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【2024/04/20 23:47 】 |
第51話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

本日の更新

* 高銀第51話更新(ここ)1件
* 余市日夏の銀魂たわごと更新(一件)/パソコンは左、携帯は下のリンクから飛べます
* 銀魂ネタバレ感想更新(一件)/パソコンは左、携帯は下のリンクから飛べます



*  高銀話です(連載中)


第51話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

 

 

「お登勢よぅ…俺りゃ間違ってねぇよなぁ」

カウンターに酒を抱えこむようにして源外が潰れている。

「世の中どんどん物騒になってきてやがる…俺りゃ息子みてぇな連中に、こんな馬鹿げた体制の中で、あたら若ぇ命を散らしてほしくねぇんだ」

「まったくしょうがないね、この酔っぱらいは」

お登勢はカウンターの向こうで煙草片手に腕組みしている。

「お尋ね者のくせにさんざん飲み散らかして。若いモンの前に自分の腰が立つか心配しな。警察が踏み込んできたら自分が命散らしちまうよ」

「心配いらねェよ、その警察から貰ったのが今日の飲み代だ」

がはは…、と自棄な笑いを吐き出す。

「銀の字がよぅ、結婚だと! 幕府おかかえの公務員サマとよぅ。俺りゃアイツにはテメーの息子の分も幸せになってほしくてよぅ…」

「ホントなのかね、あの話」

お登勢は、ふーっと煙を上に向ける。

「アイツがなんの一言もなく出ていってそのまま結婚だなんて。あたしにゃ信じられないよ」

「本当に決まってるデショウ、ワイドショーはその話で持ちきりデスヨ」

キャサリンが横から口を挟む。

「好きな男と結婚するためにオンナになるなんて並みの覚悟ではできまセンヨ、いくらあのアホが甲斐性のないゴクツブシでも、今度ばかりは本気なんじゃないデスカ?」

「上は空き家になっちまったのか。あの嬢ちゃんはどうした?」

「そのままさね」

お登勢が嘆息する。

「荷物も子供もそのまま。家賃は払うから引き続き貸してくれって真選組から連絡があったよ」

「どういうこった?」

「ワケありみたいだね。こっちもすぐ借り手がつくわけじゃなし、話を呑んだけど。子供に良い状況じゃないことは確かだよ」

以前、銀時が記憶を亡くして不在だったときの万事屋を思い出す。

「様子を見て、目に余るようならキッチリ話をつけにいくさ。…もっとも、いま上には神楽も新八も居ないんだ。新八は行方不明、神楽は真選組に保護されてる。犬も寂しいだろうよ」

「犬は元気でしタヨ」

キャサリンがぼんやり告げる。

「様子を見に行ったら水もエサも換えてあって、一人でクウクウ寝てましたカラネ」

「真選組の連中が世話に来てるんじゃないかい」

お登勢は渋い顔で上を窺う。

「来てるなら顔を出して事情のひとつも説明していきゃいいのに。こっちはまるっきり蚊帳の外だよ。お役所仕事っていうのかねぇ」

「なんだ、オメーに正式な話も無ぇのか?」

「ただの大家と店子にそんなものあるわけないだろ、よしとくれ」

気がかりそうに顔を顰める。

「ただ…あの子が女になんか成りたがるかね。電話に出せって言っても出さなかったし、組があの子を抱えこんで無茶なことやらせてるんじゃないかって疑っちゃいるのさ。あの子も…いろいろあるからね」

「ははっ、ありゃ攘夷派でもっとも過激な大将の恋の片割れだからなぁ」

源外の口は酒でよく回る。

「幕府に目をつけられて真選組に鎖で繋がれちまうのも道理だろよ。だがなぁ、俺りゃそれを逆手にとって安楽な暮らしを手に入れるのも悪かないと思うぜ」

くい、と盃を干す。

「アイツはもう十分戦ってきた。ここらで羽を休めさせてやりてぇ。ましてや目があんなことになっちまったんだ、今度はアイツが誰かに護ってもらう番だ。大将は反体制、銀の字はそれに組みしねぇとなりゃ、真選組の懐に入っちまうのが一番安全だろ」

