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本日の更新
「結婚したら俺が土方君の世話すんの当たり前だろーが」 異を唱える神楽と新八を呆れたように見やる。 「土方君はメチャクチャ忙しいんだよ。朝のお世話、昼のお世話、3時のオヤツ、夜のお世話とくっついてなきゃなんねーの。まァ秘書みたいな?真選組に入隊ってワケじゃねーけど総務部長の肩書きくれるってさ」 「無理アル」 「本気で言ってるんですか、銀さん」 総務だから真選組の万事係だよな、と自分で納得する銀時に二人が冷たい視線を送る。 「銀ちゃんは人の世話なんかできないヨ」 「だいたい朝、起きられるんですか。真選組って朝早いんでしょ? いっつも昼まで寝てるじゃないですか。お金が入ると飲み屋で飲んだくれて午前様だし。土方さんの世話どころか二日酔いの介抱してもらわなきゃならないのはアンタだし。真選組は幕府の機関ですよ。アンタみたいな不真面目な人間に務まるわけないです」 「なに。お前ら銀さんが結婚しちゃうのがイヤって、そういうこと?」 探るような眼で二人を見ながら、銀時は嬉しそうに頬を緩める。 「だいじょーぶだって。新婚カップルに早起きしろなんて野暮なこと言うヤツはいないから。…な、土方君?」 銀時は隣りに座る土方の肩に身を寄せて、思いきり凭れかかる。いきなり近距離で銀時に問われて、土方はもれなくマヨ飯に噎(む)せそうになる。 「ぐはっゲホッ、んア…あぁ、そりゃ…そうだろ、」 嘘でも銀時の口から『新婚』なんて言葉が出ると、土方の頭の中でそればかり反響してしまう。 「その、…オメー朝が弱いのか?なら徐々に慣れてきゃいい。最初ッから張り切るこたねぇよ」 「ホラな~?」 銀時はいつものヤル気のない瞳を二人に向ける。 「俺、どうやら愛されちゃってんだよ。本当は仕事も続けてーんだけどよ、コイツが屯所から出るな、俺の側から離れるなっつーもんだから」 ブハッと土方が吹き出しそうになるのを堪えるのを横目に、銀時が続ける。 「最初は俺の仕事を軽く見てんのかと思ったんだけどよ、仕事できなくなる分、お前たちに給料を渡すって言うし、ちゃんと生活に必要な金額らしいし、コイツも万事屋の価値をちゃーんと解ってんだなって思ったら、なんだか心洗われる気分がして前向きになれた」 「きゅ、給料ォォォォォォォ!?」 神楽が飯粒を噴き出しながら立ち上がる。 「給料出るアルか、マジでか!」 拳を握りしめて仁王立ちする神楽に追い立てられるように土方が頷く。 「オメーらの大将をもらうんだ。それっくれーすんのは当たり前だろ」 「酢昆布か!それは酢昆布なのかッ?」 「いや…現金だけど」 「銀ちゃぁぁぁぁぁぁんんん!!良かったナ!文金高島田!惚れられてお嫁にいくのか一番だってここのゴリラも言ってたヨ!」 「だよなァ。やっと解ったか。その調子で祝福たのむわ。ちなみに嫁入りじゃなくて婿入りな」 「任せるアル。反対するヤツがいたら分かるまでワタシの拳が火を噴くヨ」 「おぅ任せたわ、来月から現金支給娘」 キリッと銀時を見る神楽の肩をポンっと叩いて銀時は目と眉を胡散臭く近づける。 「アンタら、なに現金収入に目が眩んでんだよ」 新八がツッコむ。 「まさか金めあてじゃないでしょうね。それで結婚とか言い出したんなら軽蔑しますよ、銀さん」 「バッ、声がデケぇ!」 銀時は振り向きざま目を血走らせ、新八の隣りへ突進して新八の肩を抱き込むと思いきり小声で囁く。 「俺と結婚しても、たいして金はかからねーって思い込ませてんだよ。お前オレが何ヶ月家賃滞納してっか知ってんの?明日のコメどころか電気ガマの電気代もヤベェの知ってんの?」 「それ騙してるってことじゃないですか。ってかアンタ、あれ全部土方さんに払わせる気じゃないでしょうね?」 「当然だろ、アイツ万事屋を休業する経費負担するってんだから。あそこ引き払う気はねーし。家賃も払ってもらう」 「詐欺ですよ、そんなの!」 新八が目を吊り上げる。 「万事屋の金銭的価値なんて無いも同然でしょ!