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【2020/04/07 22:26 】 |
第50話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

*  高銀話です(連載中)


第50話 気を引いても虚ろな世界(高銀)

 


「なァ、万事屋。少し歩かねぇか?」

銀髪に顔を埋めて口付ける。

「屯所の中…、間取りや隠し通路も。お前に教えておきてぇ。オメーにはもうその権利がある」

「ん……いいけど」

銀時は包帯の上から眼を押さえる。

「俺、見えないし。たぶんなんにも覚えらんねーかも」

「武士は一回通った場所は体で覚えてんだろ?」

「う…、あ、あれは…、」

銀時は頬を赤くする。

「人に運ばれるなんて御免こうむりたかったし…、」

「みたいだな」

「なんで知ってんだよ」

「運ばれてる最中、そう叫んでた」

「…う~、いろいろとあんだよ」

銀時は横を向く。

笑って土方は銀時を抱く腕をゆるめると、銀時を連れて座敷を出ていく。

当日式場となる広い座敷や、続き部屋、控え室、あらゆる通路などの確認をしながら、ゆっくりした足取りで銀時を案内していく。

「この場所は、初めてじゃね?」

ふと銀時が顔をあげる。

母屋から庭へ降りたときだった。

「こんなとこ、あったっけ?」

「ああ。こりゃ非公開の中庭だな」

土方は銀時に草履を履かせる。

「当日は茶席を設けて客人に散策してもらう予定だ。庭師を入れて整えてる近藤さん自慢の庭で、通常は隊士も立入禁止だ。お偉いさんの接待に使ってるんでね、踏み荒らされるわけにゃいかないんだよ」

「いい匂いがする」

くんくん、鼻を効かせる。

「なんか花咲いてるよな?」

「あぁ、…白い花が咲いてる。匂うか?」

「葉っぱとか樹のニオイもする。池もあんの?」

「あるぜ」

「音がする。池の周りに樹が配置されてんだろ。見えたら見事だろうな」

「見えねェのに樹の配置まで分かるのかよ」

「んー、半分は勘だけど」

銀時は見えない眼で庭を見回す。

「なんつーの? 肌に感じんだよ。風が流れてくる間隔とか。湿った空気の方向とか。コウモリの出す超音波みたいな理屈じゃね?」

「オメーは眼が見えなくても他の感覚で補えるんだな」

土方は苦笑する。

「場数が違う…、か」

「そんなことねーよ。オメーらとたいして変わらねーって」

「そりゃどうも」

母屋と池、そして高い塀に囲まれた広い庭。

塀を越えて届く風にそよぐ銀時の髪に土方は目を細める。

「…オメーに聞きてぇことがある」

「ん。…なに?」

「まだ入院してたとき、病室でオメーが布団から手を出したんだけどよ」

こちらを見もせず風に吹かれてる銀時に、覚えてるか?と尋ねる。

銀時は解らない顔をする。

「そんなことしたっけ?」

「したよ。オメーは手ぇ振ってきた」

「…んー、覚えてねェな。それがどうかした?」

「ああいうとき、オメーはその手をどうされたいのか、聞きてぇと…思ってな」

「どうって…」

銀時は面倒臭そうに顔を背ける。

「そんなん、オメーの好きにすりゃいいんじゃね?」

「俺は、オメーの望むことをしてやりてぇ」

「だったら俺のして欲しいことすりゃいいじゃん。イチゴ牛乳掴ませるとか。チョコレート握らせるとか。パフェのひんやり感で驚かすとか。いろいろあんだろが」

「オメーは…」

つまらなさそうに土方は嘆息する。

「甘いモンのことしか無ぇのかよ」

「じゃあオメーはそういうとき、どうされてーの?」

むこうを向いたまま銀時が問う。

「俺に向かって手ぇ出して、俺になにしてほしい?」

「あ、…」

土方は状況を想像して絶句する。

もし、これが逆だったら。

自分が銀時に手を差し伸べたなら。

─── …手を、握ってほしい

    お前の手を、能うかぎり強く触れて感じて安心してぇ。

    伸ばした手を、いつでも聞かなくても握り返してくれ…

「ほれみろ」

銀時が黙りこんだ土方を笑う。

「別にこれといってやってほしいことなんて無ぇだろ?マヨネーズ握らせるくれーしか」

「高杉だったら」

思うより先に口に出していた。

「傍に高杉がいたら、オメーはどうされたかった?」

「なんで高杉」

銀時は憤慨したように口調を乱す。

「それがこれから祝言あげようって相手に聞くことかよ」

「いいから答えろや」

「なんでだよ」

「たんなる興味だ」

「そんなのに答えたくねーし」

「拒否権は無ぇつっただろ」

「えー、なんで拒否権?」

「言えよ」

語気を強める。

「それとも、俺に言えないようなことすんのか」

「しねーよ! たぶん…、」

「それとも、オメーも解らないんじゃねぇのか。高杉の考えなんざ」

「…んだよ、うっとーしい」

銀時は不快を露わにする。

と、同時に根負けする。

「ああもう、言うけどよ…、言った方がめんどくさくねーんだろ?」

ぶつぶつ言いながら口を尖らせ、それでも告げるのを迷った末。


「高杉は…きっと、俺の手に触らせると思う」

銀時の唇が開いてそれを告げる。

「アイツ自身の手を」


静かに、銀時は笑ったように思えて土方は思わず銀時を見る。

銀時は風を向いたまま口を噤んでいる。

知らず見開いていた目を、土方は伏せる。

その口元は苦しく歪んだ笑みを乗せていた。

─── そうか

    オメーは高杉を

    高杉はオメーを…互いに知ってんだな

    互いがなにを望むか…それを疑いなく差し出すことも


「あの…よ、」

銀時が手を動かす。

「そんなのどうでもよくね? オメー、俺を娶るんだろ。これから時間いっぱいあるし…好きな菓子のこととか…その、煙草やマヨネーズの銘柄もよ、少しずつ教えてくれりゃ…、」

見えない銀時の手が土方の在り処を探す。

その手を取ろうと土方が踏み出そうとしたとき。


「すみませーん、大江戸テレビの者ですが!」

中庭に撮影クルーを引き連れた花野アナが駆け込んできた。

 

 続く


拍手ありがとうございます!
コメントへのお返事は後日させていただきます。

 

拍手[7回]

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【2012/03/31 16:50 】 | 気を引いても虚ろな世界(高銀) | 有り難いご意見(0)
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