「アンタねぇ…寝ぼけたこと言ってんじゃないよ」

お登勢は呆れたように眺める。

「若いモンがそんな年寄りの繰り言みたいな勧めを聞くわけないだろ。だいたいアンタ、若いころ他人の忠告になんか耳を貸したのかい」

「…聞くわけねーだろ、そんなカビの生えた不味そうなもん」

「だったらアンタの役割は若いモンに保身を図らせることじゃないだろ。なにが正しいかなんて誰にも言えやしないけど、少なくとも…」


お登勢が言いかけたとき。

つけっぱなしのテレビが知った顔を大写しにしてきた。

『特集です!真選組副長の土方十四郎さんが今週、めでたく意中の人とゴールイン!』

リポーターの後ろに土方、そして銀時の顔写真が並んでいる。

『ということでワタクシ、真選組屯所に突撃リポートしてきましたぁ!今夜はそちらを御覧いただきましょう!』

源外もお登勢もなんとなく視線をテレビに向ける。他に客はなく、時間も過ぎたためキャサリンが暖簾(のれん)を仕舞いに立ち上がる。

『喧嘩するほど仲がいいと言いますが、お二人は会うと喧嘩するような間柄ということで、なんと御相手も男性の方なんです』

いまさらの情報を真面目な顔で説明する。

『男性同士の成婚はときどき見かけますが、今回特別なのは御相手の方が副長さんと結婚するために性転換、つまり女性になってしまおうという熱愛ぶりなんです!』

画面が録画映像に切り替わる。真選組屯所の正門が映り、ついで丁寧に手入れされた風情の良い庭へとリポーターが進んでいく。

『こんにちはー!』

花野アナが庭にいる二人に駆け寄っていく。

『すみませーん、大江戸テレビの者ですが!土方副長さんと婚約者の方ですよね!?お話伺えますかぁ?』

『なっ、んなっ!』

銀時は腕で顔を隠すと身を翻して背を向ける。

そのままカメラから逃げるようにヨロヨロ歩いていく。

『その反射板をどかせッ』

土方が撮影スタッフに手を翳す。

『眩しいんだよ、こいつは眼が悪ぃんだ、ギラギラしたもん向けるんじゃねぇ!』

『えっ、どこかお悪いんですか!?』

『だから眼が悪いつってんだろがァ!』

『…ぐぎゃっ!』

銀時が画面奥でコケる。庭石と立木の間につんのめって倒れこむ。

『ぎ、…万事屋っ!?』

土方が走り寄って倒れた相手の傍らに膝をつく。

迷いもなく抱き起こすとカメラから庇うように銀時の頭を自分の胸に抱きこんだ。

『婚約者の方は目をお怪我されたようですね。なにかあったんですか?!』

『先ごろ怪人に襲われてな。目を傷めた。安静にしなきゃならねぇ。悪いが撮影は向こうで、俺一人でやってもらえねぇか』

『あ、これ包帯だったんですね? 黒いからなんだろうと思ったんですが』

回りこんで銀時の顔を映し出す。

『じゃあ性転換は?まだされてないようですが、もしかして中止なんてことは無いですよね?』

『ちゅ、中止にできるもんなら中止して…』

『予定通り式当日に施行する』

銀時の呟きを遮って土方が告げる。

『遅発性の副作用で寝込むことがあるんだとよ。薬を使った初日なら、まだ副作用は出ないだろうから式当日にしろって医者には言われてる』

『わぁ、そうですかあ、楽しみですね~!』

花野アナは銀時にマイクを向ける。

『黒い包帯って珍しいですよね。もう屯所の中の新居にお二人で住んでらっしゃるそうですが、もしかして副長さんとそういうプレイで遊んでたりするんですか?』

『んっ、んなわけっ…』

『プライベートについて話すことは何も無ぇ』

土方は身体で銀時を隠す。

『こいつの準備があるんで当日は遅めの開始になる。中継は昼すぎになるぜ』

『その前に性転換の実況がありますんで私たち朝から入りますよ?』

『ふざけんな。そんなモン許可した覚えは無ぇ』

土方が花野アナと撮影クルーを睨む。

『大体、ここは立入禁止だぜ。誰に断って入ってきた?』

『広報の方です。屯所内どこでも撮影していいって言われてますよ。お二人の新居にもお邪魔していいですかぁ?』

『警備上の問題がある。そいつぁお断りだな』

眼光鋭く言い放ちながら、銀時の身体を支えて立たせる。

『大丈夫か?』

『あ…うん、』

銀時は土方に向かって俯いている。

『俺がぶつかったの、なに?』

『松の木の根本のデケェ石だ。その先に灯籠があったんだぜ、危なかったな』

『なんか…よく見えなくてよ…』

『気にすんな。きっとそのうち見えるようにならァ』

小声で言い交わす二人を見守る花野アナ、でVTRは終了となる。

