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* 高銀話です(連載中)
「てっとり早く済ませようぜ」 土方が退くと銀時は、のそりと身を起こした。 「テメーら、そろそろ口割れや。俺はエサなんだろ。お偉いさんの目眩ましに祝言あげるってのも方便か」 「そっちは嘘偽りありやせん」 すかさず沖田が答える。 「ウチの独身率の高さは幕府(おかみ)からバッチリ目ェつけられてるんで。どっちかっていうとソレが本命でしてね。あとのクソみてェな計画は後から取ってつけたようなもんでさァ」 「そっちが本命?」 銀時は眉を顰める。 「だったらなんで俺なんだよ。世の中にはテメーらの嫁になれそうな女があふれかえってんだろーが」 「そりゃ、あそこにいた連中は旦那に懸想してるからでさ。あとはそれぞれ自分の狙いに奔走してるんじゃねェかな」 「なに、テメーらが懸想してるから俺が連れてこられたの?んじゃ俺がテメーらの意識にのぼらなかったら来なくて済んだわけ?」 「そうかもしれやせんね」 沖田がもっともらしく肯定する。 「近藤さんと独身野郎どもが酒飲みながら嫁さん談義してて、あっさり万事屋の旦那の名前が出て、アレ嫁さんに欲しいとか、アレが女だったらとか盛り上がって。どうせこんな想いは届きっこねぇって酔っ払いどもがクダ巻いて。そしたら近藤さんが、だったらアイツを嫁さんにする合法的なやり方を考えようじゃねェか、もうこのさい誰が娶っても構わねぇ、真選組の嫁さんになってもらわね?って流れになったんでさ」 「どっからツッコンでいいのか分からねー。とりあえず嫁さん談義に俺の名前を出したバカを殴らせろ。嫁ってのは亭主と共同作業してガキ産むもんだ。俺にそんな特殊能力はねぇし。好きこのんで獲得するつもりもねぇ」 「さっきの奴らが言ってたのはソレ?」 「不愉快なモン耳に入れちまいやしたね」 「別にどうでもいいぜ。俺はテメェの体を女にしようなんざ思ってねーから」 「そいつァ残念なことで」 「けどよ」 銀時は考えをめぐらせながら沖田と土方を見る。 「祝言が本命ってことは、オメーら上への体裁をつくろいてぇんだろ。本当に辻斬り事件が終わったらウチに帰っていいんだろな?子作りがどうとか言ってるし、偽装を終わらせる気あんのか?なんだかこのままウヤムヤのうちに結婚させられてテメーらの中に取り込まれそうなんだけど」 「そこまでやる気はねぇよ。ある程度のケリがついたらオメーは自由の身だ」 「…と、土方さんはこんなこと言ってますがね」 沖田は、口を挟んできた土方を見やる。 「そんな都合よくいくわけねぇでしょう。旦那は入籍するんでさァ。公的な結婚ですぜ。そのまま屯所に閉じ込められて無理やり女にさせられて子供でも孕んじまえば逃げられねェ。しかもその相手はこのままでいくと土方さんですぜ。よく考え直しなせェ」 「………エ?」 「そっ、総悟ォォォ!」 目が点になった銀時に、沖田を一喝した土方が向き直る。 「そんな事実はねぇ!ありゃアイツのでまかせだ。勝手に入籍なんかしねぇし、オメーの意志を無視してコトを進めることもねぇ!」 「嫌がる旦那にセックスを強要しようとしていた男がなに言ってんでぃ。キレイ事はやめましょうや、土方さん。かぶき町で旦那が俺たちのところへ来たときから旦那は俺たちの捕らわれ人だ」 沖田は銀時に真顔で告げる。 「アンタ、暫定花婿の土方さんに半強制的に性行為を強いられる捕らわれの花嫁なんですぜ。暫定花婿を撤回しないと大変なことになりまさァ」 「でたらめ言うなァァ!コイツは俺を選んだオメーの決定を覆したいだけだ、耳貸すんじゃねェェェ!」 「……んなこと解ってるつーの」 銀時はダルそうな眼で土方を見る。 「だからお前を選んだんだよ。撤回なんかしねーよ。話進めていい?」 「…ア?」 土方は、沖田も銀時を見る。 「撤回しないんですかぃ?」 「…それで選んだって、どういう事だ?」 「どうって…」 銀時は目を逸らして銀髪の中へ指を差し込む。頭を掻きながら、その話題を片付けなくては先に進めないことを悟って口を開く。 「お前は俺に非道いことしねーだろ?沖田君や他の誰かが強攻策に出ても、お前だけは俺を裏切らねェ。お前はお前の武士道に背くことはねぇんだよ。それはお前と刀まじえた俺が一番よく知ってるかんな」 「…」 虚を突かれた土方は銀時を見たまま固まった。 「お前らが俺を逃がす気がないのは分かってた。オメーらの思惑はイマイチ読めねぇ。だったら俺はオメーの信条に縋るしかねぇだろが」 銀時は土方を見ない。 「祝言も処遇も、オメーがそうするってなら、もう逃げようがねぇ。きっとオメーは誰より考えてそうするんだろーし。俺にとってお前が選ぶ道が一番、納得しやすい理不尽なんだよ。だからお前だ。解ったか。解ったんなら次いくぞ、次」 「つまり土方さんは御(ぎょ)しやすいってことですね」 ポンと手を打って沖田が言う。 「たしかに狙い目どおりでさァ。さっそく胸を打ち抜かれてやすぜ、旦那の追いつめられた人質が誘拐犯を懐柔するような熱の入った演説に、俺ァコイツに非道いことなんかできねぇ…!って眼で決意してますぜ」 「オメーはいちいち台無しにすんじゃねーよ」 銀時は平坦に言う。 「もうちょっと押せば土方君が俺を解放してくれたかもしれねーのによ」 「だから土方さんと二人きりにするのはマズイんでさァ」 「って言いながらオメーはコイツを放っとけねーよな。そんなにコイツが俺に取られるか心配?」 「できればどっちも手に入れてぇとこなんで。いっそ三人でヤりやせんか?」 「オメーのそのあけすけなところが気に入ってるけどよ。三人とか無理だから。辞退するから二人でどーぞ、俺の見てないところで」 「見えなきゃいいんで?だったら目隠ししてやりまさァ。音だけってのも燃えますぜ」 「だから参加しねーから俺は。それよりボッキリ話の腰を折ってくれてありがとよ。再三聞いて悪りぃけど、コイツの言ってた『おびき寄せる』って誰を?どうやって?」 銀時の眼が沖田を見据える。 「オメーが入って来なきゃ土方君に洗いざらい聞けたんだよ。邪魔したんだからキッチリ吐けよな。オメーのオープンマインドを見込んで引き止めたんだからよ」 「それと土方さんにこれ以上、性交渉を迫られちゃたまらねーから第三者(オレ)が必要だったんでしょう?」 「そんな細かいところはいんだよ」 「自信なかったんですねぃ。旦那も自分の欲求に流されやすい素直な身体してやがる」 「うっせーよ!それこそどーでもいんだよッ」 「『誰をおびき寄せるか』って?そりゃァ、旦那が他の男とイチャイチャしてたら怒り狂う野郎に決まってまさ。旦那もよく知ってる、あの」 ニヤと笑った沖田の唇がその音を辿った。 「……鬼兵隊首領、高杉晋助」
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