてんだけど」
「僕は貴方と近しい方を拝見したいだけですよ」
「いやもう、ホントお構いなく。全力で放っといてほしいんで」

 

「いよう、銀の字。お盛んらしいな!」
「知らねーよ。俺は犬を連れて散歩してるだけだ」
「相手は凄味のある兄ちゃんだって?あれか、鬼兵隊の大将か!」
「なに言ってんのォォ!!このクソジジイィィィイ!!!」
「がははは!隠すこたァあんめぇ。大将と白髪の仲ァ昔っからよく聞く話だ!それより銀の字、おめぇんとこのガキ、誰かに入れ込んでるみてぇだな。心当たりはあるか?」
「俺んとこのって…神楽?新八?」
「メガネの坊主よ。おっと、もしかして本人の前で言っちまったか。まあアイツには黙っとけよ!俺が言ったっていうんじゃねェぞ!」
さも可笑しげに歯を見せて源外が笑う。

 


「噂になっているぞ」
編笠を深く被った僧侶姿の桂が橋のたもとに座っていた。
「貴様、あんなことのあとでよく逢引などという破廉恥な行為に及べたものだな」
「破廉恥なのは、お前の失恋ヘアーだ」
「…フン」
くい、と頭を上げて横に立っている銀時を見上げる。
「次に会ったら斬るんじゃなかったのか」
「お前ね、そう簡単に斬れると思う?」
銀時は桂の視線を受け流し、はぁ、と大きな溜息をつく。
「大根じゃないんだよ。お互い手の内は知ってるし。こないだの怪我まだ治ってねーし」
「お前とヤツの接近を快く思わない輩もいるだろう」
編笠が動いて桂の顔が見えなくなる。
「これは忠告だ」
高杉と関わるな。
立ち去る銀時を追う桂の声が告げる。

 

「お。旦那じゃねーか」
黒い制服の二人連れ。
横道から出てきた沖田に呼び止められた。
「ちょうど良かった。聞きたいことがあったんでさァ」
後ろから土方がゆっくり、しかし銀時を逃さぬ足取りで近づいてくる。
銀時は身体を正面に向けたまま、曲げた左腕を木刀に肘かけて肩越しに彼らを眺めた。

 

続く
 

拍手[6回]

【2010/12/30 02:04 】 | 気を引いても虚ろな世界(高銀) | 有り難いご意見(0)
第一話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

*  以下に高銀話を載せます(連載中)
*  livedoorブログ更新(余市日夏の銀魂たわごと)/リンクから飛べます



気を引いても虚ろな世界


新八が恒道館に帰宅し、神楽が押入れに寝てしまったあと。銀時は定春を連れて散歩するのが常だった。夜遅い時間に定春の排泄を済ませておけば、朝ゆっくり寝過ごせるからだ。
「ゆっくりな、ゆっくり。走るなよー」
かぶき町の夜の賑わいを抜けて空き地や草むらの多い住宅地に出る。定春はよろこんで綱を引っ張りながら前のめりに銀時を引っ張っていく。とどこおりなく排泄を済ませたころ、定春の牽引力は一段落して前進する速度が落ちる。
そしてその頃、落ち合うのだ、銀時が夜中の散歩を繰り返すもうひとつの理由と。
「やんだなァ」
神社の鳥居の陰から、空を見ながら歩いてくる男。
「ひでェ雨だった。今日はもう晴れないかと思ったぜ」
「オメーいたの」
銀時は期待通り現れた男に意外そうに応える。
「もう酒くらって寝てる頃だろーが」
「寝てた。けど、やんだからな」
高杉はスタスタ歩いて銀時を見もせずその横に並び、同じ方向へ歩き出す。
「突然の豪雨のあとの星をみるのも一興だろ?」
「あー、星でてんな」
銀時は定春の綱に両手をかけたまま空を見上げる。
「あんまり出てねーけど、見えるわ」
「そうかぃ」
高杉は眼を伏せながら愉しげに口の端で笑う。
「俺りゃそこまで探さなくても見えるがな」
「なに。お前の視力、もしかして片方の眼を遮断してるのは見える方を倍増させるとかそういう仕組みになってんのかよ」
「そういうわけじゃねェよ。ただ、俺の星はどこにいても目立つ。眩しいくれーだ」
「あー分かったから、お前のネタ。あれだろ、北極星」
謎解きを先回りして得意げに空の一点を眼で示す。
「明るいし、場所すぐ分かるし。そーいやさ、昔、昼間に北極星みようとして皆で林の丘に行ったじゃねーか。皆が空井戸に行っちゃって、ヅラとオメーが木のウロ探して、あんときよォ、林の方が遠かったし、俺は別にどっちに行ってもよかったんだけどね、林の方が面白そうっていうか」
「銀時、見ろよ。いっぱいいるぜ」
高杉が突然、よかったな、といわんばかりの含みで断言した。
言われて銀時は周りを見回す。
ここは人気のない夜の道。
自分と高杉と定春の他は無人。
いっぱいいるって、なんだよ。
なんにも感知できない。
まさか。
コイツ、霊感とかあったっけ?
そういう、見えるけど触れないものが揃ってこっちを見てるとか?
それとも足元に蠢く小型の生き物が黒々とした光沢をひからせながら集団で今しも足元から目の前に現れようとしてるとか?
ふたつの想定に肝がスーっと冷えたとき。
「ホラ。このアパート、出ていってなかったな」
高杉が示したのは道沿いの集合住宅。
窓からいくつも照明が漏れていて、中の住人の存在を伺わせる。
「いなくなったんじゃないかって心配してたろ?」
そういえば。
前ここを通ったとき、あまりに真っ暗な部屋が多かったんで皆引っ越して出ていってしまったんじゃないかと、その理由をいくつか考えては危ぶんでいたのだった。
「お、おどかすなテメッ」
今になって心臓が高鳴る。
「こんななにもないとこで『いっぱいいる』とか言われたら怖いだろーが!」
「……ン?」
高杉は真顔で銀時を見る。
「ああ、そうか。そうだな、怖ェな」
思い至ったように眼を細め、笑いを噛み締める。


続く

拍手[14回]

【2010/12/28 23:37 】 | 気を引いても虚ろな世界(高銀) | 有り難いご意見(0)
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