画面変わってスタジオ、笑顔で祝福ムードのコメンテーターたち。


『というわけで、とってもアツアツムードのお二人なんですよ~!』

『あの包帯は本当に副長さんの趣味じゃないのかな?』

『新居にはカメラは入れたんですか?』

『実際にああいう包帯が眼科で使われてるそうなんです。眩しいときに目元を安静にするのに効果があるらしいんですね。けして怪しいグッズとかではありません(笑)』

『怪しいな~!』

スタジオに笑いが起こる。

源外とお登勢は画面から目を離して向き直る。

「銀の字…微妙に嫌がってなかったか?」

「微妙じゃないね。どっからどう見ても嫌がってたよ」

「じゃあなにか。あいつは嫌がってるのを無理やりオンナにされちまう、ということか」

「らしいね」

「そりゃ、あんまりな話じゃねぇか。男がオンナにされるなんざぁ、とても普通じゃねぇ」

「やっぱり脅されてんのかねぇ…」

お登勢が眉をひそめる。

「脅しに屈するような子じゃないし。真選組だってあの子を脅すようなタマにゃ見えないけどね」

「まいったな。こりゃ素直に祝福なんざしとる場合じゃねぇ」

「ちょいと。どうする気だい」

「いまさら罪がひとつふたつ増えたところで、この老いぼれには関係ねぇよぅ」

「助けに行くってのかい?」

「息子ばかりか、銀の字まで幕府に持ってかれちゃたまんねーからな」

「お待ちよ。どうにも裏がありそうじゃないか」

お登勢が諌める。

「事情も知らず余計なことしてあの子を窮地に追い込んだら目も当てられないよ」

「悠長なこと言ってる場合か、オンナにされちまうんだぞ!」

「ああ? 女のなにが悪いってのさ」

じろり、お登勢に睨まれる。

「男だろうが女だろうが、あの子はあの子だろ。動くなって言ってんじゃない、ちゃんと事情を確かめてから有効な手を打たなきゃしょうがないだろって言ってんだよ」

「事情を確かめるって言ってもなぁ…」

「アンタ、真選組にツテがあるんだろ。さっきそんなこと言ってたね」

「ツテって言うか、」

「そっから探りを入れたらいいだろうさ」

「探りもなにも…俺にカラクリ依頼してきたのは銀の字と祝言あげようってぇ兄ちゃんだけどよぅ」

源外は毛のない頭を掻く。

「なーんか銀の字のために必死でよ、あの兄ちゃん…とても謀り事してるようにゃ見えなくてなぁ」

「そりゃ…どうしたもんだろね」

お登勢も言葉に詰まる。先刻もテレビに映し出された二人、その銀時の相手にはわずかながらお登勢とも面識がある。

「ま…、あの子と添いたいなんて言ってる奇特な人間なら、悪い男じゃないと思うけどね…」

「暗闇と怒号の戦場」

源外は口の中で独りごちる。

「恐怖と疲労にずっしり重てぇ視界の中に、そこだけ重力から解き放たれて翻る白装束…それがテメーらの希望だと。テメーらの大将の拠りどころだと…お前は言ってたんだってなぁ、…三郎よォ…」

「アンタの息子さん、…良い働きをしたそうだね」

お登勢はカウンターにうなだれる源外を見つめる。

「銀時とよしみを結んだ男のもとに居たんだって? アンタがその男と銀時を気に掛けてるのは分かるけどね。惚れた腫れたの世界に他人が首つっこめるもんじゃないよ。せめてあの子が自分で人生の選択ができるよう、見守ってやるのが年寄りにできる精一杯の役目さね」

そのときだった。

ガラリと店の引き戸が開かれる。

「お、お登勢サン…!」

押されるようにキャサリンが暖簾を持ったまま店の中へ舞い戻ってくる。

お登勢、源外も顔を向けて戸口を見る。

そこに数人の人影、先頭にいるのは派手な着物を纏った隻眼の男。

「もう店は仕舞いかぃ?」

薄い笑いを浮かべて二人に尋ねる。

「なかなか良い店じゃねェか。よかったら俺にも一杯飲ませちゃくれねーか?」

「あんた…、」

源外が気圧されたように身を引く。

「なんでここに…!?」

キャサリンはカウンターの中へ逃げこんでくる。

お登勢は高杉とその後ろの男たちを、目を細めて見据える。

テレビ画面が繰り返し銀時の結婚を伝え、出演者たちは便乗ネタを連発して騒いでいた。

 

 

続く

 

 


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【2012/04/07 18:18 】 | 気を引いても虚ろな世界(高銀) | 有り難いご意見(0)
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