給料もらうのは嬉しいけど、騙したお金なんて僕はもらいたくありませんからね!」 「ちょ、聞こえる!聞こえるって新八君!」 「ちゃんと土方さんに言いましょう!」 「破談になったらどーすんだコラ!」 「なった方がいいじゃないですか、土方さんだって」 「テメ、余計なことすんな新八ィ!」 「ごまかしたって良いことありませんよ」 新八はキッと銀時を睨みつける。 「一生の問題なんですよ、アンタそれでいいんですか?」 「…う、」 「こんなの、誰も幸せになんかなれない、そうでしょう?」 「いや、騙されたいって男心もあんだろ。騙してやるのが幸せなんだよ、この場合」 「そんな幸せは気のせいです」 新八は譲らない。 「金めあてに土方さんと結ばれる、それがアンタの魂に恥じない行動だって言うんですか。見損ないましたよ銀さん!」 「か、金目当てって…」 銀時が顔を顰める。 「お前ね、いくら金に困ってても、ソレだけで結婚なんてできねーよ。財布もカラダもひとつんなるんだからよ」 「ちょっ…!」 新八が顔を赤らめざま土方に目を走らせる。 「だったらなおさらでしょう!本当に土方さんが好きなんですか、心の底から世界中に誓えますか?」 「……、い、言えるか、そんなの。オメーに関係ねーだろが」 「とにかく、僕はアンタと土方さんなんてウソくさい取り合わせは御免ですからね」 「オ、…オイッ!」 「土方さん、お話があります」 ほぼ丸聞こえの会話を繰り広げたあと、新八は銀時の制止を振りきって土方に向き直る。 「銀さんと一緒になるのは止めてください。この人、家賃も溜めてて僕らへの給料の支払いも滞ってて光熱費だって滞納してて、それぜんぶ土方さんに払わせる気でいるんです。従業員の僕が言うのもなんだけど、土方さんが銀さんのどこを気に入ったか分からないし、言いにくいんですけど、とにかくお金だけはたくさんかかる、この人はそれを隠したまま結婚しようとしてるんです!そんなの許せますか?」 一気に言いきったあとも新八は息を詰めて土方を窺っている。そんな新八を沖田と土方は目を丸くして見つめる。 「驚いた。土方さんにケチつけるんじゃなく旦那にダメ出しとは」 「あの、あのう土方君!?」 銀時が土方と新八を交互に見ながらなんとか取り繕おうと早口で捲し立てる。 「いくら俺でも、そこまで払わせようとは思ってねーから!できればこれまでの光熱費と今後の給料と、あと家賃、それだけ面倒みてくれねーかなって…!!」 「オイ、メガネ」 食器を置き、土方は新八を見て薄く笑う。 「あきれるくれぇ真っ直ぐだな。この機に万事屋が滞納してる金返させて精算させちまおう、くれぇの悪知恵働かせねぇのかよ」 「あいにく僕は銀さんが間違った結婚するのを黙ってられるほど器用な生き方できないものですから」 「間違った結婚?」 土方が聞き返す。 「どこが間違いだってんだ?」 「銀さんは貴方じゃなくお金めあてなんです。そんなの間違ってるでしょう?」 「それでも構わねぇから結婚してぇって俺が言ったら?」 「…エ?」 「もう指を咥えて見てんのは飽き飽きなんだよ。アイツが承諾するんなら俺と一緒になる理由なんかどうでもいい。離すつもりはねぇし。誰にもやらねぇ」 唇をキュッと噛んで言葉を失った新八、それから一人で食事を続けている神楽を土方は等分に見る。 「この際だからオメーらに言っとく。コイツは俺がもらう。もう万事屋には帰さねぇ。真選組の副長のツレ合いとして俺を助け、俺と真選組のために働いてもらう。そのかわり、今までコイツが溜めてきたモン、払うべきモンは俺が肩代わりして精算する。オメーらの養育費もだ」 顔つきを強ばらせた新八、挑むように大きな瞳を向けている神楽、二人に土方は諭すように告げる。 「俺が結ぼうとしてる婚姻はコイツを縛るだけのもんじゃねぇ。俺にもそれなりの義務が発生すんだ。お前らが生活するために必要な家賃や費用を払うのは俺の義務であり、誰にも譲れねぇ権利なんだよ」 PR |
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